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裁量論 合格答案のこつ ~たまっち先生の「論文試験の合格答案レクチャー」第 9 回 平成29年 司法試験の行政法から ~

2022年7月9日   たまっち先生 

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一般記事 - 論文試験・合格答案レクチャー - A答案とC答案

たまっち先生の
「論文試験の合格答案レクチャー
第 9 回
「裁量論」合格答案のこつ
平成29年 司法試験の行政法 から

第1 はじめに
       行政法では個別法の解釈が求められ、事前の対策が難しいため、
       非常に難易度が高いが、司法試験の過去問には良問が多い  

  こんにちは、たまっち先生です。
 第9回となる今回は、行政法における本案について扱いたいと思います。行政法の本案では個別法の解釈が求められ、事前の対策が難しいため、非常に難易度が高いです。しかし、司法試験の過去問には良問が多いため、過去問演習を積んでおくことで、個別法の解釈に慣れることができます。今回は、本案の中でも特に出題頻度の高い裁量論にターゲットを絞って、A答案とC答案にどのような差があるかに着目しながら、どこに気をつけて答案を作成すれば合格答案が書けるようになるのかをレクチャーしていきたいと思います。

第2 A答案とC答案の比較検討

【A答案とC答案】

さっそく、A答案(合格答案)とC答案(不合格答案)を見て行きましょう。

A答案

C答案

⑴ フェンスの撤去を求める非申請型義務付け訴訟における本案勝訴要件は、「行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え・・・濫用と認められる」(行訴法37条の2第5項)場合である。 そこで、XらはY市長の裁量権の逸脱濫用を主張する。

⑵ そもそも、Y市長にフェンス撤去の監督処分について裁量が認められるか。

監督処分の要件となる法43条2号は「交通に支障を及ぼす虞」のある行為を禁じており、抽象的な文言を使用している。また、道路の監督処分は、地域の実情に応じて、決めるべき専門技術的な事柄といえる。したがってY市長には要件裁量がある。また、法71条1項は「・・・できる」としており、同様にどのような監督処分を下すのか、下されないのかについても地域の実情を反映させる必要があることから、効果裁量も認められる。

⑶ そして、裁量権の逸脱濫用が認められるときとは、行政庁の判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠く場合をいう。

本件では、本件保育園の関係者以外の利用が乏しいことが挙げられている。しかし、この主張はAがしているものに過ぎず、客観的に交通に支障がないかを判断すべきであったといえる。したがって、要件の認定につき、考慮不尽が認められる。

また、フェンスを撤去しなかった理由には、園児と原動機付自転車との接触が発生する可能性があること、いずれ道路の廃止が見込まれるという点が挙げられているものの、監督処分の趣旨から、その時点に交通の支障がある以上は、監督処分を行うべきであると考えられる。そうであるとすると、園児の安全や将来の廃止を考慮した点は他事考慮であるといえる。

以上より、Y市長の判断は行政庁の判断が社会通念上著しく妥当性を欠く場合にあたるため、裁量権の逸脱濫用が認められる。

よって、Xらの上記主張をすべきである。

1 法43条2号該当性について

⑴ 同号の趣旨は、前述のように住民による道路の通行利益を確保することにある。

よって、「交通に支障を及ぼす虞のある行為」とは、住民が当該道路を通行できなくなるような行為をいうと考える。

⑵ 本件フェンスがあることでXらは本件市道を通行できなくなる。そのため、Aによる本件フェンスの設置は「交通に支障を及ぼす虞のある行為」にあたる。

⑶ よって、同号に違反しないと判断した、Y市長の判断には誤りがある。

2 本件フェンスの監督処分の措置を取らないことの違法性について

⑴ 法71条1項1号が「できる」と規定する趣旨は、道路管理についての行政庁の専門的技術的判断を尊重することにある。そのため、監督処分の措置をとるか否かについて行政庁に効果裁量が認められる。よって、かかる裁量の下でした、行政庁の不作為も原則として違法となる。

もっとも、当該不作為の判断にあたって、考慮不尽があるなど裁量権の逸脱濫用が認められる場合には、行政庁は当該措置をとるべき作為義務に反したとして、その不作為は違法となると考える(30条)。

⑵ 本件では、Aからの相談内容を踏まえたところ、本件保育園の関係者以外の者による本件市道の利用は乏しいと判断しているが、Xらという本件保育園以外の関係者が利用することが予定されているため。Xらを調査せずにした上記判断には考慮不尽がある。

⑶ よって、Y市長の不作為には、裁量権の逸脱濫用が認められるため、本件フェンスの監督処分の措置を取らないという不作為は違法である。

 
【比較検討】

 今回は、非申請型義務付け訴訟が提起されている関係で、本案勝訴要件は、37条の2第5項となります。裁量権の逸脱濫用があるとしても、それが本案勝訴要件となっていなければ、無意味ですから違法性を基礎付けるために、本案勝訴要件を規定する37条の2第5項を指摘する必要があります。この点、A答案は本件が非申請型義務付け訴訟であるという特殊性を意識しつつ、37条の2第5項を指摘できているのに対して、C答案は37条の2第5項を指摘することなく、いきなり裁量論に飛びついてしまっています。裁量論の位置づけを示すためにも、37条の2第5項には必ず言及しておきたいです。なお、取消訴訟の場合は、30条を指摘することになりますので、提起する抗告訴訟によって本案勝訴要件が異なることに注意しておきましょう。

 次に、本件監督処分に関して、裁量の有無が問題となりますが、A答案は根拠法規の文言が抽象的であること、処分の性質が道路の監督処分には地域の実情に応じた専門技術的判断が要求される点を指摘した上で、要件裁量と効果裁量のいずれにも言及することができています。このように、要件裁量と効果裁量を区別して指摘できていることや専門技術的判断が要求される理由を自分なりに考えて指摘できていることから、レベルの高さを見て取れることができます。他方で、C答案は、「交通に支障を及ぼす虞のある行為」について何らの理由もつけずに条文解釈の問題であると決めつけてしまっています。要件部分に裁量が認められないとしても、それは「土石、竹木等の物件をたい積」するという客観的に認定が容易な行為と「交通に支障を及ぼす虞のある行為」が並列されていることから、当該行為も客観的に認定が容易といえることが理由として挙げられます。このように、要件裁量を規定したものでないと解するのであれば、その旨を理由を付しながら答案に示さなければ、答案として十分なものとは言い難いでしょう。

 最後に当てはめについてですが、A答案は(ア)ないし(ウ)の処分理由に関して全て触れながら答案に示すことができています。時間制約との関係からか論述が薄くなっている印象はあるものの、全ての処分理由に触れられているのは好印象を与えたと思われます。他方で、C答案は、処分理由のうち(ア)の理由についてしか触れられておらず、(イ)、(ウ)の理由を答案上で指摘することができていません。問題文の中に処分理由として(ア)ないし(ウ)の3つが挙げられている以上、全ての理由について配点が振られていると考えるべきです。そのため、答案では全ての処分理由について触れる必要があるでしょう。

第3  B E X Aの考える「合格答案までのステップ」では
   「7、条文・判例の趣旨から考える」との関連性が強い

 B E X Aの考える「合格答案までのステップ」との関係では、「7、条文・判例の趣旨から考える」との関連性が強いです。

 裁量論は個別法の解釈の問題ですので、条文解釈が重要です。本番の試験ではどのような法律が出題されるか分からないので、個別法解釈は演習を積まずに本番に挑む受験生も少なくありません。しかし、過去問演習を積むことである程度の対策をすることが可能です。過去問を積み、法令の趣旨や目的を解釈した上で、法令が処分に関して裁量を認める趣旨であるのか、そうでないのかを見極めることができるようになっておきましょう。

第4 本問の考え方

1 本件フェンス撤去についての裁量権

⑴ 裁量の有無広狭の考え方
 行政行為における裁量とは、法律が行政庁の判断に委ねることをいいます。裁量を論じる際には、当該処分の根拠法規の規定の仕方や判断の性質に照らして、裁量権の有無とその広狭を指摘することになります。
まず、裁量権の有無については処分庁の判断過程のどの部分に裁量があるかを指摘する必要があります。すなわち、要件裁量か効果裁量かを指摘する必要があります。
 裁量の有無のメルクマールは、基本的には文理解釈(規定の仕方)となります。要件裁量であれば、「公共の利益に反するおそれが明らかに認められるとき」のような不確定概念が用いられる場合、効果裁量であれば、「〜できる」のように判断の余地を示しているような書き方がある場合には裁量が認められることになります。
 次に大事なのが、処分の性質です。例えば、行政計画の策定等のように、政策的・専門技術的判断が必要な場合には、裁量権を肯定する理由となります。
最後に裁量権があるとしても、裁量の範囲が広いか狭いか(裁量の広狭)を論じる必要があります。基本的には広いか狭いかの二者択一で良いです。国民の権利義務に対する侵害の程度が大きい場合には、そのような処分に関して広範な裁量を認めるべきではないので、裁量は一定程度(もしくは狭い)にとどまると解釈して貰えば良いです。

⑵ 規範の定立
 裁量の範囲が一定程度もしくは狭い場合には、判断過程審査を行うことが可能になります。判断過程審査は、処分という結果に着目するだけではなくて、当該処分を行う判断の過程にも着目しながら、行政庁の判断に裁量権の逸脱濫用がなかったか否かを判断するという手法です。

【問題文及び設問】

平成29年 司法試験の行政法設問1⑵を読みたい方⇩⇩をクリック

https://www.moj.go.jp/content/001224571.pdf

 

2 本問の具体的検討

⑴ まず、監督処分の要件裁量の有無を検討した上で、法43条2号違反すなわち要件該当性を判断することになります。
 この点、「交通の発達に寄与する」こと等の法の目的(法1条)を達成するため、道路に関する禁止行為をいかなるものと定めるべきかどうかは、交通状況や専門的知見に精通した行政庁の専門技術的判断に委ねられるべきものであり、「交通に支障を及ぼす虞のある行為」という抽象的文言が用いられているのはまさにそのような趣旨を表すものとして、法43条2号該当性判断には要件裁量が認められるとも考えることができるでしょう。
 一方で、同条違反には、罰則が定められており(法102条3号)、刑罰の行使について行政庁に広い判断の余地を認めては国民の平等を害するため、裁量の範囲は一定程度にとどまる。

⑵ 次に、効果裁量については、法71条1項柱書が「できる」と定めており、また、命じうる処分を複数規定しており、行政庁に判断の余地を認めています。    
 また、交通の支障を排除して通行利益を保護するためにいかなる措置を執るべきかどうかは、道路行政に精通した道路管理者の専門的・技術的判断に委ねられるべき事項といえるでしょう。したがって、法71条1項は効果裁量を認めているといえます。ただ、同項の処分は、国民の権利義務を制限する程度が大きいから、裁量は一定程度にとどまることになります。
 以上より、本件フェンスの撤去処分には、一定の要件裁量・効果裁量が認められることになります。
よって、本件フェンスの撤去に関する判断につき、重要な事実の基礎を欠くか、又は判断過程に照らして社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、裁量権の逸脱濫用となります。

⑶ 監督処分の趣旨が、交通の支障により生命・身体を害されない利益を含めた通行利益を保護することにあることに鑑みれば、Y市長としては、通行者の生命・身体の安全を十分に考慮して監督権限の行使及び不行使の決定をすることが求められます。
 これが法令の趣旨目的に照らした処分において考慮されるべき事項といえる。したがって、上記事項を考慮していない場合には、考慮不尽となりますし、上記事項と全く関連しない事項を検討して処分を行っていた場合には他事考慮となります。

 本件において、Y市長は、監督処分の措置を執らなかった理由として、(ア)本件保育園の関係者以外の者による本件市道の利用が乏しいという事情を挙げています。しかしX2はC小学校への通学路として本件市道を利用しており、本件市道は交通量の多いB通りを通学路とするよりも、X2の生命・身体の安全に資するということができます。また、Xらは災害時の緊急避難路として本件市道を利用する予定であり、本件市道はB通りよりも400メートル短く、B通りを利用するよりも早く避難場所であるC小学校へ到着できる点で、Xらの生命・身体の安全に資するということができます。そうすると、生命・身体の安全という観点からは、Xらに意見聴取をすべきだったといえるでしょう。そうであるにもかかわらず、Y市長はAからの聞き取り調査のみで、本件保育園の関係者以外の者による本件市道の利用が乏しいと判断しており、Xらの生命・身体の安全の見地から本件市道の利用が必要であるという事情を考慮していませんので、考慮すべき事項を考慮していないといえ、考慮不尽が認められることになるでしょう。

 また、Y市長は、監督処分の措置を執らない理由として、(イ)園児と原動機付自転車との接触事故が発生する恐れがあるという事情を挙げています。しかし、接触事故を防ぐためには、原動機付自転車が本件市道を通ることを禁止したり、園児がいない時間帯に限って通ることを認めたりすれば足りるのであるから、一般通行者の立入りを一律に禁止する必要はありません。したがって、Y市長は上記判断に際して、接触事故のおそれという過大に評価すべきではない事項を課題に評価したということができます。

 さらに、Y市長は、監督処分を執らない理由として、(ウ)路線廃止の見込みがあるという事情を挙げています。しかし、前述の通り、Y市長は、通行者の生命・身体の安全を十分に考慮する必要があるところ、本件市道がX2の通学路として利用されていることや、Xらの緊急避難路として利用される予定であることから、Y市長としては、本件フェンスの設置がXらの生命・身体に危害を及ぼすおそれがあることを考慮すべきだったといえます。それにもかかわらず、Y市長は上記判断に際して、路線廃止の見込みという考慮すべきではない事項を考慮しており、他事考慮があったということができるわけです。

第5 最後に
   過去問演習をする中で、個別法の解釈のトレーニングを!

 いかがでしたでしょうか。今回は行政法の裁量論について実際のA答案とC答案の比較をしながら、どのような点に気をつけて答案を作成すれば良いかを考えていきました。行政法の本案は対策が難しいですが、過去問演習をする中で、個別法の解釈のトレーニングを積んでいれば、ある程度の対策は可能です。苦手意識を持つ受験生も多いと思いますので、本記事が皆様のお役に立てば幸いです。

 今回もBEXA記事「たまっち先生の論文試験の合格答案レクチャー」をお読みくださり、誠にありがとうございます。
 今回は「
例話2年度予備試験の行政法 裁量論」合格答案のこつ について解説いたしました。次回以降も、たまっち先生がどのような点に気をつけて答案を書けば合格答案を書くことができるようになるかについて連載してまいります。ご期待ください。

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