この度はご質問をいただきありがとうございます。
挙げていただいたマンション自体への住居侵入罪の立論は、全くありえないわけではないと考えます。
もっとも本問では、マンション自体への住居侵入罪に関する事情がほぼないことから、題意としては問われていないと読むべきです。仮にマンション自体への住居侵入罪の成立を検討させたい場合には、問題文のマンションの物理的構造や管理業者などの事情が問題文に記載されると思われますが、本問はそのような事情が皆無であるため、マンション自体への住居侵入罪は問われていないと読むのが一般的です。
これは論文式試験の面白くも難しい点なのですが、理論上は一応問題となる場合でも、問題文の書きぶりから敢えて問われていないという場合もあります。そのため、問題文の内容を実質的に把握した上で、何をどのように書くか、あるいは書かないのかという選択をする必要があるのです。
このような慣れと反射神経のような要素も論文式試験では問われるので、ひとつひとつの論文問題を丁寧に検討して考えていくことが大事です。
ちなみに邸宅とは、空家や閉鎖中の別荘など、居住用の建造物で住居(起臥寝食に利用される建造物で家やマンションのこと)以外のものを意味するので(『基本刑法Ⅱ 第3版』76頁)、本問のマンションに関しては、邸宅侵入罪というよりかは、住居侵入罪とする方がおそらく適切です。