未修者の皆さんより質問を非常に多くいただくことから、
2021年7月公開の「2022年度 法科大学院入試対策ガイド 第3回」(https://bexa.jp/columns/view/300)に入試問題の追加、一部項目を見やすく加筆、各校追加調査をしました。
近年の筆記試験では、
⑴与えられた問題文(論評等)を読み、その文章の要約をしたうえで、それに対する自身の意見を問うもの(以下、「論評意見型」)が主流です。
また、
⑵当事者の会話が問題文に記載されており、そこで与えられた指示内容を踏まえた上で、対応策について回答するもの(以下、「問題解決型」)の小論文を課す法科大学院もあります。
⑴が依然として多いですが、面接試験を課さない法科大学院もあり、その影響からか⑵の形式を採る法科大学院入試問題も多いです。大別すると上記2点に分類されるでしょう。
また、東京大学法科大学院未修者入試(第2次選抜)のように、設問を2つにわけ、うち1題を論評意見型、もう1題を問題解決型とするところもあります。
いずれにせよ、ご自身が受験する予定の法科大学院の入試問題(過去問)を必ずチェックし、どのような問題を出題する傾向にあるのかチェックするようにしましょう。
大手予備校などから法科大学院小論文対策書籍は販売されています。しかし残念なことに、10年以上前から新刊・改訂されていません(2022年10月現在)。そのため、現在の法科大学院入試傾向とかけ離れた内容の入試問題・受験案内が未だに掲載され続けています。
たとえば、『法科大学院統一適性試験』はかなり前に廃止されましたが、その案内のみならず、それよりも前に実施されていた、日弁連型(JLF)又は大学入試センター(DNC)型の案内等が記載されています。また、入試問題についても、現在の傾向とは全く異なる問題等が多く掲載されています。
使用する場合は、上記の点に留意する必要があります。
上記のとおり、近年の法学未修者コース小論文については、論評意見型のものか、問題解決型小論文が主流です(Q1回答ご参照)。ですが、市販の対策本は非常に古く、掲載されている内容は近年の傾向・対策とかけ離れたものとなっています(Q2回答ご参照)。また解答解説についても、公式の見解に沿うものではないこと、解答の精度に疑念のあるもの、解答によっては論旨が一貫していないものもあります。以上のことから、私藤澤が自信を持って皆さんにお勧めできる市販書籍・講座は、現時点では残念ながらございません。
その代わりに、一部の法科大学院側が公表する問題解説・採点実感・解答については、受験生に強く薦めています。もちろん、無料で提供されており、かつ大学院の教授ら入試担当者が作成しているので、正確性や質については担保されています。
以下案内の法科大学院では、大学院側が受験生に求める解答・出題の趣旨や採点表・採点実感が掲載されており、非常に参考になります。藤澤としては、市販の問題集や予備校で小論文対策をするよりも、費用は掛からないうえ、これらをみっちりやることを強く勧めます。下記の問題だけで各校の法学未修者コースの試験に十分に対策することが可能であり(演習書一冊分以上ある)、出題者が求める正確な解答例を無料で知ることができるからです。
再度繰り返します。
市販の小論文入試対策参考書や予備校講座を買う前に、これを一度熟読し、解いてみてください。大学の入試担当(大学教授)が問題を作成し、公式に解答例を掲載しています。これは学部入試でも滅多にないことです。どの予備校の解答例や問題集よりも正確性が担保されているので、以下のロースクール入試問題を演習として利用することをお薦めします。
・福岡大学法科大学院『2021年度A日程』(演習推薦校:要約型特訓問題)
(https://www.ilp.fukuoka-u.ac.jp/admissions/issues/)
関西学院大学法科大学院と同様、小論文対策の教材として用いることを薦めしている入試問題です。上記日程著作権法上の問題から、実践として使える年度が上記日程のみとなりますが(たとえば解説解答例はあるが、著作権法上の都合より問題が公開されていないもの(令和4年度BC日程など)、解答掲載がないもの(令和4年度A日程)など)、上記問題は問題が公開され、解答例もあることから、特に要約を苦手とする方には非常に良い演習になるかと思います。
・関西学院大学法科大学院(演習推薦校:論評意見型)
(https://www.kwansei.ac.jp/lawschool/lawschool_012767.html)
近年、論評型の小論文を出題しており、法科大学院側が公式に解答例を公表しています(ただし2022年度~22年度D日程入試は、インターネット上で問題を公開していない)。
問題の難易度は相対的に高く、人気国立大学法科大学院(合格率首位の一橋大など)と問題形式が似ています。また、それらを受験する方は勿論のこと、どの大学院の法学未修者コースを受験する場合でも非常に参考なります。さらに、出題者の意図する解答例が過去5年分かつ全日程(全15問程度)掲載されています。市販の問題集や予備校の解答例以上の水準の問題・解答例が無料で手に入りますので、演習に取り掛かるのであれば、こちらを一度解いてみることを強く勧めます。
要約型・意見型、また年度や入試方式により問題文の量が異なるが、年度によっては90分で解答するには時間的にも短すぎるような問題もある。
・同志社大学法科大学院(問題文の公開なし。解答記載の参考として)
(http://law-school.doshisha.ac.jp/02_entrance_ex/question.html)
問題文は掲載されていませんが、受験生がどのように解答をするのが望ましいか、法科大学院側が公式に解答例を作成・掲載しています。文章の要約問題の記載、簡易意見論述型の書き方・解答例として非常に参考になります。同大学院を受験しない志願者も、一度は目を通してみることを薦めます。文字数も少ないので、すぐに確認できる内容です。
・日本大学法科大学院(問題解決型)
(https://www.law.nihon-u.ac.jp/lawschool/admissions03.html)
直近では問題解決型の小論文が出題されています。解答例の記載はないが、出題の趣旨や採点基準が詳細に説明されており、法科大学院入試小論文において出題者が求めている注意点、加点・減点項目が何か正確に把握することが出来ます。
・専修大学法科法科大学院(問題文の公開なし。解答記載の参考として)
(https://www.senshu-u.ac.jp/education/lawschool/admission/archive.html)
問題解説については非常に簡易であり、一般的な法科大学院入試の出題の趣旨記載程度ですので、解説は上記と比べると参考にならないことも考えられます。また、試験日程によっては解答例の記載がなく、一般的な解説に留まるものもあります。
しかし、入試期によっては1、000字程度の論述式解答例について詳細に記載されていることから(参照:同校令和3年度第Ⅱ期入試、10月特別入試)、同大学院と同程度の文字数による小論文作成が求められる学校を受験する方には、決められた文字数でどのように記載すれば良いのか非常に参考になると思います。
上記5校のロースクールの問題だけでも、通常の法科大学院の数年分(日程も含めるとその数倍の問題量)の入試問題を解くことが出来ます。また、解答の質は担保されています。ぜひ問題集として利用することをお薦めします。
小論文(意見型)対策だけでなく、口頭試問型試験対策にも有益な勉強方法があります。机に向かわなくても、ふと時間が出来たときに、また通学途中やテレビを見ながらでも出来る勉強方法なので、ぜひ日々の生活の中で取り入れてみてください。
◆勉強方法◆
❶ ニュースや新聞を見て問題を把握する(現代の社会問題について知見を広げるため)
❷ ニュース番組ではコメンテーターの主張・意見を聞く。なお、新聞の意見欄でも可。
❸ それらを踏まえた上で、頭の中で簡単に要約し、何が問題となっているのかを把握する(要約力)。時間があれば頭の中で内容を構成してみる。
❹ 仮にコメンテーター等の意見を採用した場合、それでは欠けている視点、具体的には保護されない利益が生じるのではないか。一方の利益ばかりを考えた偏った意見となっていないか(失われている利益がないか)ピックアップする(意見型小論文の土台)
❺(余裕があれば)自分の意見を頭の中で考える・構成する。
このような考え方は、なにも未修者小論文対策に限ったことでなく、実際の事案を検討する際にも不可欠な視点となってきます。ですが、未修者の皆さんには事案と言っても身近ではないと思います。そこで、以下、憲法等の論述式試験における解答作成の視点を例に出して、案内したいと思います。
同法の論述式試験では、知識を吐き出す前提として(=どの条文・どの要件の問題かを把握できることは当然として)、以下のとおり考えることが出来るかが重要となります。
⑴本件で制約されている権利・自由は何か正確に把握する(原告の主張。上記❶基礎知識の存在と❸問題を正確に把握する能力および要約力に相当)
⑵制約によって守ろうとしている利益はなにかを正確に把握し(被告の主張。上記❷および❸に相当)、
⑶両者を比較し、権利の重要性や制約態様を踏まえ、妥当な結論を導く(裁判所の判断に相当。上記❹および❺に相当。この視点は比較衡量・利益衡量ともいいます)
すなわち、知識を吐き出す以前の問題として、実務や論述式試験では両当事者の悩みや主張を正確に把握し、頭の中で適切に要約・処理し、妥当な結論・解決策を導く必要があります。それらの基礎となる視点(潜在能力)を受験生らが有しているのか・素質があるのか見極めるために、法科大学院は法学未修者コースの受験生に対し、小論文を課しているわけです。
法科大学院側が小論文を課している趣旨を把握すれば、もう何も怖いものはありません。将来の法曹になるための基本的な知識・視点を有しているのか、そこが問われているだけです。日々の勉強では焦らずに、きちんと文章を読み、内容を正確に把握しましょう。
なお、❶~❺の内容は、文章の内容把握の訓練にも用いることが出来ます。頭の体操の一つとして、日々少しずつこなしていきましょう。
◆解答について◆
正確な解答筋の小論文(上記法科大学院が公開している解答解説)であれば、配点や公式解答例が記載されているので、自分の解答がそれに沿って記載されているか、各自で小問ごとに確認しましょう。
一方で市販の参考書等に付属している解答例については、それが法科大学院の求める解答例とはかけ離れている場合もあります。過信せず、あくまでも読み物(参考解答例)と位置付けましょう。自分で採点・添削する際の模範解答として用いるのは非常に危険です。
また、予備校等で公表されている合格答案についても、解答の正確性に疑義のあるものも多いのが実情です。実際予備校に解答を寄稿した合格者の方々が後日点数開示してみたところ、48点~70点未満のものが混在しており、小論文が平均点以下でも合格した例は存在するからです。また、法学未修者コース入試の場合、小論文のみで合格を左右することはなく(但し、問題文を把握できていない・趣旨と離れて解答している場合を除く)、また学校によっては基準点以下でも優遇枠に入れば合格する大学院等もあることから、合格者でも答案の水準に大きな差があります(不合格水準でも書類点で合格した例が多くあります)。
合格者答案を過信せず、あくまでも合格水準を把握する程度の利用に留めましょう。
添削についての原則論(解答例の公表していない法科大学院入試過去問を含む)
既に回答いたしました『問題演習について(受験生に強く薦めます)』項目に記載致しました各法科大学院の問題を演習教材として利用することを強く勧めます。
皆さんが志望する法科大学院の問題では、問題自体著作権法上の問題から公表されていないケースや、出題の趣旨記載内容や解説が薄いこともあるでしょう。そのような場合、自分で添削しても、それが出題者の求めることを適切に記載しているのか・合格水準にあるのか把握することは困難で、復習もままならないからです。また、他者が添削する場合も、その人物がきちんとその大学の過去問を分析していなければ、単に書いた文章を読み添削する程度に留まってしまいかねません。
そのような過去問はあくまでも直前期に、問題の傾向を把握するための読み物として位置づけ、傾向を把握する程度に留めるのが適切です。
それでも自分は受験校の過去問だけを解くという方
万が一、何としてでも自分が受験する法科大学院の問題を解きたいならば、以下の事項に注意して添削してください。
ア.出題の趣旨を読んで内容を把握する。(ただし、大学院によっては、出題者が書きたいことを数行程度書くのみで、問題に対する解説になってないものも存在しているのも事実です。)
イ.自分が書いた文章を一日後~数日後に再度読み、その際に内容を添削する。
→主観評価バイアスが減り、多少なりとも客観的に把握できるようになるからです。
ウ.特に主語と述語の対応関係を確認する。また、日本語として違和感のある文章となっていないか。
エ.書いた文字は、読むことが出来る水準にあるか。
オ.問題文を読み、内容を正確に把握しているか・誤読していないか。
上記のことを必ずやってください。ただし、それでも疑問点が生じた場合、出題の趣旨に書かれている以上のことは正確に把握できないという点に留意が必要です。
再三繰り返しますが、直前期に受験校の過去問を確認する程度ならまだしも、普段の演習に受験校の過去問を用いるのは、(解答解説が充実している場合を除き)自己流の文章となってしまいかねず、非常に危険です。問題の解答例や採点基準等が存在し、受験生に対して丁寧に解説している場合を除き、過去の入試問題は確認程度に留めることが無難でしょう。
BEXAは フルコース型 ではありません。
ですから、
時間的制約の大きい法科大学院に通いながらでも講座単位で 一流の基礎講義 を受講できます。
法科大学院では法曹としての資質を涵養し
受験対策とし
BEXAの基礎講座 × 予備校の重問演習 = 短期合格
なんていう、良いとこ取りもおすすめです!
2022年11月1日 藤澤たてひと
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