目次(項目番号は第1回からの通し番号です)
このガイドは法曹へ関心を持つ皆さんに法科大学院の紹介とその入試対策を活用してもらうという目的によるものです。
内容は大きく分けて《法科大学院とは》《法学未修者コースとは》《法学既修者コースとは》《各校別》の4つです。そのほかにも,試験日カレンダー などの資料も随時アップします。
2022年度 法科大学院入試対策ガイド、第2回は「入試選抜について」です。 ツイッターの質問箱で,受験生の皆さんから質問が多い,法科大学院の質疑応答では分かりにくい事項についてまとめて解説,ご案内いたします。 (第1回「法科大学院ってどんなところ?」はこちらから)
下記本文中、ブルー太字の部分が皆さんからの具体的な質問例です。
私はフルタイムで勤務する社会人です。夜間や土日をメインに,長期履修 も可能かつ働きながら通える夜間の法科大学院を検討しています。社会人でも通学可能な法科大学院を教えてください。
夜間コース等デイタイムで働く社会人向けのコースが設置されている法科大学院として,首都圏では筑波大学や日本大学,九州圏では福岡大学,そして琉球大学の計4校が存在します(2022年度入試基準)。
昼間コースとは別に夜間主コースが置かれているところに,福岡大学法科大学院と琉球大学法科大学院があります。このうち琉球大学法科大学院夜間主コースについては既修者コース対象となっていることに注意が必要です。
そして,筑波大学法科大学院については,平日夜間と土曜昼間に授業を開講する法科大学院(夜間社会人法科大学院)となっています。
なお,かつては成蹊大学法科大学院や甲南大学法科大学院など夜間コースを設置しているロースクールもありましたが,これらはいずれも廃校となっています。
受験料についてはどの程度かかるのですか。受験料免除制度はありますか。
開校当時は30,000円~35,000円程度のところが多かったです。しかし現在では受験方法によっては1回あたり5,000円~10,000円程度で受験できるロースクールもあります。
各校や受験回数(例:2回目以降)によって異なるところもありますので,詳細は受験を検討している募集要項(入試要項)等で確認願います。
なお,授業料や入学料免除制度(被災等を理由とする)を導入しているところはありますが,原則として(一般的には)受験料は受験生が全額負担することとなります。
私は法科大学院入試の法学未修者コースを志望しています。同入試対策に 必要な市販の書籍でお薦めはありますでしょうか。
大手予備校などから法科大学院小論文対策書籍は販売されています。しかし残念なことに,10年以上前から新刊・改訂はありません(2021年6月現在)。現在の法科大学院入試とかけ離れた内容の受験案内・入試問題が未だに掲載され続けており,内容の更新や品質の改善等が全く行われていないものが流通しているのが現実です。
たとえば,『法科大学院統一適性試験』はかなり前に廃止されましたが,その案内のみならず,それよりも前に実施されていた,日弁連型(JLF)又は大学入試センター(DNC)型の案内等が記載されています。また,入試問題についても,現在の傾向とは全く異なる問題等が多く掲載されています。
また,近年の法学未修者コースで出題される小論文は論評型や意見型小論文が主流ですが,上述の通り市販の対策本は非常に古く,掲載されている内容は近年の傾向・対策とかけ離れたものとなっています。また解答解説についても,公式の見解に沿うものではなく,解答によっては論旨が一貫していないことから,筆者の藤澤たてひとが自信を持って皆さんにお勧めできる市販書籍・講座は残念ながらございません。
その代わりに,実は皆さんにお薦めしたい法科大学院公認の解答解説が存在します。詳細については第三回連載で案内いたします(6月後半~7月初旬連載予定)。
法学未修者コースの過去問を見たところ,問題文が著作権法上の問題との ことで見ることが出来ません。これが普通なのでしょうか。
法学未修者コースの入試問題については,著作権法上の問題から,問題文の掲載がないところも多いです。自校作成の問題文(会話形式で展開されており,自身の意見を問うもの)以外については,一部を除き,出典が明記されるに留まっています。
問題文を知るためには,大学に訪問することで問題文の閲覧を可としている法科大学院もあります(例:上智大学法科大学院)。ですが,そのような法科大学院はあくまでも限定的です。
もっとも,中央大学法科大学院のように,問題文を公開しているところもあります。 そのため,一度各自受験する法科大学院のサイトを確認することをお勧めします。 問題文が掲載されていないものについては,設問等から傾向を掴む程度に留めましょう。
なお,近年の筆記試験では①与えられた問題文(論評等)を読み,その文章の要約をしたうえで,それに対する自身の意見を問うもの,②当事者の会話が問題文に記載されており、そこで与えられた指示内容を踏まえた上で,対応策について回答する問題解決型のいずれかです。(なお,①が基本的に著作権法上の問題を含んでいるケースが殆どです。)
「法学既修者コース」入試科目に短答式試験は課されますか。
7年程度前までは,日弁連法務研究財団が主催する法学既修者認定試験が課され,その統一スコアが既修者入試の一次試験の足切り材料に用いられていました。
しかし現在ではそのようなスコアや要件を課されず,一般入試で一次選抜(例えば TOEICの成績やGPAなどの書類審査)を課すロースクールを除いて,出願要件を満たし た方は全員論文式試験を受験することが可能となっています。
なお,慶應義塾大学法科大学院については択一試験(独自試験を含む)を7年程度前、東京都立大学法科大学院については今年度入試より刑事訴訟法・民事訴訟法の短答式試験を廃止し,論文式試験一本となっていることに注意が必要です。
授業料・学費の安いロースクールはどこですか。
授業料免除の場合を除き、各ロースクールの経費は別紙【法科大学院授業料、入学料その他の費用一覧】のとおりとなります。
法科大学院の入試では,ボールペンや万年筆を利用して解答しないと減点 されるのでしょうか。
各校の募集要項(入試要項)を確認していただく必要があります。一般的には法科大学院入試の場合,特に法学未修者コースの場合は,マス目や文字数制限等との兼ね合いから,鉛筆の使用が許可されているところが多いです。
必ず入試の注意点や要項を確認し,ロースクール側が指定する筆記用具を用いましょう。
ボールペンで書いた文章についてはどのように修正すればよいのでしょう か。契約書等と同じように定規などを用いて捺印する必要があるのでしょうか。
二重線等を用いて,文字が訂正されていることが採点者にわかるようにしてください。
契約文書の訂正とは異なり,捺印する必要はありません。
定規は使用しないでください。ロースクール側が指定する筆記用具以外の使用は禁止されています。
法学未修者コースでは面接を課すところがあると知っていますが,法学既 修者コースでも面接を課す法科大学院はありますか。
例えば一橋大学法科大学院については例年(2021年度入学者選抜を除く),3次選抜として受験者個別に教授2名:受験生1名で15分程度面接を行っています。また例年,2次試験通過者の1割程度を3次面接で落としています。
もちろん面接だけで合否は決まらず,1次選抜から3次選抜の成績を総合して合否が決定されることになりますが,受験生の殆どが対策をするため,少なくとも志望動機や各法科大学院の教育指針,自己PR(ステメンの内容)を押さえておきましょう。
法科大学院入試で用いる六法は法科大学院入試六法ということでよろしい でしょうか。
受験する法科大学院によります。ポケット六法,デイリー六法を配布するところもあれば,受験生に指定の六法を持参するよう求める法科大学院もあります。
2021年度入試の場合,以下のとおりでした(一例。以下「~大学法科大学院」記載省略)。
・ポケット六法 :一橋,東京,大阪,中央,東北
・デイリー六法 :京都,早稲田,学習院
・法科大学院六法:慶應義塾,東京都立,明治,法政
・信山社法学六法:千葉
・デイリー又はポケット六法持参指定:九州
・複数種類の六法の中から持参するものを指定:神戸
このように法科大学院によって用いる六法は異なります。また用いる六法はあくまでも慣行なので,当日になって過去の慣行と変わる可能性も十分に考えられます。
面接はスーツですか。
スーツでなくとも受験は可能ですが,ほぼ全ての受験生はスーツ姿で受験します。
スーツ着用であれば,変に目立つことはありません。
出願の際に提出する各種成績証明書は,1年前に取得したものでも可能で しょうか
各大学院の運用によりますので,要項を確認いただく必要があります。基本的にどの法科大学院も成績証明書に有効期限を設けており,たとえば「出願時より3か月以内に発行されたもの」「学士課程在学中の者については今年度前期の成績を含めた成績証明書であること」といった指定がされています。
期限切れの証明書を提出することのないよう,気を付けてください。
2年以内に受験したTOEIC公式テストのスコアが900点以上であれば優遇する法科大学院がありますが,私のスコアは3年目に取得したものです。このような場合も提出は可能でしょうか。
「単体でその要件を満たしているのであれば加点する」と明記している法科大学院であれば,スコア又は有効期限を満たしていないことから無条件で優遇されることはありません。ただし,例えば慶應義塾大学法科大学院(説明会動画をご覧ください)のように,点数を満たさなかったりしても,例えば国際性を有することを疎明すべくステートメントの内容を補強する資料として提出するのであれば,提出自体は可能です。
ただし,あくまでも例外であることから,提出の際には事前に入学説明会や入試課,募集要項の資料をよく読んでから提出することを薦めます。
私のTOEICのスコアでも,提出すれば加点してくれる法科大学院はありますか。
別紙【2022年度法科大学院入試(2021年5月末現在) 外国語能力優遇・加点対象校一覧(基準点)】を参照願います。
今回も,BEXA記事「2022年度 法科大学院入試対策ガイド」をご講読くださり,誠にありがとうございます。
今回のような質問への解説につきましては,適宜追加してまいります。
次回は,法科大学院公認の解答解説についてご案内する予定です。
ご期待ください。
また,「【更新版】2022年度 法科大学院入試 試験日カレンダー 6月~10月分」もご活用頂ければ幸いです。
2021年6月21日 藤澤たてひと
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