皆さんこんにちは。マーケティング・コンサルタントの瀬本です。本連載は「弁護士さんが中小企業の顧問先を増やし、収益を上げる」為の講座です。
ある日、久しぶりに「ジャパネットたかた」のTV通販を見ました。相変わらず軽妙なトークで視聴者を引き付けているようです。紹介していた商品はパソコンでしたが、思わず「買おうかな」と思ってしまいました。アマゾンがある時代になぜ「ジャパネットたかた」は売れるのか?
ジャパネットは94年にTVショッピングを始めて急成長した家電通販のリーディングカンパニー。最近では新カテゴリーとして「衣食住」を掲げ、生活商品通販会社として不動の地位を築きつつあります。同社の購買者の7割を占めるのが50代以上の年配層。中でも60代の利用者が最も多いようです。アマゾンや楽天を利用する20代~40代とは顧客層が重なっていません。なぜ年配層はアマゾンを利用せずにジャパネットから買うのでしょうか?
家電量販店やネットショップを見ると多くの商品を揃えています。「良いものを安く」買おうとすればこれらの店やサイトを調べ、最も安価なものを選ぶのが合理的なはず。事実、アマゾンや楽天の利用者はこのような購買行動をとっています。しかし、現実にはそのような行動をしない、したくない人達も多いのです。
そのような人達は何を求めてどのような購買行動をとっているのでしょうか。実は、彼らが望んでいるのは「選んでもらう」行為なのです。商品の質や価格を調べることもなく特定の人が勧める商品を疑うこともなく購買するのです。お年寄りにとって量販店の店員が使う専門用語は意味不明の言語に聞こえているはず。そのような店員がベラベラ説明するより、孫から「おばあちゃんこれが良いよ」と言われれば「じゃあそれにしようかね」ということになるのは自然の成り行き。ジャパネットの通販ではこのような手法が使われています。
ジャパネットの商品が売れる秘密はここにあります。ジャパネットはカメラならコレ、パソコンならコレとカテゴリーごとに商品を一つだけ選んで紹介しています。さらにはその商品が生活の中で活かせる場面をイメージしてもらえるように紹介しています。このカメラの機能がどうのこうのと説明を受けても買おうという気がおきないのに、「遊園地に行った時にこのカメラを使えば、一番楽しそうなお孫さんの顔が夜でもハッキリと撮れて喜ばれますよ」と言われればすぐにでも買いたくなってしまう。つまり製品の先に「夢と楽しさ」を提案しているのです。カメラはただの製品。でも「孫から喜ばれる」という価値を加えることによってそれが商品になるわけです。加えてジャパネット社員の冒頓として正直そうなキャラクターがあれば万全。
年寄りをターゲットにした詐欺師もこれらの手法を駆使しています。そう言えば通販番組に出てくる社長の多くが怪しそうな顔に見えるのは私だけでしょうか?これに対してジャパネットの場合は高田元社長のようにお年寄りから抜群の信頼度がある人達が商品を紹介しています。顧客から信頼を受けられるキャラクターブランドによって多くの支持者を生んだことがジャパネット成功の秘密なのです。
ジャパネットは決して顧客満足を提供しているわけではありません。決して商品が素晴らしいわけではない。信頼している会社、人物あるいはブランドだから顧客は買うのです。顧客満足ではなく、CL(顧客からの信頼)で業績を挙げているわけです。このようなビジネスモデルをCL戦略といいます。これからはCS(顧客満足)ではだめです。CSからはリピートは生まれません。企業からの顧問契約を勝ち取るにはCL(顧客信頼)戦略へ舵をとる必要があります。それは弁護士業でも同じなのです。なぜ「顧客満足」ではだめなのか?
次回5月6日に詳しく解説します。
米国PWU大学院でPh.D(経営学博士号)を取得。
1957年生まれ
米国系コンサルティング会社主任コンサルタントを経て
㈱CESを設立。代表取締役。
2000年に弁護士、税理士等の全国組織「NPO法人PRENET21」を設立し、
事業再生の第一人者として中小企業の競争力UPを指導。300社にのぼる会社を優良企業に成長させた実績を持つ。
近年は弁護士事務所や税理士事務所のビジネスモデル改革を指導し、収益力UPを実現。
15社の社外取締役等も務める。
著書に「御社だけのビジネスモデルを創りなさい」「CLマネジメントの時代」「事業承継の考え方と実務」他多数。経済誌「コロンブス」にて事業再生ノウハウを連載中。
2016年4月15日
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