藤澤たてひと法科大学院入試ニュース「早稲田ロー 入試の変更点」

2022年度早稲田大学法科大学院
入学者選抜(新制度)の分析と対策

目次
1.入試の変更点
2.試験制度変更点の詳細と入試分析・講評
3.BEXAの講座における法科大学院入試対策(既修者コース)に
  直結する講座(未修者コース対策については別途連載予定)

⒈ 入試の変更点

 
⑴ 今年度(2021年9月18日~19日)実施の早稲田大学大学院法務研究科(以下,「早稲田大学法科大学院」と記載する)入試につき,下記のとおり変更がありました。

① 一般入学者選抜試験(既習者コース)における入試科目が6科目に変更されました。

従来:憲法/民法/刑法/民訴法/刑訴法の5科目

今年度:商法が追加。憲法/民法/刑法/民訴法/刑訴法/商法の6科目

② 上記⑴に伴い,筆記試験(法律科目)の配点は下記の通り変更となりました。

従来:憲法60点/民法150点/刑法90点/民訴法60点/刑訴法60点
計420点

今年度:憲法100点/民法180点/刑法120点/民訴法80点/刑訴法80点/商法80点
計640点

※参考:1日目の試験科目と試験時間:憲法60分/民法120分/刑法90分
 2日目の試験科目と試験時間:民訴法・刑訴法2科目で120分/商法60分
※筆記試験以外に,別途書類審査の成績を考慮のうえで,合格者を決定。
※他の法律科目の試験時間については変更ありません。

③ 法曹コース設置および入試改革により,定員数(コース毎配分)が変更となりました。

従来 :❶既習コース約140名・❷未修コース約45名,人材発掘入試を加え,
定員約200名

今年度:❶既習コース:約160名(特別選抜:5年一貫型40名・開放型40名。
一般選抜:約80名)・❷未修コース:約40名(一般選抜のみ)❶❷計 約200名

④「人材発掘」入試,および学部3年次生特別入試枠(従来型)選抜は廃止されました。

ただし,法曹コース登録者については引き続き,3年次在学中に特別選抜(開放型)を利用した  受験が可能です。

⑤ 一般入学者選抜における一次選抜(書類審査)は廃止されました。

例年,出願者の10%以上が一次試験で落とされていました同選抜が廃止されました。
その結果,受験要件を満たした出願者全員が筆記試験を受験出来るようになりました。

⑥ 入試日程が変更となりました(出願日変更・合格発表・入学手続締切日については省略)

従来 :8月第4週の土曜・日曜(昨年度入試:8月22日・23日)
今年度:9月第3週の土曜・日曜(今年度入試:9月18日・19日)
※冬季に行われていた「人材発掘」入試は,昨年度実施を最後に廃止されました。

⑵ 新たに設けられた特別選抜コース

① 特別選抜(5年一貫型)

早稲田大学法科大学院と法曹連携協定を締結した大学(学部)の法曹コースに登録している学部生を対象とした入試。
書類審査 (履修科目やGPA等)により合格者が決定され,一般入学者選抜入試とは異なり,別途筆記試験は課されません。
対象:早稲田大学法科大学院と法曹連携協定を締結した,熊本大学・西南学院大学・明治学院大学の法曹コース登録者かつ2022年3月に修了・卒業見込みの方

② 特別選抜(開放型)

各大学の法曹コースに登録している者を対象とした入試。書類審査および論述試験(3科目:憲法〔100点〕、民法〔180点〕、刑法〔120点〕計400点)の成績を総合的に判断し、合格者が決定されます。
地方専願枠(地方大学出身者で,希望する者の内,2名を上限に選抜。
地方大学の定義については,早稲田ロー発行の募集要項7頁を参照願います)あり。

⒉ 試験制度変更点の詳細と入試分析・講評

 
⑴ 入試の変更点⒈⑴①②について

筆記試験(法律科目)にて配点の変更があるものの,民法の配点比率は低くなりました。
(従来:配点は合計点の1/3以上を占める→今年度:合計点に占める割合は下がり,全体の1/4を僅かに超える程度)
それでも,他の科目と比較すると依然として民法の配点率は高く,合否を左右する重要な科目であることはいうまでもありません。

⑵ 商法の対策について

① 問題の参考となる法科大学院入学試験問題について

初めて課される試験科目であり,特に受験生は不安であると思います。 以下は参考までに,試験時間60分で課される問題(目安)として下記の法科大学院(ロースクール)における入試問題を案内いたします。
例:明治大学法科大学院 2021年度入試 商法科目(試験時間:60分)
試験時間が60分ということで共通しており,また難易度についても,同じ首都圏にある法科大学 院であること,商法を試験科目として課す最初の年度であることから概ね同程度であることが予想されます。

② 試験対策について

現時点(4月末日時点)において,手形法や商法総則など商法科目の試験範囲・詳細についての案内は見当たりません。
そのため,今後開催予定の法科大学院入試説明会等を通じて案内または受験生からの質疑に基づく回答があることが考えられます。
他のロースクールにおける入試問題を見る限り,全範囲と明記されていても,実際に出題されるのは会社法であることが慣行となっています(京都大学法科大学院入試など一部の大学を除く)。ですが,特記事項や追加説明のない限り,手形法や商法も試験範囲に含まれると考えることが適切です。
受験対策としては,上記入試問題を解くことも良いです。そのほかに,普段の学習用教材として『Law Practice商法』〔黒沼悦郎編著・商事法務〕などを用いて問題演習をすることを薦めたいと思います。
同シリーズは,主に法科大学院の既修者コースを目指す学生を対象とした演習書であり(同書「初版はしがき」より引用),レベルとしても適切であること,法科大学院の教授らが作成した演習書であること、令和2年改正に対応した問題・解説があること,会社法だけでなく商法や手形の基本的な論点を一通り網羅していることが挙げられます。
さらに、編著者が早稲田大学法科大学院で実際に講壇に立っている黒沼悦郎先生であり,ロースクール入学後も引き続き期末テスト対策・演習等に使用できるという利点が挙げられます。
なお同書籍には解答例がついていないため,勉強しにくい方もいると思われます。
当社では『Law Practice商法攻略講義』(https://bexa.jp/courses/view/295)を出し、同書の解説だけでなく法的三段論法に沿った解答例が作成されています。解説講義も収録しており、解答作成や勉強の際に参考にしてみてはいかがでしょうか。

⑶ 定員数変更について

募集定員は変更となっておりますが,受験生は焦らず,また悲観せず,普段通りの勉強を心掛けてください。たとえば昨年の既修者入試の場合,募集定員が約140名でしたが,他方で合格者はその倍以上となる320名となりました。また,文部科学省による補助金算定の基礎(考慮要素)となる入学者定員充足率との関係から,募集定員数を厳格に運用することは,かえって定員充足率を下げる結果に繋がりかねず,昨今の早稲田大学法科大学院の定員充足率を考えると,大幅に合格者数を削減させることは考え難いです。
募集定員数はあくまでも形式的な数字と考えましょう。

⒊ BEXAの講座における法科大学院入試対策(既修者コース)に直結する講座
(未修者コース対策については別途連載予定)

 

法科大学院入試については,問題作成者・採点官も一流の教員であることから,教員らが作成したテキスト・参考書が有益であると考えます。また,ロースクール入試で出題される分野は広いものの,基本的な知識を問う問題であることが多く,また多くは教授らの著書に記載のある事項から出題されることから,以下の参考書・講座が法科大学院入試対策に有益であると考えます。

◆市販の演習書を扱う講座(講座に解答例添付。演習問題が含まれる基本書講義を含む)
『LawPractice民法攻略講義』 (https://bexa.jp/courses/view/260)
『LawPractice商法攻略講義』 (https://bexa.jp/courses/view/295)
『LawPractice民事訴訟法攻略講義』 (https://bexa.jp/courses/view/296)
伊藤たけるの『基本講義憲法Ⅰ』 (https://bexa.jp/courses/view/105)

◆法科大学院入試過去問を教材として扱う入門講座
中村充『4S基礎講座』 (https://bexa.jp/courses/view/205)

2021年5月3日   藤澤たてひと 

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