前回、私は「会社には内部はもちろん、外部にもNo2が必要だ」と書きました。内部のNo2、いわば番頭的な役員は当然いる(その人の立場に能力が見合っているかは別として)わけですが、中小企業のオーナー社長がその人に自分の想いや悩みを話しているわけではありません。特に創業者である場合は、NO2も含めて社員全てについて「役に立たない連中ばかりだ」と思っている場合が非常に多いのです。そこまで思ってはいなくとも、ほとんど全ての社長が彼らについて「物足りない」「力が無い」と思っています。
そこで相談するのは外部の先輩経営者や業界の仲間達。ただ、自社の問題点が外部に漏れるのを極端に嫌いますので、相談する内容は表面的なものになりがちです。ここで、顧問弁護士や税理士に相談できれば良いのですが、社長は彼らを専門分野に限った相談相手と思っていますので、まず相談することはありません。また、そのような相談に乗れる能力や経験がある弁護士や税理士はあまりいません。いたとしても、自分で会社経営をしたわけではありませんので、社長の悩みに「共感」し「同苦」して、共に解決の道を探る事はまず不可能です。
だから多くの社長が占い師などの怪しげな連中に相談を持ち込みます。彼らこそ、専門能力も無ければ、多くの場合「後ろめたい」経験をしてきていますので、彼らが言うことを信じて会社の経営戦略を決める社長の下にいる社員達は大変な思いをするものです。
しかし、彼らには「社長の悩みを聞いて、理解してあげる(フリではあるけども)能力」が士業の人間よりあるのです。実は、社長は相談する内容については「答え」をもっています。彼らはそれをうまく聞き出し、後ろから押してあげているだけなのです。自分の考えと同じだからこそ「先生は素晴らしいことを指南してくれる」と思いこんでしまうのです。
そうと分かれば外部のNO2となれる条件が見えてきますよね。別に「社長の意見に賛同し、ヨイショしましょう」ということではありません。「聞いて」「同苦」しようとする姿勢を見せ、「社長の悩みはなんだろう?」と考え、「これではないか」と思ったことをいくつか相手に投げてみれば、そのうち一つは当たるものです。そうすると社長は「あれ、この先生は単なる専門バカではないかも」「社員や役員が理解していない俺の悩みを分かっている」と思い始め、「経験は少ないかも知れないけど、自分の悩みを話してみようか」と思い始めるのです。
そこからが、占い師と違うところですが、社長から打ち明けられた悩みや問題について、他業種の事例(「他業種」という点が大事。同業種だとボロがでます)を紹介しながら「論理的」に解決の道筋を示して挙げるのです。そして、社長の姿勢や考えについて問題がある部分をちょっとだけ指摘して挙げます。そうすると社長は素直に受け入れ、社員や役員には見せない顔を見せるようになり、自分で答えを考えて、それを話し始めるのです。
あとはその内容について、自信を持ってYES、NOを言うだけ。但し、NOの場合は代替案をその場で示せなければ「やっぱりこいつは口だけだ」と思われてしまいます。以上のやりとりは社長室や会議室ではなく、食事をしながらの場合が効果的です。
このようなことが何度か続いた時、私は「外部のNO2」としての契約を提案しています。ただ、そう簡単に契約が取れるわけではありません。そこで、次回7月19日では「パートナーコンサル契約」が取れるコツを紹介します。
米国PWU大学院でPh.D(経営学博士号)を取得。
1957年生まれ
米国系コンサルティング会社主任コンサルタントを経て
㈱CESを設立。代表取締役。
2000年に弁護士、税理士等の全国組織「NPO法人PRENET21」を設立し、
事業再生の第一人者として中小企業の競争力UPを指導。300社にのぼる会社を優良企業に成長させた実績を持つ。
近年は弁護士事務所や税理士事務所のビジネスモデル改革を指導し、収益力UPを実現。
15社の社外取締役等も務める。
著書に「御社だけのビジネスモデルを創りなさい」「CLマネジメントの時代」「事業承継の考え方と実務」他多数。経済誌「コロンブス」にて事業再生ノウハウを連載中。
2016年7月5日
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