4S論パタ憲法に関する質問です。2-1-2-2において、仮に89条の問題について触れる場合、どのように書けばいいでしょうか?公用車という「公の財産」を利用し、運転手として職員を休日出勤させた手当てとして「公金」が支出されたと読み取りました。時間が40分なら触れないor触れるとしてもサラッととは思いますが、時間を無視して書こうとしたときに、どんな感じで書けばいいか悩みました。
まず本問ですが、89条の公金支出は問われていないと読むのが素直です。
たしかに質問者様の読み方も、なるほどと思える面白くて深い読み方なのですが、本問では問題文の3段落目以降で、奉賛会の発会式が開かれ、そこで市長が出席し祝辞を述べたという事情がメインで記述されています。
そのため、奉賛会で市長が祝辞を述べたという「市長の具体的な行為」が問題になっていると捉え、この行為について政教分離原則を検討します。仮に公金支出が問題となっているのであれば、公金に関する具体的な事情(例えば、公金の支出額、公金の使用意図など)が問題文にもっと現れるはずですが、ここではそのような事情が無いので、公金の支出は問われていないと読むのが素直です。
さて、本問で公金と89条に触れる場合には、政教分離原則の根拠条文を示す際に89条を示せばおそらく足ります。これは、89条を独立で検討しても、20条3項の「宗教的活動」と検討事項が丸被りする上に、公金に関する事情がほぼ無いので、そもそも検討しにくいという面があるからです。
そのため公金と89条に言及したい場合には、中村先生の答案例3行目において、例えば『祝辞を述べた行為1は、「宗教的活動」(20条3項)に当たり、政教分離原則(20条1項後段・3項、89条前段)に違反しないか』というように、政教分離原則の根拠条文を明示する際に89条をまとめて書くのが一手です。このように記述をすれば、89条にも目配せできていることを端的にアピールできます。 (さらに読む)
4S論パタ憲法に関する質問です。2-1-1-10の法律1について4S図を考えたとき、法人の人権享有主体性に触れるのも面倒なので、当事者として「飲食店」ではなく、「飲食店のオーナー」としてしまいました。そのように書けば、人権享有主体性について書く必要はなくなりますが、その部分の加点も失うということになりそうでしょうか?取捨選択が難しいなと感じていますが、練習すれば身につきますか?
まず、法人の人権享有主体性に配点がある場合には、その部分を論じ落としたのであれば、若干の加点は失います。もっとも、法人の人権享有主体性は小さな前提論点に過ぎないため、論じ落としても合否を分けるレベルで失点ということはほぼ無いと考えます。
憲法の答案においては、検討すべき人権条項を正しく選択すること・違憲審査基準などを適切に設定すること・事実を豊富に指摘して適切な評価を加え、妥当な結論を出すことなどが求められていますので、法人の人権享有主体性のような小さい論点では合否は決まりません。
さて取捨選択については、論文問題を数多く解き、模範答案や合格者の再現答案をしっかり検討するのが大事です。司法試験系は、慣れ・反射神経・文章力といった体育会系の要素が強く、問題を解いてしっかり反省分析するという地道な学習が何より重要です。
そのため、しっかりと学習・練習を積んでいけば、多くの人が合格ラインに達することができます。間違えても一切気に病まずに、問題を解き続けましょう! (さらに読む)
4S論パタ憲法に関する質問です。2-1-1-4において、厳緩調整を行い±0にするため、内容規制について考慮要素から省くという処理をされています。数字は便宜上のものと考えて、内容規制についても論じた上で中間基準とするのはやめておいた方がいいのでしょうか?思いついたものを書かないというのは、気付いてないと思われそうで躊躇します。
ご質問ありがとうございます。
ここは書きぶりにもよりますが、「内容規制についても論じた上で中間基準とする」ことが一律に否定されるわけではありません。そのため、内容規制にも触れたうえで中間基準に持っていくという処理もあり得ます。
憲法に限らず論文式試験のポイントとしては、試験委員の先生方の手元には唯一絶対の完全解がおそらくあるものの、実際にはそれ以外の処理や考えも一定程度許容されているので、検討事項を外していないのであれば、説得的に論じることで評価されるという点です。
したがって、本問においても内容規制に触れたうえで中間審査に持っていく論述を説得的にできていれば、十分に評価されます。
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4S論パタテキスト憲法p11の答案例24行目において、「パターナリスティックな見地から、重要といえる」という表現があります。
パターナリスティックな制約であれば違憲の方向に評価されると思っていたのですが、誤っているのでしょうか?パターナリズムな考えに基づく目的は原則として違憲であるが、青少年は未熟であるから情報の選別能力が不十分であるため、例外的に目的の重要性が認められるということでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
まず憲法においては、パターナリスティックな制約といったような特定の要素・性質等から一義的な評価や結論が導かれることは多くはありません。同じような要素・性質等であっても、違憲・合憲のどちらにつながるかは事案や文脈による場合が多いです。
そのため、「パターナリスティックな制約であれば違憲の方向に評価される」とか「パターナリズムな考えに基づく目的は原則として違憲であるが、青少年は未熟であるから情報の選別能力が不十分であるため、例外的に目的の重要性が認められる」というように、特定の要素や性質等から、一義的な評価や結論が出るわけではない場合が多いと考えます。
これは憲法の面白くも難しい点ですが、様々な要素・性質等を柔軟に考えたうえで、事案や文脈に応じて適切な処理を行えるかが重要であり、一義的に答えや評価が定まるわけではない場合が多いのです。
そうすると、P11の答案例であれば、青少年は尊重されるべき個人としては未成熟であることから、パターナリスティックな制約は重要といえます。
つまり、成年者に対してパターナリスティックな制約をするのであれば、それは成年者という成熟した大人に対する余計なおせっかいとして重要とはいえないとする余地も十分ありますが、本問は「青少年を刺激の強い性的表現から守る」という文脈なので、青少年保護の観点から重要といいやすいと考えるのです。
このように、パターナリズムな考えに基づく目的だから原則違憲・例外的に重要という一義的なものではなく、あくまでも事案・文脈によって相対的にその意味合いを考えることになります。
結論として憲法は、(できれば判例・学説を念頭に置いたうえで)問題文にある様々な要素を柔軟かつ常識的に粘り強く考え、それを分かりやすく文章表現できるかという点が重要なので、ぜひ4Sの学習を通じて柔軟に考える視座を身につけられるととても良いです。
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伊藤たける先生が執筆された、法学セミナー連載の「FOCUS憲法」について質問です。
この連載の対象者は、どの学習段階を想定しているのでしょうか。
また、先生の講座の基本憲法講座や憲法の流儀を受講したあとで読むことを想定されていたでしょうか。
2点よろしくお願いいたします。
①対象者は、憲法の基礎講座を受講し終えた人です。
②基本憲法は読破後の方が良いとは思います。講義はどちらでも構いません。憲法の流儀は基礎編の受講後でよいと思います。 (さらに読む)
憲法の流儀を受講途中の者です。実質的関連性の基準とLRAの基準の使い分けがわかりません。これまで、実質的関連性の基準=LRAの基準=厳格な合理性の基準と考えてきたのですが、実質的関連性の基準の場合は手段必要性審査がマストではなくなると先生はおっしゃっていましたが、これらはどのように区別するのでしょうか。
また、出典等あれば教えていただきたいです。
ご質問ありがとうございます。
用語の用い方は、論者によって異なります。
まず、違憲となる要件については、ザックリ分けて、①厳格審査基準と③合理性の基準と、その間にある②中間審査基準の3つに分かれます。
その意味で、LRAの基準も、実質的関連性の基準も、厳格な合理性の基準も、いずれも②中間審査基準の一類型となりますね。
中間審査基準のベースとなるのは、実質的関連性の基準です。
重要な目的のためであり、かつ、手段が目的を達成するために立法事実に基づく実質的な関連性認められる必要があるという要件です。
他方、LRAの基準というのは、①厳格審査基準と実質的関連性の基準の間にあるものです。
具体的には、実質的関連性の基準に加えて、LRAの準則(より制限的でない手段では目的が達成できないこと)を要件とするもので、主として、厳格審査基準が原則となる表現の自由の領域で用いられたものです(ただし、その後に「代替的な情報伝達経路が確保されているか」という準則に変化したことも有名な話ですね。)。
このあたりは、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法〔第7版〕』(岩波書店、2019年)のほか、芦部信喜『憲法学Ⅰ憲法総論』(有斐閣、1992年)434~467頁あたりをご参照ください。
最後に、厳格な合理性の基準には、様々な意味があります。
1つは、単に「合理性の基準」を強めたものという趣旨での理解です。芦部信喜『憲法学Ⅱ人権総論』(有斐閣、1994年)227頁あたりでしょうかね。
2つは、薬事法違憲判決が採用した、実質的関連性の基準に加え、職業遂行の自由に対する制約では目的が十分達成できない場合でなければ違憲となる、という基準そのものを指すものです。
3つは、テクニカルですが、違憲となる要件の問題と、立法事実(ないし違憲性)の推定の問題を区別し、一般的な中間審査基準のように違憲性が推定されるものではなく、あくまでも合理性の基準から厳格にしたものなので、合憲性は推定されている、という考え方です。
芦部信喜『憲法学Ⅱ人権総論』(有斐閣、1994年)227頁が「ほぼ同じ基準」としているのはその意味だと理解されています。
以上を詳しく知りたい場合は、伊藤健『違憲審査基準論の構造分析』(成文堂、2021年)をご覧ください。
少なくとも、司法試験受験との関係では、ここまで細かく覚える必要は一切ありません。
表現の自由の表現内容規制は、中間審査基準として、実質的関連性の基準に加えて、LRAの準則ないし代替的情報伝達経路の準則を適用する。
職業の自由の領域では、薬事法違憲判決の射程が及ぶ場合には、同判決の基準(厳格な合理性の基準)を適用する。
平等原則など、それ以外の先例のない領域のうち、合理性の基準を適用するべきではない違憲性の推定が働く事例の場合には、実質的関連性の基準を適用する。 (さらに読む)