皆さんこんにちは。マーケティング・コンサルタントの瀬本です。本連載は「弁護士さんが中小企業の顧問先を増やし、収益を上げる」為の講座です。
前号では「ジャパネットたかた」の商品が売れる理由を紹介しました。結論としては、高田元社長の冒頓として正直そう(に見える?)なキャラクターが最終決定の要素になっているということでした。
ジャパネットは「信頼できる人に選んでもらいたい」という顧客層にターゲットを絞って「その素材(製品)を買えばどんな生活シーンが生まれるか」をイメージさせることを「顧客に寄り添って(親近感を演出・提供して)」語っているのです。この事に上記の顧客層が「共感」して高い購買率をたたき出しています。(他に「緊急性の提供」という別の要素もありますが、これは別の機会に)
数日前、ジャパネットは震災を受けた熊本に売上を寄付する為にキャンペーンを張りましたが、久々に高田元社長が登場しました。やはり彼の神通力はすごくて、圧倒的な売上を上げたようです。高田元社長のキャラクターが「信頼できる人に選んでもらいたい」と思っている顧客層に圧倒的な支持を受けていることがあらためて実証されたわけです。
中小企業の経営者もこの購買層と重なっています。「信頼できる外部の第三者に自分のことを共感してもらい、寄り添ってもらいたい。場合によっては叱ってもらいたい」と思っている経営者が非常に多いのです。多くの経営者が私からすれば怪しげな占い師を師匠として、その人の指摘で経営判断をしている事実はそのことを物語っています。
弁護士も同じです。弁護士は「安心感」や「問題の解決」を売っている仕事です。あるいは「○○万円のリスクを回避できる、もしくは手に入る」というような実利を提供している仕事です。専門用語なんてわからない。難しいこともわからない。弁護士の能力なんてわからない。でも自分のことを分かってくれて、共感してくれて、「大丈夫ですよ。安心して下さい」と言ってくれ、「自分に寄り添ってくれる弁護士さん」になら顧問をお願いしたいと思うのです。
つまり、ジャパネットの高田社長になりましょうということです。弁護士さんと会うと「○○が得意です」とか「これまで多くの○○問題を解決してきました」とか良く言います。でも、それでは受け手の経営者は自分にどのようなメリットを提供してくれるのかをイメージできない。
資格は素材です。弁護士と言う資格者はたくさんいます。「私に寄り添ってくれて、一緒に経営問題を解決してくれる」「この問題を解決すると会社や自分はこうなるとイメージできる」ということが理解できて初めて経営者はその商品を手にしたいと思うのです。
よくサービス業やメーカーでは「顧客満足」という言葉を使います。その場合、「顧客満足がリピートを生む」ということを前提にしているようです。しかし、本当に「顧客は満足すればリピートする」のでしょうか?
私はそうは思いません。「満足したらもっと満足したい」と思うのが人間です。そうでなければ美味いと評判で行列が絶えないラーメン店が潰れるはずはないのに、実際は数年経つとその店に行列する人が減少し、やがて潰れているのです。高級レストランでしか出せない料理を一流シェフが調理する立ち食いレストランとして人気となり、なかなか入れない店だった「俺の○○」系レストランも今は簡単に入れるようになりました。
離職者が多い企業が従業員にアンケートをとると、一番の不満要素は「給与が安い」ことだったことから全社員の給与を1割UPさせたことがありました。その直後のアンケートでは「給与の安さ」を不満要素とする答えは激減しましたが、1年後に同じアンケートをとると、やはり「給与の安さ」が不満1位になっていたのです。
人は「瞬間的な満足」はしても「永遠に満足」することはありません。「満足」を追求する限り、永遠に顧客からの信頼は得られないのです。それはCS(顧客満足)によって顧客がリピートすることはないと言うことを証明しています
だからと言ってCS(顧客満足)戦略が必要ではないということではありません。CS戦略とCL(顧客信頼)戦略を使い分けていくことが大事なのです。「顧客満足」は恋愛であり、「顧客信頼」は結婚と同じです。それをどう使い分けるのかを次回5月20日に解説します。
米国PWU大学院でPh.D(経営学博士号)を取得。
1957年生まれ
米国系コンサルティング会社主任コンサルタントを経て
㈱CESを設立。代表取締役。
2000年に弁護士、税理士等の全国組織「NPO法人PRENET21」を設立し、
事業再生の第一人者として中小企業の競争力UPを指導。300社にのぼる会社を優良企業に成長させた実績を持つ。
近年は弁護士事務所や税理士事務所のビジネスモデル改革を指導し、収益力UPを実現。
15社の社外取締役等も務める。
著書に「御社だけのビジネスモデルを創りなさい」「CLマネジメントの時代」「事業承継の考え方と実務」他多数。経済誌「コロンブス」にて事業再生ノウハウを連載中。
2016年5月6日
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