本講座は、司法修習生を対象として、弁護士の立場から、民事実務の実践の基本部分を伝えることを目的とするものです。平成29年の初版を、分かりやすくするという観点から全面的に改訂したものです。司法研修所のテキストである「事例で考える民事事実認定」(民事裁判)「民事保全」「民事執行」(民事弁護)を使用する講座の2つから成ります。司法修習の2回試験対策だけではなく、実務についた後にも繋がる内容を盛り込んでいます。初版では「民事弁護の基礎知識」というテキストを使用した講座を設けていましたが、現在の司法修習生には配布されていませんので、今回は取り上げていません。
司法研修所の民事裁判科目では、「事例で考える民事事実認定」に沿って起案することが求められます。テキストと起案の間には相当のギャップがあり、自分で埋めることが求められますが、その作業は必ずしも容易なものではありません。そこで、本講義では、「事例で考える民事事実認定」の基本的な考え方を踏まえて起案の処理手順を総論として分かりやすい形で示し、各論で、処理手順に沿った形で、記録に即した起案の具体例を示しています。以上は、司法研修所における起案、2回試験対策を想定しています。さらに、本講義では、弁護士の立場から、原告、被告から相談を受けた立場で確認すべき内容、原告に対する反対尋問事項、被告の立場からの最終準備書面の具体例を詳細に示しています。これらは、弁護士になろうとする人が、実務についてから役立つ内容を盛り込んでいます。具体的な記録をもとに、これらのことが詳細かつ具体的に示されることはほとんどありませんので、参考にしていただき、将来に活かしてほしいと思います。
「民事保全」「民事執行」は、同名のテキストを使って、実務につく段階で、この程度の知識、理解を持っておくとよいという部分を伝えるものです。保全、執行は、実際の事件を通して学ぶ部分が多く、書式、手続等は、裁判所のホームページで具体的に示されていますし、書式集も沢山あります。これらを参照しながら、個別事件の処理をする中で、身につけていくべきものですが、基本的な考え方の部分を、司法修習生の段階で身につけておくと、実務にスムーズに入って行けることは間違いありませんので、その部分を伝えることに主眼をおき、細かい手続の部分には立ち入っていません。
本講座では、要件事実を取り上げていません。要件事実、事実認定について基礎が理解されている人は、本講座だけで構いませんが、基礎が固まっていない人、忘れてしまった人は、本講座の前に、「実務家による民事実務過去問講座」を聞くことを勧めます。予備試験対策の講座ですが、要件事実の基礎を確認したい司法修習生も意識した内容にしています。準備書面は、実務家として最善のものを作成しようとしていますので、司法修習生にも十分に参考になります。弁護士倫理の問題は、具体的な事例で考えないと身につきにくい部分ですから、まず、予備試験の問題を素材とするものです。
予備試験の講座を聴くときの予習課題は、以下のようになります。
1 被告に対する請求の趣旨、請求に係る訴訟物及びその個数、それが複数ある場合にはその併合態様を記載せよ。
2 当事者の主張を、請求原因、抗弁、再抗弁などに整理して主要事実を記載せよ(文章の形式で)。
※ 1、2は、問題文記載の相談内容だけをみて起案し、問題文中のヒントは見な いで起案して下さい。
3 問題で指定された準備書面を作成せよ。時間制限、頁制限は気にせず、現在の段階で最善と思われるものを起案すること。取り敢えずの形を整えればよいというスタンスは取らないこと。
4 弁護士職務基本規程の条文を一通り読んで、予備試験(平成27年まで)の弁護士倫理の問題を検討すること(メモの作成程度でよい)。
「実務家に学ぶ民事実務実践」(改正民法対応)の講座に,「民事弁護の基礎知識」を追加しました。
従前,司法修習生の事前配布資料の中の「民事弁護の基礎知識」(増補版)(平成25年9月)を利用した「民事弁護の基礎知識」という講座を設けていましたが,現在の司法修習生には「民事弁護の基礎知識」を配布していないことから,最初は,「民事弁護の基礎知識」という講座を外しました。
しかし,現在は,「民事弁護の基礎知識」の内容は,7訂民事弁護における立証活動(令和元年10月増補)(以下「立証」という)及び8訂民事弁護の手引増訂版(令和元年10月増訂)(以下「手引」という)の中に組み入れられています。そこで,本講義では,立証と手引を使って,戸籍と住民票,不動産登記を中心に解説をすることとしました。
講義時間:
3時間程度
配信状況:
全講義配信中
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