第11回:CS(顧客満足)戦略の限界 CS(顧客満足)は恋愛、CL(顧客信頼)は結婚

 皆さんこんにちは。マーケティング・コンサルタントの瀬本です。本連載は「弁護士さんが中小企業の顧問先を増やし、収益を上げる」為の講座です。

 

「離婚するカップル」と「長く続くカップル」の違い

 前号では「CS(顧客満足)は恋愛、CL(顧客信頼)は結婚」ということを紹介しました。皆さんは恋愛と結婚の違いをどう説明しますか?私の場合、「非日常と日常の違いです」と答えています。

 私のクライアントにブライダルプロデュース会社がありますが、そこのブライダルプランナーに聞くと「結婚式の打ち合わせをしていると、このカップルが続くのか、すぐ離婚するのかがわかる」というのです。その場合の視点は「互いを見つめあっているか」、「見つめあうのではなく2人で同じ方向を見ているか(ベクトルが同じ)」の違いだそうです。前者は離婚し、後者は続くそうです。

 同棲をしていて流れの中で自然に籍を入れる場合は別ですが、多くの人は恋愛のピークで結婚します。恋愛のピークを迎えるまでは双方共に自分の良いところだけを相手に見せようとし、男性は女性にこれでもかとサービスをします。これは非日常だからできること。ところが現実の生活(日常)に入ると、互いの嫌なところや欠点が目につき始め、「こんなはずではなかった」と思い始めるのです。非日常の場合は良いのですが、一緒に暮らすことが日常になっても恋愛の延長で互いを見つめあっていると、互いの欠点の方が見え始めるのは当然のこと。それまでは良いところばかりを見ていたぶん、嫌な点が拡大して感じてしまうのです。

 

CL視点で「パートナー型の弁護士」を目指そう

 恋愛において、人は無意識のうちにCS(顧客満足)活動をしています。しかし、常に満足を与えられるはずもありません。満足とは文字通り、「満たされている状態」であり、一度満足すれば、次はそれが基準値(満足ではなく、当たり前と思う状態)となり、さらに高いレベルの満足を与える必要があります。これには限界があるものです。この限界に達した時、もしくは恋愛関係が日常ではなく、非日常となった時に別れがきます。

 対して結婚は日常であり、「見つめあう関係」から「互いが同じ目標に向かって進む関係」とならなければなりません。これはCL(顧客信頼)型です。顧問契約においても同じです。常に満足を与えるCS型から互いにパートナーシップを持って同じ目的に進む関係にならなければなりません。ところが、クライアントは常に満足を求めます。そうするといつかは破綻する時がやってきます私の場合、クライアントとの顧問契約が10年、20年と続いています。クライアントからは「これまでのコンサルとは1~2年しか続かなかった。でも瀬本先生とはずいぶん長いお付き合いをしていますね」とよく言われます。それまでのコンサルはコンサルのネタが尽きたら終わりだった。そこがCSとCLとの違いです。信頼関係はクライアントと同じ目的に向かって進む、パートナーとなって初めて生まれます。

 クライアントに対する教育が大事なのです。 

 専門家が企業との契約をする場合、大きく「パートナー型」「ワークショップ型」「アドバイス型」「プロジェクト型」という4つパターンがあります。このうち、多くの弁護士は事案ごとに契約をして、それが終わると顧客との関係が切れてしまいます。少なくとも、次の事案が出てくるまでは交流はあまりないのが一般的です。これは「プロジェクト型」です。この型の場合、次々に事案を受注する必要があり、どうしても狩猟型の営業パターンとなって安定した収益がえられません。しかし、顧問契約という「パートナー型」に移行することによって、事案が無くとも収益を得ることができ、安定した収入を得ることができるのです

 プロジェクト型は恋愛と同じであり、パートナー型は結婚と同じです。

 

 次回7月1日では、この4つの契約パターンについて詳しく解説します

講師紹介

瀬本 博一

米国PWU大学院でPh.D(経営学博士号)を取得。

1957年生まれ

米国系コンサルティング会社主任コンサルタントを経て

㈱CESを設立。代表取締役。

2000年に弁護士、税理士等の全国組織「NPO法人PRENET21」を設立し、

事業再生の第一人者として中小企業の競争力UPを指導。300社にのぼる会社を優良企業に成長させた実績を持つ。

近年は弁護士事務所や税理士事務所のビジネスモデル改革を指導し、収益力UPを実現。

15社の社外取締役等も務める。

著書に「御社だけのビジネスモデルを創りなさい」「CLマネジメントの時代」「事業承継の考え方と実務」他多数。経済誌「コロンブス」にて事業再生ノウハウを連載中。
 

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講師著作の紹介

2016年5月21日  

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