司法試験のパソコン受験が2026年からスタート!今からできる対策は?

 

2023年6月に法務省は司法試験と司法試験予備試験にパソコン受験を導入する方針を発表しました。 
受験生にとっては、試験のスタイルそのものが大きく変わるこの方針、とても大きなニュースとして受け止めている方もいるかもしれません。
1秒たりとも無駄にしたくない試験の解答時間。
パソコン受験へと変わるとすれば、対策ができているかいないかで合否を左右することも大いにあり得ます。
だからこそ、司法試験・予備試験のパソコン受験導入の背景と、パソコン受験を攻略するために今からできる対策について知っておきましょう。

1.司法試験・予備試験でパソコン受験を導入!その背景は?

法務省がパソコン受験を導入する方針を発表したのは、2023年6月のこと。
2026年からの開始を目標としているパソコン受験は、いったいどんな理由から導入の流れになったのでしょうか。 
まずはその背景を紐解きます。

 

1-1.検討されているパソコン受験の内容 

法務省が発表した司法試験のパソコン受験導入は、現時点では2026年の導入を目標にしています。
大枠の方針はデジタル庁が6月頭に発表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも記載されており、主に次の点で改正が検討されています。

・出願手続きをオンライン化 
・受験手数料をオンライン決済でキャッシュレス化 
・会場にあるパソコンを使って解答するCBT(Computer Based Testing)方式の導入 

※参考:デジタル社会の実現に向けた重点計画 (P84、P90)

2023年6月30日に行われた法務大臣閣議後記者会見では、記者の質問に対して「2025年度から出願手続等のオンライン化及び受験手数料のキャッシュレス化の開始を目指します」と法務大臣が答えています。
その背景にあるのは、受験者の利便性の向上や、試験関係者の負担軽減です。

現段階で発表されているのは、ここまで。
実際にどのように実施するのか、より具体的な方法については調査や検証が行われているとのことで、詳細は未定となっています。
また、予備試験でも同様に パソコン受験の導入が検討されています。 

※参考:法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要

 

1-2.パソコン受験導入の背景は論文試験の負担軽減 

司法試験をパソコン受験にしようとしている背景には、弁護士実務では手書きの書類作成業務が減ってきていることが挙げられます。 
また、これまでの論文試験は受験生も膨大な文字量の論文を筆記しなければならず負担が大きかったこと、採点時にも手間がかかっていたことなどの課題がありました。 
論文対策の勉強や論文試験中に、大量の文字を書いて手を酷使してしまうことで腱鞘炎などに悩まされる司法試験受験生は少なくありません。
パソコン受験が導入されれば、こうした問題に悩まされることも少なくなるという点では、嬉しいことではないでしょうか。

海外ではパソコンで受験するCBT方式が一般的 

アメリカではかなり前から弁護士試験にパソコン受験が導入されています。
州によってスタイルは異なりますが、カリフォルニア州では試験用のソフトをラップトップ(ノートパソコン)にインストールして、会場で受験する方式を採用しています。
ちなみに、同州では、パソコンでの回答は記述式科目のみ。
回答用紙に答えを書き込んでいくマークシート方式での試験も別科目で実施されています。

日本の司法試験では、全ての科目でパソコン受験となるのか、カリフォルニア州のようなスタイルになるかは未定です。
ですがアメリカの司法試験受験生の声も、パソコン対策として参考になりそうですよね。

 

2.司法試験のパソコン受験化で何が変わる?受験生にとってのメリット3つ 

司法試験や予備試験がパソコン受験になることで、受験生に与えられる影響はどのようなものがあるのでしょうか。
まずはパソコン受験のメリットを一緒に考えてみましょう。

 

2-1.パソコン受験のメリット(1)身体的負担の軽減 

パソコン受験のメリットは大きく分けて次の3つが考えられます。 

・身体的負担の軽減が期待できる 
・文字が汚い人は悩みから解放される 
・より思考力や法律への理解力が試される 
 
特に論文試験でパソコン受験が導入されれば、筆記で解答を作成する負担が軽減されます。 
⾧文の論文を手書きで解答用紙に埋めていく従来の司法試験では、手首が腱鞘炎になったり、腰を痛める受験生も少なくありません。
こうした身体的負担が軽減されるのは大きなメリットと言えるでしょう。 

 

2-2.パソコン受験のメリット(2)手書きの文字が読みにくいという心配がなくなる

また、「自分は字が汚い」という悩みを感じている人は、その悩みから解放されるというメリットもあるでしょう。
現行の筆記試験の場合、頭の中では論文構成や内容がまとまっていたとしても、殴り書きで読みにくいような答案では、採点者にマイナスな印象を与えてしまいます。 

「うまく書かなければいけない」と丁寧に書くことがストレスに感じている方にとって、パソコン受験の導入は喜ばしいことです。

 

2-3.パソコン受験のメリット(3)より思考力や法律への理解力が試される 

ペンで紙に文字を書いていく筆記スタイルよりも、パソコンでタイピングしていく方が文章の作成時間は短いと言われています。
つまり、論文であれば文章を書き出す/入力する時間が短縮されることから、論文構成を考える時間が今まで以上にしっかりと確保できることになるでしょう。 

パソコン受験の導入で今まで以上に本質的な思考力が求められる 

解答用紙の作成にかけていた労力と時間的負担が軽減されるということは、今まで以上に思考力や法律に対する本質的な理解が求められるとも捉えられます。
司法試験・予備試験の受験生は、表面的な理解ではなく本質的な法律への理解と問題解決能力を磨く必要が出てくるでしょう。 

思考のためのインプットの先にある法律理解を深めるなら、次の講座もチェックしてみよう。 

【BEXAおすすめ講座】 
吉野勲「王道基礎講座」

 

3.司法試験のパソコン受験導入で注意したいポイント3つ 

もちろん、パソコン受験は喜ばしい変化ばかりではありません。 
受験生として、心得ておきたいパソコン受験の注意点もしっかりと意識して、対策や準備を進めていきましょう。

 

3-1.パソコン受験の注意点(1)導入時の混乱がプレッシャーになることも 

司法試験・予備試験にパソコン受験が導入されることになれば、スタート当初は多少の混乱がある可能性も大きいでしょう。
とくにパソコン受験導入初期は、運営側も受験生側も慣れていないため、ある意味では同じスタートラインに立っていると言える反面、プレッシャーに感じる受験生もいるでしょう。

 

3-2.パソコン受験の注意点(2)スタイルの変化に対応が必要 

答案作成スキルが確立されていないことなどから、今までと違ったスタイルに苦しめられる受験生が増えることも予測されます。
特に、手書きで論文構成を組み立てるタイプの人は、パソコン受験の導入でそのスタイルを変えなければいけなくなるかもしれません。​

 

3-3.パソコン受験の注意点(3)タイピングの速さで論文試験に差が出てしまう 

タイピングの速さが論文試験では大きな差になってしまう可能性が大きいのも、注意したいところです。
BEXA受講生は比較的パソコンに慣れている人も多いため、それほど心配している受験生は少ないかもしれません。
しかしながら、だからといって油断してしまうのは危険です。 
会場に設置されているパソコンのキーボードが必ずしもいつも使っているパソコンと同じ打ち心地や キーの配置では無いかもしれません。
実際にどんなタイプのキーボードが使われるかは分かりませんが、今から色々なタイプのキーボードに打ち慣れておくなど準備をしておきたいところです。

 

4.司法試験のパソコン受験対策3つ 

少なくとも司法試験・予備試験の論文がパソコン受験化される流れは避けられません。
導入時期がズレる可能性もありますが対策を始めるのは早ければ早いほどいいのは間違いのないこと。
今から、パソコン受験に向けて始めるべき対策を考えてみましょう!

 

4-1.対策1「タイピングスキルを磨く」 

論文をパソコン上で作成するためには、何よりもタイピングスキルを磨く必要があります。
少なくともキーボードを見なくても文字を打ち込めるブラインドタッチはマスターしておきたいもの。
現時点でのタイピングスキルがどのくらいか知りたい受験生は、無料でチェックできるサイトもあるのでまずは実力を確認してみましょう。 

司法試験は時間との勝負。
パソコン受験に備えるなら、タイピングスキルを磨くのは避けて通れない道です。
タイピングが早ければ早いほど、論文を書く時間が短縮できて、構成を考えるなど思考する時間に充てられます。

タイピング練習に役立つ無料サイト 

タイピングに自信がないなら、タイピングをスムーズにするためにキーボード上にどう手をおけばいいのか、ホームポジションから学べるサイトを活用するのがおすすめです。
効率の悪いタイピングの癖がつく前にホームポジションをマスターすれば、その後のタイピングスキルを磨く際にも活きてきます。

 【文字を打つ練習に役立つサイト】 
・「マイナビジョン タイピング練習ホームポジション」

https://manabi-gakushu.benesse.ne.jp/gakushu/typing/homeposition.html 

・ゲーム感覚で楽しめる「寿司打」

https://sushida.net/ 

・基礎練習が充実している「e-typing」

https://www.e-typing.ne.jp/ 

・空き時間に取り組めるマナビジョンの「無料タイピング練習」

https://manabi.benesse.ne.jp/gakushu/typing/ 

・好きな用語集をつくって練習!法律用語のタイピング練習もできる「Ankey」

https://ankey.io/wordbooks 

ちなみに、人材派遣会社パソナのブログ(※)では、営業事務や事務経験が必要な仕事に就くなら、「e-typing」でA以上のスキルが求められるとも書かれています。

※参考 あなたのタイピングスピードはどのくらい?自分の腕を試してみましょう! | 派遣の仕事・人 材派遣サービスはパソナ

試験で使用される法務省指定のキーボードではタイピングがしにくいこともあり得ます。
現時点では、 どのようなキーボードが採用されるか判明していませんが、試験で採用されるキーボードが公表されたら、同じタイプの外付けキーボード、または使用感が近いものを購入するのもおすすめです。 
普段から試験用のキーボードに慣れておけば、受験当日もスムーズにタイピングができるでしょう。

 

4-2.対策2「答案構成の方法をパソコン受験仕様に」 

論文試験では、論点や事実関係の整理といった答案構成が大切な柱となります。 
従来通りの筆記試験では、答案構成をしたあとに結論を決めて、論点を整理・解答を作成していくこととなります。
パソコン受験対策を今から進めるのであれば、インプットとアウトプットの2つの視点からパソコン受験に合わせた勉強方法を採用してみるのも良いでしょう。 

・アウトプット段階でできること 
科目によって答案構成の型は変わってきますが、事実関係の整理をしてから紙にラフな論文構成の流 れを書き出している受験生も多いかもしれません。 

これから導入されるパソコン受験の会場にペンを持ち込むことが可能かは分かりませんが、パソコン上でざっくりとした論文の構成を整理して書き出す訓練が必要になります。
例えば、日頃からパソコンのワードなどでこれから各論文の流れやキーポイントを書き出す習慣をつけておくのもいい訓練になるはずです。 

・インプット段階でできること 
日頃から書類や文書をパソコン上で読んで流れを理解することに、慣れておく必要が出てくるでしょ う。
なぜならパソコン受験の導入でアウトプットだけでなく、インプットの仕方も変わるから。 

どのようなスタイルになるかは未知ですが、問題用紙自体がパソコン上に表示される可能性もゼロではありません。
そうなると「問題用紙に下線を引いたり、ポイントを書き込んだりしながら論点を整理する」ことができなくなります。
オンライン教材などを大いに活用して、画面上に表示された⾧文を読み込むトレーニングを積んでみるといいでしょう。

 

今からできるパソコン受験対策!PDFテキストを活用してみよう 

BEXAでは全講座のテキストをダウンロードできるPDFファイルで提供しています。
パソコン受験に慣れるために、BEXAのダウンロードテキストを画面で見ながら学習して、画面上に表示された文書で内容を把握することに慣れておくといいでしょう。

【BEXAおすすめ講座】 
「初学者が最初に押さえるべき法律用語100選」

ちなみに、司法試験より先にパソコン受験を導入した日商簿記では会場で白い紙が配布されて受験者がメモ用紙として使えるようなスタイルとなっています。 
司法試験・予備試験のパソコン受験が簿記試験と同様になるかはわかりませんが、まずは画面上で文章を読みながら紙に論点を書き出したり、構成メモを作る練習をしてみるのもいいでしょう。

 

4-3.対策3「時間配分を見直す」

筆記試験とパソコン受験では、論文試験の時間配分は大きく変わります。

例えば、従来の筆記試験であれば論文試験で答案構成にかける時間は、試験時間の3分の1~4分の1 が相場です。
一般的には手書きよりもパソコンで入力した方が同じ時間でかける文字の数は多いと言われています。
よって、パソコン受験で答案を書く時間が大幅に短縮できるとすれば、答案構成にもっと時間をかけてもいいでしょう。 

とはいえパソコン受験が導入されるのは早くても2026年。
2026年より前に司法試験・予備試験の受験を予定している人は、現段階では答案構成にかける時間配分は今まで通りにこなせるようにしておく方が懸命です。 
パソコン受験に切り替わったなったときも、答案構成を早く終えられれば、ゆとりを持って試験に臨めます。

 ※参考 
BEXAコミュニティ「Q.論文試験対策をするにあたって、答案構成にかけらる時間は、試験時間のうちどれくらいでしょうか。」
https://bexa.jp/commus/view/217 

【BEXAおすすめ講座】 
「TOPはこう読む!採点実感から見る合格答案の要件」

 

伊藤先生おすすめのノートパソコンは『ThinkPad』 
~Legal PadからThink Padへ~ 


画像出典:ThinkPad X1 Nano Gen 3 | 超軽量ハイパフォーマンス13.3型ノートPC | レノボ・ ジャパン 

今から司法試験・予備試験のパソコン受験対策として新しくパソコンを新調するなら、BEXAの人気講師・伊藤先生がおすすめするノートパソコン『ThinkPad』も検討してみてはいかがでしょうか?

伊藤先生がおすすめする理由は次の通り。
気になる方は、ぜひ家電量販店などで使い心地を確かめてみてください。 

【伊藤先生コメント】

 Lenovoが出しているノートパソコン『ThinkPad』は、他のノートパソコンのキーボードよりもキーボードの打ち心地がしっかりしています。
「文字を打っている」という手応えがあるのでリズムよく文字が打てるはず。 

また、『ThinkPad』にはキーボードの中央に「赤ポッチ」と言う名称で親しまれているトラックポイントがついているのも特徴です。
トラックポイントのおかげで、マウスを使わなくても、キーボードのホームポジションに手を置いたままマウスポインタを動かせるから操作が直感的になりスピーディー! 

法曹界の必需品が、黄色いLegal Padではなく『ThinkPad』になる日も近い……かもしれません。
 (とはいえ、私も普段はLegalPadを愛用しています。紙には紙の良さもありますよね。) 

※参考 レノボ ThinkPad特設ページ 
ThinkPad | モバイルワークステーション、ノートブック、&あなたのビジネスに 2-in-1 | レノボ・ ジャパン

 

司法試験のパソコン受験導入を味方につけよう! 

時代の流れに合わせる形で導入が決定された司法試験・予備試験のパソコン受験。
受験生はパソコン受験をネガティブに捉えるのではなく、今から準備を進めることで合格の追い風にすることは十分可能です。 

また、筆記よりもタイピングで文字を入力する方が答案作成時間が短くなれば、答案を見直す時間や考える時間が確保できるなどメリットもたくさんあります。
世の中はデジタル化の時代。
司法試験のデジタル化もポジティブに捉えればきっと良い結果へとつながるはずです。
今回の記事を参考に、これからの受験対策に活かしてみてくださいね!

 

 

 

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文:松本 有為子
編集:
カワムラ ルイ(リベルタ) 

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2023年10月4日   愛川拓巳  伊藤たける  大瀧瑞樹  国木正  幸谷泰造  吉野勲 

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