本特集は、2023年度入学者選抜試験において狙われてもおかしくない最新重要判例について纏めました。後世のためにも案内するが、予備校講師の先生方や受験生にまず気を付けて戴きたいのは、「司法試験や予備試験における重要判例と、法科大学院入試における重要判例とは視点が異なる」ということです。
法科大学院入試における重要判例の位置付けとは、「基本書や判例百選に掲載されている基本的知識・判例の規範を用いて、別事例(最新判例)についてもそれらの知識を利用して、具体的な事案を解決することができるか」を試すことであり、最新判例で問題点として生じた事項について、知識として入れ直したりする必要はないです。
あくまでも、既存の知識・判例の理解を前提としたうえで、未知の事案(最新判例)についてもそれらの知識を用いて、論理的かつ説得的に妥当な解決を導くことができるかという視点に基づくことが必要です。
そのため、最新判例については出題予想として用いるというよりは、むしろ自分自身の知識の総整理として用いて頂きたいです。
司法試験・予備試験受験生・法科大学院生にとってこの最新判例分析が役に立たないとまでは言っていません。司法試験実施後、予備校としては最も早くに最新重要判例を案内するものであり、夏季で習得した知識知識の定着・ブラッシュアップに利用して頂ければ光栄です。
なお筆者は昨年度については慶應義塾大学法科大学院・一橋大学法科大学院入試対策で狙われる可能性のある最新判例(憲法)として紹介した事案が、そのまま東京大学法科大学院入試で出題されるということがありました。
一橋・慶應対策特集を読んでいた方から、沢山の感謝の言葉が寄せられたが、「各年度の入試問題はホームページ上では非公開」という東大側の都合等も重なり、東京大学法科大学院入試対策を連載できず案内できなかったことが悔やまれる結果となりました。
そこで、今回は『法科大学院入試最新判例』という特集で、東大を含めた各校の受験生にも重要判例を知って頂くべく、案内させて戴くこととしました。一昨年以前は慶應追試憲法・一橋大学法科大学院入試における元ネタ判例を的中させていることから、今年度もぜひ【有効的】に利用頂けることを切に願っています。
令和4年に入り、①代理投票の補助者を投票事務従事者に限定する公選法の規定の合憲性、②在外国民による国民審査権行使制限に関する判断が最高裁判所により下されています。
①については15条4項違反・14条1項の事実が主張されており、大阪地裁・高裁においてその判断がなされています(なお最高裁では上告棄却(不受理)となっている)。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-012062216_tkc.pdf
②『在外国民による最高裁判所裁判官国民審査における在外国民の審査権行使制限の合憲性を判断した最高裁判決』については、関連判例として最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁(憲法判例百選Ⅱ第146番、以後全て最新版の判例百選の事件番号のみを案内する)があります。
この関連判例の基礎知識を用いた上で、受験生の判例知識を問うことも予想されます。なお、この判例に基づく事例が出題されたとしても同百選判例の基本知識を用いることで解答が可能であるが、本判例では審査基準の厳緩判断の際に、在外国民の国民審査権は選挙権と同様に「国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の機能の一内容であることに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査を行うこととしている」事実を挙げています。
そのうえで、上記百選判例の判断枠組みに拠りつつ、「国民の審査権又はその講師を制限することは原則として許されず、審査権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない」として厳格に審査をしていることを押さえておいて欲しいのです。紙面の都合上、本判例における他の重要点については、以下リンク先の最高裁判例解説に譲ります。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-012052215_tkc.pdf
表現の自由に関する基本的な枠組みに依拠して判断した裁判例として、③『警察による街頭演説中のヤジ排除行為等の合憲性』が争われた事案が挙げられます。いわゆる表現の自由(21条1項)VS公共の福祉(13条後段)の対立構造で、しかも行為の必要性・相当性(合理性)を判断して結論を導いていることからしても、法科大学院既修者入試に臨む受験生にとってはお馴染みでしょう。
受験生の基本知識の復習素材として本判例を用いて頂きたいのです。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-012042187_tkc.pdf
同様に、④『公園施設である追悼碑の設置不許可処分が適法とされた事例』については、過度に広汎な規制の法理や表現の自由に関する事項・パブリックフォーラム論の適用について復習できるので、判旨のみならず解説を読み、各自で復習願います。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011942100_tkc.pdf
⑤表現の自由に関する問題として、近年法科大学院入試ではヘイトスピーチに関する法令・行為の合憲性を求めるものが頻出です。今年2月、最高裁により『ヘイトスピーチ対処条例の合憲性』について判断がなされたので、一度確認してください。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-012002166_tkc.pdf
⑥プライバシー侵害と表現の自由の対立について、『長良川事件報道訴訟判決』(最判平成15年3月14日民集57巻3号229頁・百選Ⅰ67事件)の判断枠組みを踏襲し、判断した判例として『家裁調査官による担当事件に関する論文等の公表とプライバシー侵害』(最判令和2年10月10日民集74巻7号1807頁)があります。特に規範部分について、各自確認してください。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011851996_tkc.pdf
集会の自由(表現の自由)に関する判例として、泉佐野市民会館事件(憲法百選Ⅰ第81番)や上尾市民会館事件(最判平成8年3月15日民集50巻3号549頁)の基準を用いて判断した最高裁判例として、⑦『「表現の不自由展かんさい」の大阪府立労働センター利用承認取り消し事件』があります。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011932098_tkc.pdf
職業の自由(22条1項)に関する最高裁判例として、⑧『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条の憲法適合性』が争われた事案があります。これは、受験生であればご存じの、『薬事法違憲判決事件』(憲法判例百選Ⅰ第92番)の判断枠組みに依拠し、目的手段審査に基づき判断されています。判旨そのものが受験生の答案としてそのまま使えるので、ぜひ答案の書き方の参考としていただくとともに、重要判例として押さえてください。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011982163_tkc.pdf
また、⑨昨年度東京大学法科大学院入試の元ネタとなった『要指導医薬品ネット販売規制事件』も上記薬事法違憲判決を引用しており、近年の法科大学院入試における同百選判例の重要性を認識頂けるかと思います。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011902044_tkc.pdf
信教の自由及び政教分離原則に関する重要判例としては、『沖縄孔子廟違憲判決(国公有地の無償提供の合憲性)』があります。これは現在の憲法判例百選には搭載されていない判例ですが、恐らく次版では掲載されることが予想される重要判例です。いわゆる空知太神社事件基準(『砂川政教分離訴訟』最判平成22年1月20日民集64巻1号1頁・百選Ⅰ47事件)の判旨と同様の基準を用いて、最高裁がその違憲性につき判断を下しています(詳細については、https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011882034_tkc.pdf参照)。
いわゆる「婚姻をするについての自由」について、近年日本国内で問題となっている同性婚問題について判断した地裁判決があります。最新判例の傾向等を把握・分析できていない(予備校)問題集を演習しているだけでは、この問題について出題されたときに、解答することができないという事態が生じるかもしれません。そのような事態を避けるためにも、裁判所がどのような法的構成を用いて、この問題につき妥当な結論を導いているのか、(その論理展開・法的構成について)各自できちんと確認してください(https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-011872032_tkc.pdf)。
なお、この最新重要判例分析作成時点で、既に中央大学法科大学院入試は終了していますが、中央では人権分野だけでなく統治分野(地方自治)の考えを問われたことから、受験生は今後他の主要校についても統治が出るのではないか・統治判例をも押さえなければならないと不安に感じている方も多いと思います。しかし、統治は基本的な考え方(直接民主制と間接民主制の差異や、地方自治の本旨=団体自治・住民自治という点)をきちんと理解していれば、解答することで対処は可能です。闇雲に統治分野の判例を覚えるというのではなく、基本書などでコアとなる知識や考え方をきちんと理解し、対処するよう努めて欲しいものです。それだけでも、統治分野については十分に合格ラインに入ることは可能です。
法科大学院入試の場合、民法については最新判例の重要性は極めて低いです。①判例百選の判例をきちんと押さえること、②特に判例百選の中で、改正民法施行により明文化された箇所については、その条文をきちんと押さえる(例えば『将来発生する債権の譲渡の有効性』〔最判平成11年1月29日民集53巻1号151頁・百選Ⅱ第8版26事件〕については、明文化されたが、条文を含めてきちんと指摘できるか等)ことで事足ります。
つまり、最新の判例よりも、❶現在の法科大学院入試の傾向からして判例百選で紹介されている判例の規範を覚えることが重要です。
加えて重要なのは❷基本知識があることを前提に、問題文をきちんと把握し、原告の請求をきちんと構成することを出発点として(※なお、請求を答案に必ず記載しなければならないという訳ではない点に注意)、条文の要件効果を意識した答案を書けるようにすることです。
これができなければ、当事者の反論(抗弁等)を適切に指摘出来ず、いわば空中戦(論点だけ指摘する答案で条文の解釈を何も行っていない・実質の検討が何もできていないと評価される答案)となり、採点官に評価されない答案となってしまいます。
条文のどの文言の解釈の問題で、そこから百選に記載されている論点・規範が出現するという視点が非常に重要であるので、ぜひ日頃からその姿勢を身に着けて戴きたいと思います。
繰り返すが、民法については最新判例よりも、基本判例・条文に基づく基本知識が重要であり、これだけで合否が決することとなります。そして法科大学院入試で近年出題される傾向にある❸民法改正により明文化された箇所をきちんと押さえる、❹旧法と考え方が変わった箇所(例えば連帯債務の相対効)を押さえる(=条文できちんと指摘できるようにする)ことが重要です。これらはお手持ちの基本書や予備校の入門書、改正民法について条文とともに解説してある書籍を利用しつつ、各自が有している六法で対応する条文をチェックするなど、日頃コツコツと勉強し、直前期に最終確認をして頂きたいと思います。
刑法についても民法と同様、百選判例の知識があれば事足ります。そのため、以下では既存知識の復習教材と、最新判例を素材として問題が作られ、かつ法科大学院受験生が弱い分野について、知識の復習教材として判例を案内します。
①特に法科大学院受験生は贈賄罪・収賄罪について復習できていない方が多いです。反面で、たとえば2019年度一橋大学法科大学院入試刑事系刑法設問2において賄賂罪が出題されていますが、基本知識の有無だけでほぼ合否が決まったという事情があります。
そのため、以下の判例を用いて、「職務関連性」という要件や、そもそも賄賂罪の保護法益は何か把握したうえで妥当な結論を導けるようにして頂きたいと思います。なお、下記記載判例の賄賂該当性の事実認定の箇所は、法科大学院入試ではそこまで必要ではないので、確認する程度でよいと思われます(∵賄賂性の認定については、刑事実務科目・刑事事実認定の性格が強すぎるため)。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-071822218_tkc.pdf
遺失物等横領罪(254条)における「横領」という文言を解釈する際に、不法領得の意思が問題となるが、この場合の「不法領得の意思」とは、窃盗罪(236条)における不法領得の意思と同義なのか、それとも横領罪(252条)における不法領得の意思と同義なのでしょうか。
まず窃盗罪における不法領得の意思と、単純(業務上)横領罪における不法領得とで、定義が違うことに気づけない受験生は、ここで今一度お手持ちの基本書・定義集等を確認願います。そのうえで、本高裁判例では、遺失物横領の場合はどちらの定義が用いられるのか明示しています。なお解説では権利者排除意思について述べられていますが、そこはまだ最高裁による判断が出ていないので、法科大学院入試受験生においては深入りしなくて良いです。すなわち単純横領罪等における、「横領」行為の場合の不法領得の意思の定義とは異なり、窃盗罪における不法領得の意思と同様の定義を用いるということをきちんと押さえて頂きます https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-071802195_tkc.pdf(なおこの判例に関する案内は 令和3年度重要判例解説127頁にも記載されている)。
以下記載の判例は非常に話題となったものであるため、気になる受験生の為に案内します。いわゆる『すり替え作戦における窃盗罪の実行の着手』について判断し、今年話題となった判例として最判令和4年2月14日決定があります。
下記判例評釈にも記載されているとおり、この最高裁決定については学説上も批判が多いです。そのため、事案で「窃盗罪の実行の着手が認められるか検討せよ」という問題が出題されたときに、まずは窃盗罪における実行の着手=「窃取に密接な行為」ということをきちんと指摘したうえで、あとは事実認定の問題であるということを押さえておいてください。余裕があれば本判例ではどの時点が「窃取に密接な行為」となるのか、その事実認定について確認する程度でよいです。繰り返すが、重要なのは「窃盗罪における実行の着手とは、どの時点における行為か」という規範ないし定義です。そこがわかっていなければ話にならないので、必ず押さえるようにしてください。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-071772169_tkc.pdf
民法や司法試験と同様、この科目で重要なのは基本知識と百選掲載判例の理解である。法科大学院入試では上三法ほど難しい知識は問われない傾向にあります。
会社法については、たとえば①法令違反を主張するのであれば、具体的に会社法上のどの条文に反するのかをきちんと指摘することが重要です。また、②たとえば株主総会決議取消の訴え(831条1項各号参照)など、問題文の事情や設問に基づき適切に訴訟選択をしたうえで、その要件をきちんと把握したうえで、答案に示せるかが非常に重要となってきます。すなわち、要件効果を意識したうえで、自分が覚えている論点が、条文のどの文言(要件)に関する解釈を導くための論証なのか、日常的に勉強する中できちんと把握して頂きたいのです。
最新判例で重要なものとしては、差別的新株予約権無償割当の差止について判断した最高裁判例が挙げられます。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-051582155_tkc.pdf
同様の事案としてブルドックソース事件判決(最判平成19年8月7日民集61巻5号2215頁・百選4版98事件)があり、また令和元年に司法試験でも出題された論点です。法科大学院受験生にとっては難しい論点ですが、国立トップ校レベルであれば出題されてもおかしくはないレベルなので、同校を受験するのであれば復習教材として利用願います。
他にも重要な判例として『株式買取請求者による株主総会議事録の閲覧請求が認められた事例』(最判令和3年7月5日判決)がありますが、百選以外の新たな知識を求めることとなり、司法試験やトップ校の現場思考問題以外では出題が想定しがたいため、本連載では案内程度に留めます。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-051552103_tkc.pdf
民事訴訟法は定義を覚えていなければ話になりません。弁論主義の定義、弁論主義の第1~第3テーゼの定義、処分権主義の定義を正確に答えられますか。既判力が作用する場面と重複訴訟の禁止が作用する場面との区別がきちんと出来ますか。一見して非常に簡単なように思える分野でも、受験生は全く理解していないことがあります。まずは基本知識や定義を覚えること、次に事案はどの場面における問題なのか(訴訟準備段階なのか、訴訟係属後弁論準備段階なのか、弁論手続段階なのか、それとも判決後の場面か、判決確定後の場面なのか等)きちんと把握できること、それこそが民事訴訟法の問題を解くうえでのスタートラインです。
あとは百選に掲載されているような判例をきちんと理解します。そして具体的事例や場面を想起し、自分で具体例を挙げられるようにして頂きたいのです(一例として2022年度東京都立大学法科大学院民事訴訟法科目の問題参照)。
そのうえで、民事訴訟法の裁判例で今年度話題となっていた事例について案内します。受験生は判例集や基本書等で基本知識を復習し、余裕のある方は案内している判例を読み、知識を深めて欲しいのです。
①一部請求と残部請求の問題や、重複訴訟の禁止(142条類推適用)について問題となった最新判例として、東京地判令和3年4月20日判例時報2510号61頁が挙げられます。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-061382222_tkc.pdf
この事案を素材として、入試問題が出題されることも考えられることから、今一度受験生は上記論点について復習してください。そして余裕があれば同裁判例も確認すると良いでしょう。また重複訴訟については今年度の中央大学法科大学院入試でも出題されていることも踏まえると、今年度入試において非常に重要な論点であるといえます。きちんと押さえてください。
また、②(ア)遺言無効確認訴訟は受験生にとって聞きなれていると思いますが、では「遺言有効確認の訴え」に確認の利益が認められるのでしょうか。
そして②(イ)この判例事案における後訴は、前訴の既判力に抵触しないとしても(=後訴の訴訟物が前訴のそれと同一・先決・矛盾関係にあるとは認められないとしても)、信義則に反し不適法とならないでしょうか。これが問題となった事案について、下級審判決と異なる判断をした最高裁判例として令和3年4月16日裁時1766号2頁が挙げられます。
https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-061252068_tkc.pdf
③あとは法科大学院入試ではそこまで重要ではないが(司法試験や法科大学院の判例研究課題レベル)、今後改定される民事訴訟法百選には掲載されるだろう重要判例であるため、以下参考までに案内しますhttps://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-061242061_tkc.pdf。
もっともこの判例は、法科大学院受験段階では、あくまでも民事訴訟法を得意とする受験生であれば適用条文などを確認する程度で良いと思います。この判例に深入りをするくらいならば、他の基本事項を学ぶことを薦めします。
刑事訴訟法についても、最新判例よりも、まずは基本知識を押さえることや、判例百選に掲載されている基本判例の考え方・論証・定義を身に着けることで足ります。そのため、最新判例はあくまでも参考程度に留めておきます。
まず、捜査法分野からの重要な最新判例としては、過去の司法試験でも出題されたことのある『マンション内ゴミ集積場に捨てられたゴミにつき刑訴法221条の領置という手続によって取得できるか(占有侵害の有無)、又は差押令状を要するか』について判断した裁判例です。
z18817009-00-081512185_tkc.pdf (lawlibrary.jp)
つぎに、捜査機関が内視鏡を用いて被疑者の大腸内の異物を採取する行為につき、強制処分該当性の有無を判断した事例もあります。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-081432054_tkc.pdf
この裁判例については、強制処分にあたるという点に焦点を当てた評釈がありますが、果たしてどのような令状を取得すればよいのかという点を特に受験生は押さえてください。
また、違法な逮捕に続く交流の拒否につき判断した事例として、東京高判昭和54年8月14日判タ402号147頁(刑訴法百選第十版14事件)に類似する裁判例として、富山地裁令和2年5月30日 https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-081391979_tkc.pdf が挙げられます。なお逮捕後の勾留の適法性が問題となる事例としては、(1)A罪で逮捕した後にA罪と被疑事実の同一性のないB罪のみで勾留することが出来るか(2023年度中央大学刑事訴訟法設問2)と、(2)A罪で逮捕した後、そのA罪に加えて被疑事実の同一性のないB罪でも勾留することができるか、(3)A罪で逮捕した後、被疑事実の同一性のあるA´罪で勾留することができるか、ということの区別をきちんと出来るようにしてください。
訴因変更によらずに縮小認定という方法で判断した事例として大阪高等裁判所令和3年12月10日判決が挙げられます。https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-071792192_tkc.pdf
覚せい剤自己使用が問題となった事案において尿の鑑定書が違法収集証拠として排除され無罪となった事例としてhttps://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-081351922_tkc.pdf が挙げられます。この判例を復習するかはさておき、ご自身の基本書等を用いて、今一度違法収集証拠排除法則について復習してください。
2022年9月1日 藤澤たてひと
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