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2021年9月08日
フォロー 伊藤たける
弁護士/基本憲法Ⅰの共著者
憲法の流儀を受講途中の者です。実質的関連性の基準とLRAの基準の使い分けがわかりません。これまで、実質的関連性の基準=LRAの基準=厳格な合理性の基準と考えてきたのですが、実質的関連性の基準の場合は手段必要性審査がマストではなくなると先生はおっしゃっていましたが、これらはどのように区別するのでしょうか。 また、出典等あれば教えていただきたいです。
ご質問ありがとうございます。
用語の用い方は、論者によって異なります。

まず、違憲となる要件については、ザックリ分けて、①厳格審査基準と③合理性の基準と、その間にある②中間審査基準の3つに分かれます。

その意味で、LRAの基準も、実質的関連性の基準も、厳格な合理性の基準も、いずれも②中間審査基準の一類型となりますね。

中間審査基準のベースとなるのは、実質的関連性の基準です。
重要な目的のためであり、かつ、手段が目的を達成するために立法事実に基づく実質的な関連性認められる必要があるという要件です。

他方、LRAの基準というのは、①厳格審査基準と実質的関連性の基準の間にあるものです。
具体的には、実質的関連性の基準に加えて、LRAの準則(より制限的でない手段では目的が達成できないこと)を要件とするもので、主として、厳格審査基準が原則となる表現の自由の領域で用いられたものです(ただし、その後に「代替的な情報伝達経路が確保されているか」という準則に変化したことも有名な話ですね。)。
このあたりは、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法〔第7版〕』(岩波書店、2019年)のほか、芦部信喜『憲法学Ⅰ憲法総論』(有斐閣、1992年)434~467頁あたりをご参照ください。

最後に、厳格な合理性の基準には、様々な意味があります。
1つは、単に「合理性の基準」を強めたものという趣旨での理解です。芦部信喜『憲法学Ⅱ人権総論』(有斐閣、1994年)227頁あたりでしょうかね。
2つは、薬事法違憲判決が採用した、実質的関連性の基準に加え、職業遂行の自由に対する制約では目的が十分達成できない場合でなければ違憲となる、という基準そのものを指すものです。
3つは、テクニカルですが、違憲となる要件の問題と、立法事実(ないし違憲性)の推定の問題を区別し、一般的な中間審査基準のように違憲性が推定されるものではなく、あくまでも合理性の基準から厳格にしたものなので、合憲性は推定されている、という考え方です。
芦部信喜『憲法学Ⅱ人権総論』(有斐閣、1994年)227頁が「ほぼ同じ基準」としているのはその意味だと理解されています。

以上を詳しく知りたい場合は、伊藤健『違憲審査基準論の構造分析』(成文堂、2021年)をご覧ください。

少なくとも、司法試験受験との関係では、ここまで細かく覚える必要は一切ありません。
表現の自由の表現内容規制は、中間審査基準として、実質的関連性の基準に加えて、LRAの準則ないし代替的情報伝達経路の準則を適用する。
職業の自由の領域では、薬事法違憲判決の射程が及ぶ場合には、同判決の基準(厳格な合理性の基準)を適用する。
平等原則など、それ以外の先例のない領域のうち、合理性の基準を適用するべきではない違憲性の推定が働く事例の場合には、実質的関連性の基準を適用する。 (さらに読む)
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