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このガイドは法曹へ関心を持つ皆さんに法科大学院の紹介とその入試対策を活用してもらうという目的によるものです。
内容は大きく分けて《法科大学院とは》《法学未修者コースとは》《法学既修者コースとは》《各校別》の4つです。そのほかにも,試験日カレンダー などの資料も随時アップします。
法科大学院へ進学を考えている皆さんは,試験は難しいのだろうか,勉強についていけるだろうか,お金はどのくらい掛かるのだろうかなど,いろいろ心配なことがあると思います。知っていそうで,よく分からない法科大学院について「法科大学院ってどんなところ」から解説してまいります。
専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とする…大学院(専門職大学院設置基準第18条第1項)であって,法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするもの(文部科学省HPより。一部修正のうえ引用)
すごく簡単に言うなら,弁護士になるために司法試験を受ける資格をとるところでしょう。
法曹になるためには,どのような手順を経れば良いでしょうか。
現在の制度下では,司法試験を受験するためには,受験資格を得る必要があります。そのためには原則として,法科大学院を修了する必要があります。法科大学院を修了することにより,修了後最初の4月から5年間で5回,司法試験を受験することが可能となります。そして,司法試験に合格し,司法修習を経ることで(注意:司法修習生考試に合格する必要があります),晴れて法曹三者(裁判官,検察官,弁護士)に就く資格を得ることができます。
そのため,法曹になるためには,原則として法科大学院に進学し,修了する必要があることとなります。
なお,司法試験予備試験という制度もありますが,今回は割愛致します。
また,法科大学院は日常的にロースクールやローと,学生はロー生と呼ばれることが多いようです。
法科大学院には、法学未修者コース(3年)と法学既修者コース(2年)があります。
法学未修者コースは,法律の学習をしたことがない人などを対象とする3年間のコースです。1年目は法曹を目指すにあたって必要となる基礎的な法律知識や能力などを修得から開始し,その後、2年次から法学既修者コースの方と合流し,より実践的な学修を開始することとなります。
法学既修者コースは,法律の基礎知識を既に修得している人を対象とする2年間のコースであり,法学未修者コースの1年目の課程が免除され、2年次の科目から学修を開始することになります。(以上,文部科学省のHPより引用の上,加筆・修正)
割合として大多数を占めるのが,大学学部卒業後すぐに大学院に進学する方々です。特に法学既修者コースについては,この傾向が顕著といえましょう。
他方で,法学未修者コースでは,経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ方や,社会人等としての経験を積んだ方などを幅広く受け入れ、多様なバックグラウンドを有する法曹を輩出していくことが重要であると考えられています。
そこで、法科大学院の入学者選抜では、非法学部出身者など学部段階で法律以外の専攻分野を修めた者や実務の経験を有する者など多様な知識又は経験を有する者を入学させるよう努めることとされています。(文部科学省HPより引用)
そのため法学未修者コースについては,各校とも多様な人材が確保されている傾向にあります。法学課程以外の学士・修士課程を修了した方,士業,公務員や一般企業に就業経験のある社会人経験者,主婦,法学を再度学び直す方などがその例として挙げられます。
未修者コースが本来の理想的な形として位置づけられていますが,他方,近年その司法試験合格実績について問題となっています。そのため,国だけでなく各法科大学院では未修者教育の改革が急務となっています。
各法科大学院未修者教育の改革については,文部科学省のHP等をご覧ください(一例 https://www.mext.go.jp/content/0210319_2-mxt_senmon02-000013522.pdf)。
上記未修者教育改革により,1年次から2年次に進級する際には各校とも共通到達度確認試験( http://toutatsudo.net/ )を課す傾向にあります。共通到達度確認試験については,憲法・民法・刑法の三科目について短答式試験(マーク式)が課されます。
同試験は試行当初は,法科大学院に対し一律に進級の際の要件として課す方針で検討されていました。(もちろん運用方法については各校により異なりますが),主要校については進級の際にあくまでも参考ないし進級の考慮要素として用いる傾向にあります。
法科大学院については,法学未修者コースは3年間,法学既習者コースについては2年間で修了することを予定した制度設計がなされています。その年限で修了した者の割合のことを標準修業年限修了率といいます。
しかし近年,法科大学院修了者の司法試験合格率や,特に未修者の実績の悪さが指摘されるようになり,進級要件を厳しくしているところも多くあります。
下記表は,年度当初に在籍した学生数に対する留年者数の留年率と標準修業年限修了率のベスト5とワースト5を表すものです。近年,各法科大学院とも,特に未修者コースについては進級時の留年率は比較的高い傾向にあり,留年率の全体平均は4割程度となっています。
【令和元年度留年率】・・・1年次を基準として
【標準修業年限修了率】・・・令和2年3月修了者
例えば,東京大学法科大学院(既修者)のように,在学中に予備試験・司法試験に合格したことにより退学する方も多くいるという調査結果がでています(文部科学省令和2年度調査参照)。そうだとしても,未修者・既修者合計でも標準修業年限で修了した方の比率は全体で約67%と,全体で見れば3名中1名は留年(自己都合による休学含む)経験のある方となります。
やはり気になる司法試験の合格率についても,上位校を見てみましょう。
【司法試験累計合格率】・・・平成17~30年度修了者合計
法科大学院に進学した場合,一般の大学学部生時代よりも非常に高度な教育内容となっており,また理解度の正確性も試されます。午前中に通学して講義の準備をし,講義終了後も翌日の講義の予習や復習をし,夜まで勉強をするという生活が通常となります。日々の学習を疎かにせず,入学前から一定程度の法律知識を入れることに努めましょう。
今回は、BEXA記事「2022年度 法科大学院入試対策ガイド」のご講読ありがとうございました。
次回からは,皆さんが大いに気になる「経済的負担」と「入試選抜」について解説いたします。
ご期待ください。
「第2回~入試選抜の分かりにくいところをズバッと解説!~」はここらから(6月20日に公開いたしました)。
2021年6月8日 藤澤たてひと
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