たとえば、6時間半その場に留め置いた行為が違法な行為と判断された「最判平成6年9月16日」では、6時間半にわたり移動の自由を制約することは違法と判断されました。しかし、最高裁は、6時間半の留め置き、すなわち違法な移動の自由の制約と判断したわけではありません。つまり、どんな事案でも6時間半留め置けば違法、という判断を最高裁がしたわけではないのです。
覚せい剤使用に関する本事案では「留め置くの必要性と被告人の移動の自由を天秤にかけたとき(比較衡量したとき)、後者の移動の自由が上回る」という判断をしたに過ぎないのです。
このように、とくに刑事訴訟法の判例は、当該事案のみでの判断=事例判断ケースが結構な頻度で多く、ある判例の論理構造、評価を別の事案でそのまま使いまわすということでは適切な検討にならないことが多いのです。例えば、本事案が放火や殺人といった重大な事案だったとすると、移動の自由よりも留め置く必要性のほうが上回るという結論も十分にあり得るかもしれません。
論文試験では、こういった「仮にこういった場合は、どういう判断になる?」という問いかけをしてきます。
6時間半=違法な行為と解答することを期待しているわけではないのです。事案に即した、より深い、考える検討を期待しているのです。
そのため、あてはめの事前準備は、各有名判例の事実がどうだった、というだけでなく、著名な判例・裁判例を前提としつつも、"もしこの利益や事実がこうだったら?"という思考訓練をしておくことが必要です。逆に言うと、それをしておけば、たとえ想定外の利益や事実が提示されたとしても、その場で食らいつくことが可能になります。
「あてはめ勝負だから、事実を提示されないと準備できない」なんて考えていませんか?
あてはめ勝負=現場でどれだけ食らいつけるかの勝負、という図式はたしかに正しいでしょう。しかし勘違いしてはいけないのが、あてはめ勝負=自分の感覚で勝負ではないのです。
司法試験・予備試験は「法曹としての法的素養を判断する試験」です。そして、先に述べたように、刑事訴訟法の分野は事例判断が多いものの、それは決してフリーハンドの判断ではありません。過去の判例・裁判例との差分を意識しつつ緻密な理論があります。
本講義は、刑事系TOP合格者の国木正講師が『刑事訴訟法判例百選 第11版』に掲載されている判例をベースに各判例の解説をしていく講義です。
でも、事実面の想定なんて独学でやるのは難しいですよね。特に事例判断のケースなどは、独学で読み込んでもこの判例が事例判断なのか否かと区別すること非常に困難です。
そこで、刑事訴訟法判例百選講義では、刑事系TOP合格の国木正先生が、出題頻度が高いであろう刑事訴訟法判例百選の判例の事案の事実面やその裏側に隠された前提規範などを重点的に解説します。
本講義を受講すれば、ごちゃごちゃしている判例の事実が整理できるだけでなく、仮にこの事案で違う事実があった場合には結論が変わるのではという事前の想定が可能になります。
刑事系TOPが作った刑事訴訟法判例百選講義では、「この判例はこういった規範を使った」「こういう行為を違法あるいは適法にした」ということにとどまる解説ではなく、「こういう事案で、こういうことがクリティカルだったからこの事実が活きてきた」というように、個別の事案に重点を置いた解説も行います。
一通り刑事訴訟法判例を学習したという方が、本講座を受講すると、さらに刑事訴訟法判例を"深める"ことができるでしょう。
刑事訴訟法判例のいやらしい点の1つは、論文試験の答案と異なり、規範が明確に提示されていないケースがあるという点です。
すぐに当てはめを行い、結論を導いているため、指標になる規範のどの部分の話をしているのかが不透明になり、結果誤解が生じてしまいます。
本講義では、そういった隠れた前提規範や評価、さらには背景事情まで深く検討を加え、刑事訴訟法判例百選の判例を真に理解できるレベルにまで深めることが可能になっています。
※刑事訴訟法判例百選〔第11版〕旧新対照表をご参照ください。
※『刑事訴訟法判例百選〔第11版〕』は附属しませんのでご注意ください。
24,800円(税込)
講義時間:
約8時間51分
配信状況:
全講義配信中
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