社会人法科大学院対策シリーズ およびステートメント実践編② ~日本大学法科大学院を題材として~

社会人法科大学院対策シリーズ
および
ステートメント実践編 ② 
~ 日本大学法科大学院 を題材として ~

 本編では、2022年度 法科大学院入試対策ガイド 第5回 ~ステートメントについて対策を解説~ の実践編を兼ねております。そのため、社会人だけでなく、学部生にとっても本命校のステートメントを作成する際に非常に役立つ内容としています。
 同校を志望していない方向けにも、本稿では「〇〇法科大学院を志望する理由について」の作成方法や解答例を掲載しております。項目⒈【参考:合格者による解答例)】<日本大学法務研究科を目指す理由>、⒉⑸ステートメント課題についてを参考にしてみると良いでしょう

| 目次
0.はじめに
1.日本大学法科大学院の特長について(パンフレット記載事項を除く)
  (1)社会人割合が非常に高いこと
  (2)近年、著名な教授陣の受け入れに力を入れていること
2.日本大学法科大学院の入試について(令和5年度入学者選抜)
  (1)試験日(2022年実施基準)
  (2)試験科目
  (3)配点
  (4)過去問について
    ア.未修者筆記試験について
    イ.既修者筆記試験について
  (5)ステートメント課題について
    参考:<作成プロセス>
    参考:合格者による解答例)<日本大学法務研究科を目指す理由>
  (6)面接について
    ア.(合格者からヒアリングに基づく)面接内容
    イ.ヒアリング結果を踏まえた、著者による考察

0.はじめに

「0.はじめに」の一部は『法政大学法科大学院編』の回と同じ内容です。すでにお読みの方は「社会人向け夜間開講制度のある法科大学院のうち」以降からお読みください。
 

 筆者のところに近年、優秀な受験生に給付奨学金を支給する法科大学院や、学費免除制度が充実している法科大学院、社会人向け夜間開講の大学院に関する相談が多く寄せられるようになりました。
 社会人受験生(正社員等)の場合、入学後の学費を自身で負担するだけでなく、社会保障費の支払や、場合により住民税等公租公課支払負担等も負うことが通常です。また人によっては、親の介護負担や、子供の養育負担のある方もいるでしょう。これらの事情から、社会人出身者が法科大学院を選ぶ際には、その法科大学院は自分に合う環境が整っているか、居宅からの交通の便はどうか、学費等費用負担はどの程度か、を重視する傾向にあります。
社会人経験者の方はお分かりのとおり、社会に出て数年~10年程度も経つと、社会性を身に着けるようになります。他者や集団のことを考えるとともに、一時の感情だけで物事を判断しなくなります。また社会でビジネス等交渉をし、様々な価値観を有する人と交流すると、高校生や大学学部生の頃のように学歴や所属団体の名称等を重視して人の価値を測ろうとすることから解放され、「その人の仕事の出来や人間性」等から人を信用・信頼するようになります。
 社会人がネームのみに捕らわれる人が少ないことの背景としては、実質的に考えた上で「自分の生活にとって何が重要であるのか」を実質的に考えるようになることも挙げられるでしょう。
 これらの事情が存在することから、今回の特集では(学部生ニーズは少ない記事となってしまうことを承知の上で)、受験情報が皆無である「主に社会人が受験を検討する法科大学院」について特集をしようと考えました。
 

 今回は、社会人向け夜間開講制度のある法科大学院のうち、日本大学法科大学院を取り上げた上で、分析をしたいと思います。

1.日本大学法科大学院の特長について(パンフレット記載事項を除く)

(1)社会人割合が非常に高いこと

 文科省公表資料によると(別添資料『法科大学院入試における社会人入学者割合』を参照願います)、令和3年度入試において、同法科大学院受験生のうち53%が社会人出身者であるとのことです(※参考:対出願者数割合53.8%、対受験者数割合53.1%、対合格者数割合47.3%、入学者社会人割合)。

 この数値については、社会人であることを受験要件とする筑波大学法科大学院を除けば、:対出願者数割合・対受験者数割合につき、全国の法科大学院において1位となっています。
 社会人だけの空間の場合、どうしても若い世代の感覚や社会常識、流行等を知る機会が少なくなります。他方で社会人出身院生と学部から直接進学した院生とが適度に混在していることから、会社を離れた社会における常識や、彼らの感覚など他者理解を広げる機会が多くあることが、同法科大学院の特長でもあるように思えます。

(2)近年、著名な教授陣の受け入れに力を入れていること

 数年前であれば都立大学を定年退官した前田雅英教授(刑事系)、今年度であれば慶應義塾大学の平野裕之教授(民法)を招き入れるなど、他大学に在籍していた有名教授を積極的に採用し、教員の拡充を図る傾向にあります。

 そのほか、法科大学院の設備や学生支援体制等については、パンフレット等に詳細がありますので、そちらを必ずご確認下さい。

2.日本大学法科大学院の入試について(令和5年度入学者選抜)

(1)試験日(2022年実施基準)

・第1期:2022年 9月 4日(日曜)
・第2期:2022年10月30日(日曜)
・第3期:2022年12月 4日(日曜)

(2)試験科目

・法学既修者(一般選抜):憲法・民法・刑法の論文式試験、面接及び書面審査で評価
・法学既修者(特別選抜-5年一貫型):学部成績、面接及び書面審査で評価
・同開放型 :憲法・民法・刑法の論文式試験、学部成績、面接及び書面審査で評価
・法学未修者:小論文試験、面接及び書面審査で評価を行います。

(3)配点

・法学既修者(一般選抜):憲民刑法 各100点/面接150点/書面審査50点 合計500点
・法学既修者(5年一貫型):学部成績300点/面接150点/書面審査50点 合計500点
・同開放型:憲民刑法 各100点/学部成績100点/面接70点/書面審査30点 合計500点
・法学未修者:小論文試験300点/面接150点/書面審査150点 合計500点
※ 筆記試験および面接に最低基準点が設けられています(募集要項等参照)

(4)過去問について

ア.未修者筆記試験について
 問題が非公開の年度もあります(例として令和3年度入試)。
他方で、BEXA連載『第3回 小論文試験対策について (法学未修者入試対策編)』(https://bexa.jp/columns/view/498)で案内しましたとおり、(解答例の記載はありませんが)出題の趣旨や採点基準が詳細に説明されており、法科大学院入試小論文において出題者が求めている注意点、加点・減点項目が何か正確に把握することが出来るという点で、演習教材として非常に優れています

イ.既修者筆記試験について
 出題の趣旨や採点基準が詳細に案内されており、受験生がどの事項に解答すればよいか適切に案内されている。問題のレベルだけでなく、出題者が求めている注意点、加点・減点項目が何か正確に把握することが出来るという点で、未修者入試問題と同様、法律学習教材・演習教材としても非常に優れています。日本大学法科大学院を受験する方以外にも、法科大学院入試問題を解き実力を身に着ける演習教材としても最適です。

(5)ステートメント課題について

 書類審査としての配点は、全体の概ね10%程度、未修については30%となっています。
「法曹を志望する動機および日本大学法務研究科を目指す理由」について受験生に問う課題です。上記課題のうち、「法曹を志望する動機」については、『ステートメント作成実践編』(https://bexa.jp/columns/view/553)にて思考方法を厚く記載し、また合格者答案を掲載しています。そちらを参考にしてみてください。

 「日本大学法務研究科を目指す理由」については、参考回答例を上記⒈⑵項目に記載しております。この記載内容からわかるとおり、人によって志望理由や、事実に対する評価はそれぞれです。パンフレット等から日本大学法科大学院の制度等への魅力を感じ取ったら、あとは論理的に説明できるか否かが勝負のカギとなります。

 作成過程・思考プロセスは、どこのロースクールでも共通です。

参考:<作成プロセス>
 ⓪パンフレット等に目を通し、志望する法科大学院の制度・設備など事実・PR要素に着目する(情報収集)→それらの事実のなかで、自身が魅力に感じた事項をピックアップする(情報の取捨選択)→①事実を適示し(事実の記載・主張)、②それについてなぜ魅力に感じたのか、そしてそれがなぜ同校を受験するという意思決定に繋がったのか(評価・理由付け。なお回答指定された文字数が長い場合については、❶なぜ予備試験ではなく「法科大学院」か+❷なぜ「〇〇大学」を志望するのかという2つの要素を適切に回答するようにしたい)→③結論(問いに正確に答える)

参考:合格者による解答例)<日本大学法務研究科を目指す理由>
 まず、他校では見られない研修生制度等、在学生に対する手厚い支援制度に強く魅力感じた。司法試験という難関試験において修了直後に合格することは困難となる場合も想定される。そこで私は、修了後でも安心して勉学に励むことができる制度が必要不可欠であると考えている。この制度に加え、24時迄利用可能な自習室、豊富な蔵書数及び座席数を有する図書館が複数存在するのは貴校のみであり、勉学に最適な環境・設備が整うと考えた。これらの事実から、私は貴校に他校にはない魅力を感じ、第一に志望するに至った。

※この法科大学院を志望する理由の説明・書き方等については、後述⒉⑸項「ステートメント内容について」や、『ステートメント作成実践編』(https://bexa.jp/columns/view/553)記載の内容をどうぞ参考にしてみてください。

(6)面接について

面接の配点は、特別選抜(開放型)を除き、全体の30%となっています。
ア.(合格者からヒアリングに基づく)面接内容
・面接形態:個別面接(面接官2名)、
・面接時間:概ね10分~15分程度

・質問内容
①なぜ日本大学法科大学院を志望するのか
②司法試験等法律学習の勉強期間はどのくらいか
③既習は3科目入試であるが、入試科目以外の他の科目の学習進度はどうか
④本日の筆記試験の出来はどう考えるか
⑤国立大学に合格したら、うちは入学しないのか
⑥そのほか、ステートメントに記載事項に関する追加の質問や、記載内容の説明依頼。

イ.ヒアリング結果を踏まえた、著者による考察
 オーソドックスな質問内容であり、概ね他の法科大学院における面接(一橋大学法科大学院や未修者等別選抜における口頭試問を除く)と同様のことを聞かれるされる傾向にあります。
上記以外に準備するとしたら、❶自らが考える将来像、❷法曹を志望する動機、❸(社会人であれば)仕事と法科大学院の講義とをどのように並行させるか、❹なぜ予備試験ではなく法科大学院に入学しようと考えたのか、といった事項は頻出質問ですので、回答できるように準備しておきたいところです。

以上

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2023年3月24日   藤澤たてひと 

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