社会人法科大学院対策シリーズ (経歴に自信のない方向け) & ステートメント実践編 ~法政大学法科大学院を題材として~

社会人法科大学院対策シリーズ
(経歴に自信のない方向け)

ステートメント実践編 
~法政大学法科大学院を題材として~

 本編では、2022年度 法科大学院入試対策ガイド 第5回 ~ステートメントについて対策を解説~ の実践編を兼ねております。そのため、社会人だけでなく、学部生にとっても本命校のステートメントを作成する際に非常に役立つ内容としています。
社会人ではない、かつ法政大学法科大学院を検討していない学部生については、3.(イ)志望理由書の課題についてからお読み頂き、作成のヒントとしてみてください。

| 目次

0.はじめに

1.社会人向け夜間開講制度のある法科大学院と、給付奨学金のある法科大学院について
  (1)社会人向け夜間開講制度のある法科大学院
  (2)学費全額免除等に加え、社会人も対象となる入試成績優秀者に対する独自の給付奨学金制度のある(あった)法科大学院(学生支援機構利用を除く)
  (3)専門実践教育訓練給付金の対象校(2023年3月基準)

2.2024年度 合格者社会人先輩について
  (1)受験者属性および大学学部成績(ただし社会人の為、GPA制度導入前)
  (2)受験校・合格した受験方式
  (3)法政大学法科大学院を選んだ理由について(ヒアリング)

3.志望理由書(ステートメント)について
  (1)志望理由書の概要およびその課題について
  (2)筆者藤澤による課題文の分析について
  (3)実践編:上記講義を踏まえた参考答案(合格者答案)

4.面接について

5.合格者の声(入試詳細ヒアリング。特に同校受験生向け)
  (1)入試志願票、ステートメントについての雑記
  (2)法政ローを選んだ理由について
  (3)当日の試験について
  (4)奨学金受給候補者の面談について
  (5)面接の質問および回答内容、感想について

6.おわりに

0.はじめに

 筆者のところに近年、優秀な受験生に給付奨学金を支給する法科大学院や、学費免除制度が充実している法科大学院、社会人向け夜間開講の大学院に関する相談が多く寄せられるようになりました。
 社会人受験生(正社員等)の場合、入学後の学費を自身で負担するだけでなく、社会保障費の支払や、場合により住民税等公租公課支払負担等も負うことが通常です。また人によっては、親の介護負担や、子供の養育負担のある方もいるでしょう。これらの事情から、社会人出身者が法科大学院を選ぶ際には、その法科大学院は自分に合う環境が整っているか、居宅からの交通の便はどうか、学費等費用負担はどの程度か、を重視する傾向にあります。
 社会人経験者の方はお分かりのとおり、社会に出て数年~10年程度も経つと、社会性を身に着けるようになります。他者や集団のことを考えるとともに、一時の感情だけで物事を判断しなくなります。また社会でビジネス等交渉をし、様々な価値観を有する人と交流すると、高校生や大学学部生の頃のように学歴や所属団体の名称等を重視して人の価値を測ろうとすることから解放され、「その人の仕事の出来や人間性」等から人を信用・信頼するようになります。
 社会人がネームのみに捕らわれる人が少ないことの背景としては、このように「自分の生活にとって何が重要であるのか」を実質的に考えるようになることも挙げられるでしょう。
 これらの事情が存在することから、今回の特集では(学部生ニーズは少ない記事となってしまうことを承知の上で)、受験情報が皆無である「主に社会人が受験を検討する法科大学院」について特集をしようと考えました。

1.社会人向け夜間開講制度のある法科大学院と、給付奨学金のある法科大学院について2023年度 各法科大学院(34校) ステートメント課題一覧

(1)社会人向け夜間開講制度のある法科大学院

・筑波大学法科大学院
・日本大学法科大学院
・福岡大学法科大学院
・琉球大学法科大学院(但し令和6年度以降の夜間開講については不透明)

(2)学費全額免除等に加え、社会人も対象となる入試成績優秀者に対する独自の給付奨学金制度のある(あった)法科大学院(学生支援機構利用を除く)

・法政大学法科大学院(月額5万円支給特別奨学金/但し2023年度以降の存続は不明)
・専修大学法科大学院(月額8万円)

(3)専門実践教育訓練給付金の対象校(2023年3月基準)

厚生労働省の下記HPの検索結果より引用
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/SSR/SSR101Scr02S/SSR101Scr02SInit.form
・九州大学法科大学院(以下「法科大学院」省略)、・京都大学、・慶應義塾大学、・神戸大学、・筑波大学、・東京大学、・名古屋大学、・一橋大学、・早稲田大学

 今回は上記の中から、社会人合格者に対してヒアリングをしたうえで、学費免除等支援制度の豊富な大学院として法政大学法科大学院を取り上げたいと思います。(なお社会人シリーズの次回連載は、日本大学法科大学院(但し入試内容・ステートメント対策等の案内程度)を予定しています)

 読者の中に、「自分は超一流企業に在籍していた等の経歴はない等を理由に、何を書けばよいのかわからない・自分に自信がない。」という方もいるかもしれません。ですが、心配は無用です。
 そもそも皆さんが入るのは法曹業界で、その視点から見たらどんな経歴の持ち主であっても未経験者となります。また、法科大学院で学ぶという点については社会人も学生も「法科大学院生」であることに変わりありません。
 今回案内する受験生は、自らの経歴や過去に向き合ったうえで、一見すると不利に見えそうな経験を糧とし、自分自身をPRしています。社会人だけでなく、自分に自信のない方含めて、どのようにステートメントを記載し、自己PRをすればよいかの参考にして頂けると幸いです

2.2024年度 合格者社会人先輩について

(1)受験者属性および大学学部成績(ただし社会人の為、GPA制度導入前)

ア.属性
 社会人女性。高校を中退し社会へ(但し俳優を目指していたため、実社会では俳優養成課程に在籍したことを除き、アルバイトの経歴のみ)。数年後に大学法学部(法政大学法学部通信教育課程)に入学。

イ.大学学部成績
 総取得単位130単位、そのうち100点~80点の評価帯単位数:89単位

(2)受験校・合格した受験方式

・法政大学法科大学院 既修第5期A方式(2023年1月29日実施)特別奨学生として合格
→夏季・秋季に入院していたこともあり、後述のとおり他法科大学院は受験できず
※参考:2023年度 同校入試日程(第5期を除く)
第1期:2023年7月3日(日曜)、第2期:2023年8月6日(土曜)
第3期:2023年10月2日(日曜)、第4期:2023年11月13日(日曜)

(3)法政大学法科大学院を選んだ理由について(ヒアリング)

ア.同校以外の受験状況について
 夏季・秋季通じて入院していたこともあり、その期間はその他の法科大学院を受験することができませんでした。体調も回復し、1月以降であれば受験も可能であると考え、法政大学法科大学院を受験しました。

イ.志望理由について
 後述のステートメント記載と内容が被りますが、徹底した少人数指導、双方向・多方向の対話型授業、新しい時代の法曹の養成に魅力を感じたことです。また、法政大学通信教育学部の出身であったため、教授や講師が本当に優しく丁寧に、親身になって教えてくれることを実感していたので、そこに魅力を感じました。

3.志望理由書(ステートメント)について

(1)志望理由書の概要およびその課題について

ア.配点について
 書類点の配点は既修・未修ともに40点で、そのうち志望理由書の配点は20点となっています。

イ.志望理由書の課題について(いずれも300字以内、指定用紙あり)
Ⅰ.法曹を志望する理由および大学院修了後の希望を具体的に記入してください。
Ⅱ.法政大学大学院法務研究科を志望する理由を具体的に記入してください。
Ⅲ.資格、社会的活動、職歴、特別な活動記録、語学等に関する自己アピールについて記入してください。
Ⅳ.その他、Ⅰ~Ⅲにあてはまらないものについて記入してください。

(2)筆者藤澤による課題文の分析について

 課題文についてはⅠ~Ⅳともにオーソドックスなものです。どの法科大学院のステートメントにも通じる内容でもあり、汎用性の高い課題であると考えます。ステートメント入門として練習するための素材としては非常に良い題材でしょう。

ア.課題文Ⅰについて
 自らの将来像を明記するとともに、法曹を志望するきっかけとなった出来事や経験を記載することを求められている課題です。なお課題文の「および」との文言より、①志望理由及び②修了後についてどのような進路等将来像を抱いているかという両者について必ず説明することを忘れずにいて欲しいと思います。
 なお、この問題の出題趣旨は、受験生の学習意欲や志望度合いを確かめる点にあります

 書き方としては演繹法による記載、すなわち、「私は、〇〇という将来像を抱いている(主張)。そしてそう考えた背景として過去の▲▲という実体験がある(根拠の概要)→具体的根拠事実→そこから◆◆ということを学んだ(不合理があることを知った:その事実から得た評価)→そこで修了後は〇〇という法曹として■■の改善に貢献していきたいと考える(結論)」とすると、説得力のある記載ができると考えますので、このような書き方をお勧めしたいと思います。(なお。上記の書き方は例年私の講座でも教える事項である上、法的三段論法、要は説得力のある文章を記載するうえで非常に有益です。ステートメントの段階で既修者・未修者とも、法律文書作成の基礎としてきちんとした書き方を学び、ぜひ法律論述式試験の解き方を習得して頂きたいと思います)。

 読み手である採点官は時間のない中で沢山の文章を読みます。その中で採点官の印象に残る文章とは、課題の問いに対して正確に回答している、採点官が読みやすくかつ論理的説得力のあるものとなるでしょう。
そのため、ダラダラと背景を書くよりも、まずは貴方がどのような結論を抱いており、その理由として、あなたが生活する中でどのような社会の不合理さ等に疑問を抱いたかということを簡潔に書くと、採点官も飽きずに集中して読め、かつ高い評価を得られる文章になるかと思われます。
 項目(3)実践編に、上記を実践した合格者答案を掲載しておりますので、ぜひそちらを参考にしてみてください。

イ.課題文Ⅱについて
 「大学院法務研究科を志望する理由を具体的に記入せよ。」というものです。
 この問題の出題趣旨は、相手(=受験する法科大学院・法科大学院制度)のことをきちんと理解していることを前提とし、受験生の志望度・入学意欲を確認する点にあります

 日常と比較すればイメージつけやすいと思いますので、例として恋愛関係を挙げます。
私たちが仮に気になった人がいたとして、その相手のことをきちんと理解せずに突然「私は貴方が好きです」と言っても、よほどの例外事情がない限り、相手にとっては迷惑でしかない。そのため、原則断られるか、どんなに良くても「まずはお友達から」という回答がなされるのが通常です。また、「お友達から」というのは「あなたのことが良く分からないので、とりあえずどんな人物か、恋愛とか関係なく普通の人間関係を構築したい」という意味合いであるのが一般的で、それが出来て初めてスタートラインに立てるわけです。

 私たちは上記のような関係構築もなく、突然法科大学院等にステートメント文章を提出する訳です。そのような状況において相手に魅力的に映るためには、出願の段階までには、相手のことを必要最小限程度でも構わないので、知っておく必要があります。そしてそのための手段としては、①パンフレット、②募集要項等で公開されている教育指針を把握する、③ホームページ等で教育体制や制度(少人数制度など)を把握すること、が挙げられます。

 そのうえで、論述の過程・書き方としては、❶(相手を知ったうえで【事実】)相手のどのような点に魅力を感じた(【評価】。可能であれば、自らの法曹像を体現する環境が整う・その目的を達成するためには進学が必要不可欠など、自分が同校を志望する動機なども説明できると良いと思います)→❷よって法政大学法科大学院を志望した【結論】という過程で説明・論述するのが説得力のある文章として適切でしょう。参考にしていただければ幸いです。

ウ.課題文Ⅲについて
 この問題の趣旨は、誰よりも一番知っている自分を題材としたうえで、いかに相手に対して自分の魅力を説明できるかという、説得力・文章の説明力を試す点にあります。
 社会人や就職活動などを行った方としてはお馴染みの課題でしょうが、学生さんなどにはイメージがつきにくく、また自己PRとは何かわからないという人も多いかと思います。そこでまずは、この自己PRとは何かについて、以下平易に説明します。

 自己PRとは、要はご自身の長所を述べてくださいということです。他者と差別化した能力等を有している事実、辛い経験をして身に着けた経験、これらは受験生が他者と差別化するための要素となります。そしてもちろんですが、PRするために用いた事実が、どのように主張・評価と関連するのかきちんと説明する必要があります
 たとえば、英語の資格として英検準1級を保有しているという事実が認められるとします。英検準1級という資格を有することに対する評価は、人それぞれ異なります。「語学力に優れているんだね」と英語能力等を評価する人もいれば、「一生懸命学生時代に勉強したんだね」と、英語能力ではなく勉強に対する真摯な姿勢を評価する人もいます。すなわち、人によってその事実に対する評価は異なるということです。だからこそ、その事実だけを挙げても自己PRにはならないということです。

 それを踏まえた上で、本問においてどのように語学力が優秀であると主張すればよいでしょうか。
 論述の過程としては
 英検準1級+(英語を用いる場面を挙げ)英語を流ちょうに話せる+海外経験も豊富(自己PRの根拠となる間接事実を記載)→語学に堪能であるという自己評価ないし主張→法曹会では外国語に精通する人物は少なく、外国人犯罪等の弁護の際に支障が出ていると聞く(現代社会における問題・背景)→そのような中で、資格だけでなく語学力堪能な法曹は稀有であり、他者と差別化できる要素であると考える(社会等におけるその能力の必要性)→(字数に余裕があれば)法政にとっても稀有な存在であり多様性確保に繋がる(相手にとってのメリット)→結論
という過程で論述すれば、論理的かつ説得力のある文章として自己PRをすることが可能となります。

エ.課題文Ⅳについて
 要は自由記載項目です。自由と言っても、何でも書いてよいのではありませんⅠ~Ⅲに関する事項以外でという記載や、本件書面が「志望理由書」であることから、志望理由と関連する内容で、かつⅠ~Ⅲに関する事項以外の内容を記載することが求められていることが、読み取れます。
 これについては、各人で記載する内容が異なると思われます。そこで、どのような内容を書けばよいのか等については、次項実践編で記載した合格者答案を参考にして頂きたいと思います。

(3)実践編:上記講義を踏まえた参考答案(合格者答案)

ア.課題Ⅰ:法曹を志望する理由および大学院終了後の希望を具体的に記入してください。
 私は、社会的弱者の支援を行う弁護士になることを希望する。私は、非嫡出子として生を受けた。貴学学部の憲法の授業において、『非嫡出子相続分違憲判決』及び『旧国籍法違憲判決』を学んだ際、私だけではなく、「子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない」事柄で悩み、苦しんでいる人が数多くいることを実感した。私は、非嫡出子というだけで悪口を言われたことがあった。また将来、婚姻する際の婚姻届において、父欄を空白のまま提出しなければならない等の不利益を受け入れなくてはならない必要があることを屈辱的に感じている。そこで、私と同じく辛い思いをしている社会的弱者に寄り添える法曹になろうと決意した。(参考:298字)

イ.課題Ⅱ:法政大学大学院法務研究科を志望する理由を具体的に記入してください。
 徹底した少人数指導、双方向・多方向の対話型授業、新しい時代の法曹の養成に魅力を感じたことにある。私は、貴学法学部法律学科通信教育課程の出身であるが、同級生の中には、脚に障害のある方、ご高齢で現役生の頃は女性だからという理由で学問を修めたくとも修められなかった方など、多彩なバックグラウンドを持った方々がいた。そのような方々にも分け隔てなく、親身になって教えていた教授や講師を心から尊敬し、私もこのような方々を受け入れる貴学で引き続き法の精神を学びたいと心から思った。また少人数指導にて、考える力を養い、多様化する現代社会において、法に縛られるだけの法曹ではなく、法を上手く使える法曹になれると考えた。(参考:300字)

ウ.課題Ⅲ:資格、社会的活動、職歴、特別な活動記録、語学等に関する自己アピールについて記入してください。
 私は、中学生の頃から演劇部に所属し、高校を中退し芸能事務所に入り、舞台女優として活動してきた。そこでは、演じる側だけでなく、脚本も担当したことがあり、様々な役の考え方や感情の出し方、立ち回り方を学んだ。この経験は、いついかなる場合でも様々な立場にいる者に寄り添うことのできる法曹になるためには、必須の能力であると自負している。他にも私は、小学生の頃から書道を継続しており、『日本習字 漢字部 教授免許』を取得している。これは文字を速く綺麗に書かなければならない試験において有用である。また、そこで培った精神力や集中力、継続力は、司法試験やその勉強、ひいては日々精進する法曹になるために役立つと言える。(参考:298字)

エ.課題Ⅳ:その他、Ⅰ~Ⅲにあてはまらないものについて記入してください。
 私は、貴学法学部において、国際法関連の単位を数多く取得した。その理由は、上記Ⅰの判決を学んだ際、「国民の意識の変化」だけでなく、「国際的環境の変化」も考慮に入れていることに気付いたからである。国際的で広範な視野を持ち、自分とは違う者の考え方や知見を取り入れることにより、戸籍制度や、差別意識が、諸外国に比べ、日本国内の狭い世界において、日本が人権意識や保護に後れていることを認識させることになる。それが、ひいては、不合理な制度改善や、差別意識の改善、弱者保護に繋がると考えている。そこで私は、貴学大学院法務研究科でも国際法を学び、国際的で広範な視野を持つ法曹として、広く社会的弱者を救いたい。(参考:296字)

4.面接について

 未修者でも面接があるが、既修者についても同様に面接がある場合があります。それは、奨学金給付対象者に課される「奨学金給付判定面談」です。
 この内容については、合格者からヒアリングしているので、次項「合格者の声」の記載内容を参考にして頂きたいと思います。
 なお未修の面接についても、基本的には記載内容と同様の質問が課されることとなります。
 未修コースの面接だけでなく、面接等を課す法科大学院を受験する方は、法科大学院入試における面接ではどのようなことが聞かれるか、参考にしてみてはいかがでしょうか

5.合格者の声(入試詳細ヒアリング。特に同校受験生向け)

 ここでは、社会人受験生が出願書類や面接の現場において、どのような感想を抱いたかについて案内いたします。同じような境遇の方や、悩みを抱いている方の参考になれば幸いです。

(1)入試志願票、ステートメントについての雑記

 手書きであったので、大変でした。そして、書き損じをしましたが、二重線で訂正印を押して訂正し、そのまま提出しました。
 プラスになったのかはわかりませんが、『日本習字 漢字部 教授免許』の証明書を提出しました。他の資格や語学の証明書は一切出していません(該当する資格や自慢できる語学の成績がないため)。

(2)法政ローを選んだ理由について

 法政ローを選んだ理由について
 上記のステートメントⅡと被りますが、徹底した少人数指導、双方向・多方向の対話型授業、新しい時代の法曹の養成に魅力を感じたことです。また、法政大学通信教育学部の出身であったため、教授や講師が本当に優しく丁寧に、親身になって教えてくれることを実感していたので、そこに魅力を感じました。
 そして、体調を崩していたため、夏、秋の入試を一切受験できなかったので、1月下旬に入試があった法政ローのみが選択肢として挙がりました。

(3)当日の試験について

 大きめの教室で20~30人受験生はいたと思います。試験監督はローの教授たちがやっていて驚きました。トイレの数が少ないので、他の階のトイレを使うこともありました。
 法科大学院六法を使用し、当該六法に受験番号と、カタカナの氏名がテープ貼付されてあり、1科目終わるごとに回収されました。試験後、持ち帰りたい人は持ち帰ってよかったので持ち帰りました。不要な人は前に置いてある箱に入れて回収という形式でした。
 先に上三法の論文式を行い、その後、A方式(民訴、刑訴が短答式)の受験生は、教室移動をしました。
 A方式、B方式、それぞれ1名しか合格者を出していなかったので(参考:既修A方式受験者総数は15名~20名程度のように思えます)、自分が合格して嬉しかった反面、少し複雑でした。なお、未修者は4名合格、開放型の合格者は0名でした。
 入試当日に、「奨学金受給候補者は面談があるので、この日程を空けていてください。」というプリントが配られるので、合格発表後の日時は前もって空けておいた方がいいと思います。
 入試の手応えは一切なかったです。これは落ちていても納得!といえる位の出来でした。憲法、民法は自分なりにでっちあげて、刑法は何となく書きました。途中答案はなかったです。民訴、刑訴は短答式でしたが、正直ほぼわかりませんでしたが、「これかな?」という選択肢を選びました。
 なお、ボールペンもシャーペンもどちらも使用できるみたいだったので、論文はボールペン、短答はシャーペンを使用しました。会場では、論文でもシャーペンを使用している人が多かったように感じましたが、消しゴムで消す時間が勿体ないので、個人的にはボールペンをおすすめします。私自身、ボールペンを使い修正を結構して、答案は汚くなったものの、合格したので、当たり前ですが内容面が大切だと思いました。
 論文の答案用紙は、司法試験や予備試験の答案用紙と違い、枠が狭いので、挿入がしづらかったです。細字のボールペンを使い、小さい文字で書きました。また表面に書ききれないときは裏面(裏面は白紙)にも書けます(「裏面に続く」と記載すること)。私は、論文3科目共、裏面も使用しました。

(4)奨学金受給候補者の面談について

 合格通知書や入学手続き書類と共に、『奨学金給付判定面談についてのお知らせ』という紙が入っていました。
 Zoomでの面談で、15分程ありました。面接官は、法政ローの法務研究科長の高須順一教授と、赤坂 正浩教授の2名でした。「合格おめでとうございます。緊張しなくて大丈夫だからね!」という感じでスタートしました。
 終始優しく、笑顔で、和やかな面談でしたが、かなり私のステートメント等を読み込んでいて、踏み込んだ質問もあったので、ドキドキしました。難しい質問や、法律の質問は聞かれませんでした。15分の予定が少しオーバーし、17、8分でした。
 面談後、1時間程経った後に、メールで判定結果が届きました。結果の通知が早く驚きました。入学年度の授業料相当額(108万円)の全額免除でした(半額相当額の免除の場合もあるそうです)。法政ローは基本、2年間(未修は3年間)のフル免除は出さず、入学後の成績を見て、次の年度も免除にするか決めるシステムみたいです。

(5)面接の質問および回答内容、感想について

・法政ローを選んだ理由
→ステートメントと同じような答えを笑顔で答えました。
・奨学金を給付するにあたり、金銭的な質問
→家族構成(兄弟の有無含め)や、アルバイトの有無、ローに入学してからの生活の状況等々聞かれました。
母子家庭であり、アルバイトをせず、勉学に集中したいので、奨学金が貰えたら嬉しいと正直に答えました。
・入試の成績がとてもよかったが、予備校等使っていたか?それはどこか?
・あなたなら大丈夫かと思うが、ローの勉強は大変だからついていく自信はあるか?
・ステートメントで、「社会的弱者を救いたい」と書いてあるが、具体的に。
・ステートメントで、国際法が好きだと書いてあるが、主要7科目で好きな科目
→面接官が民法と商法の教授であったため、当たり障りがないように、「不得意科目がないように日々努めているので、全部好きです!」と笑顔で答えました。
・ステートメントで、演劇をやっていたと書いてあるが、未練はないか?
→ローを途中で辞めてしまうことを懸念されているのか?と思ったので、「ないです。しかし、弁護士になりドラマ等の脚本の法律監修をすることには興味があります!」と笑顔で答えました。
・貸与ではなく、給付型の奨学金であるので、勉強頑張ってくれなきゃ最悪、返して貰うことにもなるからね!と笑顔で言われました。
→勉強を更に頑張ろうと思いました。

 これらの他にも、私の画面上に六法が映り込んでいたようで、それを見て「後ろにあるのは、六法?」と聞かれ、「そうです!」と、使用感溢れるボロボロになった六法を見せたら、「とてもよく勉強しているね~!」と、好印象でした。
 また、入試の時の成績が優秀であったようなので、「法政ローを選んでくれてありがとう!」、「期待しているね!」等言って貰えて嬉しかったです。多分、褒めて伸ばすローであると感じました。
 どんなに偉い教授でも、腰が低く、優しい印象を受けました。ローに入って、質問もしやすそうな環境が整っていそうだなと感じ、入学するのが更に楽しみになりました。

6.おわりに

 いかがでしょうか。
 受験生にとっては、今までのステートメントの書き方連載等で案内した内容を、いかに実践すればよいか案内できたかと思います。繰り返しとなりますが、今回記載した内容は、ステートメントの書き方のみならず、説得力のある文章の書き方、ひいては実際の法律論述式試験における答案の作成方法にも繋がる入門・基礎事項です。ぜひ、習得していただければと思います。
 また社会人にとっては、学費免除制度が充実している法政大学法科大学院の入試や、実際の社会人合格者の声を通じて、入試がどのように行われているか・入試に向けてどう取り組んでいたかという点、社会人の先輩がどのような考えでその進路の選択をしたのか等、参考になる事項も多くあったように思えます
 さらに、看板や経歴・学歴に自信のある方でなくとも、自分自身と向き合い、己をきちんと分析していれば、自己PRやステートメント課題に適切に回答し、魅力を伝えることができることがお分かりいただけたかと思います。
 合格者の声などを参考にし、ぜひご自身にとって最良の進路選択をして頂ければ幸いです。


以上

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2023年3月13日   藤澤たてひと 

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