4S論パタ刑法2-3-2で、①問題文3行目の事情はどう使えばいいでしょうか。初見時に、使途を限定された金銭を、それとは別の用途に使用した点で、横領罪等何らかの財産犯が成立しないのかと考えてしまいましたが、触れない方がいいでしょうか。また、②Yの行為は教唆犯という処理がされていましたが、幇助犯という考え方も採ることができそうでしょうか。以上2点について、教えて頂ければと思います。
ご質問いただきありがとうございます。
3行目のパチンコ等に生活費をつぎ込んだという事情は、Xが有印私文書偽造罪に至るきっかけとなる事情ですので、独立して触れる必要はないと考えます。
この事情は、たしかに単純横領罪と捉える余地も全くないわけではないのですが、仮に単純横領罪など財産犯を検討させる場合であれば、もっと多くの事情が問題文に記載されるはずです。しかしそのような事情はないため、この3行目の事情は、Xの有印私文書偽造罪につながる前提事情に過ぎないと読み、独立して触れる必要はないと考えるのが無難です。
Yのクレカ貸与とそれに伴う指示は、幇助犯とは考えません。幇助犯とは、既に犯罪を行う決意を固めた者を援助する場合をいいます。すると、Yの上記行為は、その行為によってXが詐欺罪等に走ってしまったきっかけとなったものなので、既に犯罪を行う決意を固めた者を援助したとはいえず、幇助犯に当たりません。
ここは、Yの上記行為によって、Xが詐欺罪等を行うのを決意させてしまったものとして、教唆犯を検討すべきです。 (さらに読む)
4S論パタ刑法2-3-1で、「行為2や3は、行為1の意思決定に基づくものではない」「行為1~3は連続のものとみることはできない」としつつ、吸収関係を認めるという処理がしっくりきません。どのように理解すればいいでしょうか?視点を異にしなければならないとは思うのですが、うまく言語化できないので、ご教授下さい。
この度はご質問をいただきありがとうございます。
これは、罪責の成否自体と罪数論を分けるという発想で整理するのが一手です。
まず行為1~3は、各行為間にAの言動や甲の逆上・殺意の発生という事実自体が介在しているので、一旦事実自体は分けて考えます。そのため、行為1~3については、事実自体は介在事情によって大なり小なり分かれているので、それぞれに暴行・傷害・殺人罪を成立させます。
ここでは、事実自体を切り分けて検討し、それぞれの罪責を成立させているのみです。
そのうえで行為1~3について、罪数論を用いて、複数の罪責が成立している場合にどのような種類・範囲の刑罰を科すかを考えます。ここでは、事実自体にそれぞれの罪責を成立させた後に、それぞれの罪責をどのように数えて評価するとよいかという話であり、事実自体というよりも事実に対する罪責の数え方・評価の話になります。
そうすると、行為1~3を切り分けて成立させた暴行・傷害・殺人罪は、形式的には3つの罪責になっています。この場合に、これらをどのように数えて評価するとよいかというと、これらはAを時間的場所的に接着した行為となっており、上記3罪は一連一体の関係になっているといえるので、最も重い殺人罪に残り2罪を吸収して評価し、殺人罪だけで最終的に処理するのが適切となります。
このように、まずは事実自体に罪責をそれぞれ成立させ、成立したそれぞれの罪責をどのように数えて評価すればよいかというのが罪数論であり、罪責の成否自体と、成立した複数の罪責の数え方・評価の話であると分けて考えれば大丈夫です。 (さらに読む)
4S論パタ刑法2-2-9で、マンションの居室内に侵入した行為について、住居侵入罪の成立が否定されています。この点については同様に考えていましたが、マンションという管理されている場所への侵入であると考え、邸宅侵入罪が成立すると思ってしまいました。そのような立論はあり得ないでしょうか?
この度はご質問をいただきありがとうございます。
挙げていただいたマンション自体への住居侵入罪の立論は、全くありえないわけではないと考えます。
もっとも本問では、マンション自体への住居侵入罪に関する事情がほぼないことから、題意としては問われていないと読むべきです。仮にマンション自体への住居侵入罪の成立を検討させたい場合には、問題文のマンションの物理的構造や管理業者などの事情が問題文に記載されると思われますが、本問はそのような事情が皆無であるため、マンション自体への住居侵入罪は問われていないと読むのが一般的です。
これは論文式試験の面白くも難しい点なのですが、理論上は一応問題となる場合でも、問題文の書きぶりから敢えて問われていないという場合もあります。そのため、問題文の内容を実質的に把握した上で、何をどのように書くか、あるいは書かないのかという選択をする必要があるのです。
このような慣れと反射神経のような要素も論文式試験では問われるので、ひとつひとつの論文問題を丁寧に検討して考えていくことが大事です。
ちなみに邸宅とは、空家や閉鎖中の別荘など、居住用の建造物で住居(起臥寝食に利用される建造物で家やマンションのこと)以外のものを意味するので(『基本刑法Ⅱ 第3版』76頁)、本問のマンションに関しては、邸宅侵入罪というよりかは、住居侵入罪とする方がおそらく適切です。 (さらに読む)
4S論パタ刑法2-2-7で名義人と作成者の同一性を否定する理由として、作成者を乙とするという構成を採った場合、変造では済まないとする根拠は
①「20年に渡り乙の名で実社会生活を営んできた者が、氏名という契約書の本質的部分に長年使用していない甲と記載した」②「作成者は多重債務者乙であるが、氏名欄に借金の無い甲と記入することは、返済能力という本質に係る部分に変更を加えた」のどちらでも問題ありませんか?
ご質問ありがとうございます。
ここでは、挙げていただいた②を根拠にした方がよいです。
本問の借入申込書においては、返済能力の有無が重要な要素となっています。そのため、この返済能力の有無について偽っているならば、名前が同じ「甲」であっても、返済能力という重要な要素を偽っているので、「偽造」に当たります。
したがって、返済能力に直結する②を根拠にした方が適切です。 (さらに読む)
因果的共犯説について、修正共犯説の積極的な意味での制限従属性説と混合惹起説の消極的な意味での制限従属性説について、責任をどのように考えているのか教えてください
ご質問ありがとうございます。
共犯の学説は学者でも三者三様で質問いただいた点についても違いはないという見解と違いが生じるという見解があります。
なお、司法試験対策との兼ね合いでいえば、〇〇説と××説を知っているかどうかとか、学説の知識を知らないと解けない問題は基本的には出題されません。
ですので、ひとまずは判例や通説を理解して事例問題を解けるようにトレーニングを積んでください。 (さらに読む)