まず本問ですが、89条の公金支出は問われていないと読むのが素直です。
たしかに質問者様の読み方も、なるほどと思える面白くて深い読み方なのですが、本問では問題文の3段落目以降で、奉賛会の発会式が開かれ、そこで市長が出席し祝辞を述べたという事情がメインで記述されています。
そのため、奉賛会で市長が祝辞を述べたという「市長の具体的な行為」が問題になっていると捉え、この行為について政教分離原則を検討します。仮に公金支出が問題となっているのであれば、公金に関する具体的な事情(例えば、公金の支出額、公金の使用意図など)が問題文にもっと現れるはずですが、ここではそのような事情が無いので、公金の支出は問われていないと読むのが素直です。
さて、本問で公金と89条に触れる場合には、政教分離原則の根拠条文を示す際に89条を示せばおそらく足ります。これは、89条を独立で検討しても、20条3項の「宗教的活動」と検討事項が丸被りする上に、公金に関する事情がほぼ無いので、そもそも検討しにくいという面があるからです。
そのため公金と89条に言及したい場合には、中村先生の答案例3行目において、例えば『祝辞を述べた行為1は、「宗教的活動」(20条3項)に当たり、政教分離原則(20条1項後段・3項、89条前段)に違反しないか』というように、政教分離原則の根拠条文を明示する際に89条をまとめて書くのが一手です。このように記述をすれば、89条にも目配せできていることを端的にアピールできます。