本講座は旧司法試験過去問(民法・刑法)を題材として、問題文からすぐに「論点」に飛びつくという方が問題文から「条文」を考えることができるようになるための講座です。
・問題文を読んでいる途中で知っている論点に気付き、答案で大展開してしまう。
・論点がわかったら問題文を流し読みしてしまう。
・読み飛ばした部分に実は大事な事実が書いてあった。
これは典型的な論点に飛びついて失敗する一例です。論文式試験では未知の問題が出題され、その思考プロセスの部分にこそ大きな配点があるにもかかわらず、これでは当然点数が入りません。
・問題文を読んでいる途中で知っている論点に気付き、答案で大展開してしまう。
⇒条文に即して問題文を読むため、要件充足の検討段階で試験委員の意図に気付きやすくなる。
・論点がわかったら問題文を流し読みしてしまう。
⇒条文に即して問題文を読むため、どの事実が重要なのかを色分けできる。
・読み飛ばした部分に実は大事な事実が書いてあった。
⇒要件充足の視点で読むため、問題文の取りこぼしがない。
よく司法試験・予備試験は勉強のキャリアではないと言われます。勉強を長くしている方ほど、無意識に知識に頼ってしまいがちです。勉強のキャリアが比較的浅い受験生が試験委員の意図に気付くのは、知識に頼らず条文を元に問題文を読んでいるからです。
たとえば、甲が乙から有名な美術品を購入したが、実はその美術品は二束三文であり、乙は甲を欺罔していた場合、甲はいかなる請求ができるのか。
この事案を読んで瞬時に出てきてほしいのが、不当利得返還請求(民法703条)による代金返還請求です。では、なぜ不当利得になるのでしょうか。
それは、売買(民法555条)⇒詐欺取消し(民法96条)⇒取消しの効果(民法121条)という条文がそれぞれ規定されているからです。この条文操作を瞬時にやることにより、甲と乙の売買契約がなかったことに気付け「法律上の原因がない」代金の返還を請求する不当利得返還請求をするという結論が導けるのです。
司法試験や予備試験はこんな簡単な事案ではありませんが、この条文操作の思考をすることで典型的な事案と問題文とのズレを発見しやすくなり、試験委員の出題の意図を汲みやすくなります。当たり前のように思えますが、これが法律家・実務家としての素養なのです。
本講座では、旧司法試験の民法(平成22年第1問・平成21年第1問・平成20年第1問)、刑法(平成21年第1問・平成20年第1問、第2問・平成16年第1問)を素材として、事案で用いる条文の炙り出しをし、典型事案とのズレを確認します。このトレーニングにより条文から事案を読み解く能力を習得できれば、論点にすぐ飛びつくことがなくなり、かつ、「悩みを見せる」検討をすることが可能になります。
法律論とは「事実→条文→文言→規範(要件・効果・適用範囲)→根拠→基準→評価・あてはめ→反論・対立点」の順番を進みます。必ずはじめは事実と条文からはじまります。この思考が身に付いていれば、どこに多くの事実が振られているのかを問題文から見抜くことができます。
多くの事実が振られている部分には当然多くの配点が振られている可能性が高いです。そこに試験委員の出題意図が隠されている可能性があります。
講義時間:
約8時間
配信状況:
全講義配信中
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