『司法試験論文過去問演習』とBEXAの講義について

1 司法試験論文過去問演習の公刊

 平成30年10月~12月に,法学書院から,「司法試験論文過去問演習」の民法,商法,民事訴訟法を刊行しました。同書の原稿をもとに,BEXAから,「司法試験過去問で学ぶ民法の戦い方」「司法試験過去問で学ぶ商法の戦い方」「司法試験過去問で学ぶ民事訴訟法の戦い方」の3講座を,平成30年9月~10月に公にしました。書籍として,読んで分かる文章を書いていますので,講座では,ポイントを絞った説明をし,全部を説明することはしていませんが,書籍にはない新しい試みを2つしています。

2 BEXA講義の新しい試み

 ⑴ 採点者の心証の取り方に基づいた解説

 試みの1つは,採点者の心証の取り方を率直に話していることです。法科大学院で多数の答案を採点した経験を基礎として,短い時間の中で多数の答案を採点するときに,採点者が,どのような部分に着目して心証を形成しているかを,解答例をもとにして具体的に説明するものです。すなわち,答案を採点する側は,幾つかのポイントが的確に書かれているかをチェックしたうえで,幾つかの箱を想定して,どの箱に入るかを決め,箱ごとに割り振られた点数の幅の中で点数をつけていく(読む中で箱を変えることもある)という方法を取ります。筆者は,司法試験委員の経験はありませんが,最近の採点実感では,優秀,良好,一応の水準,不良という箱の内容が具体的に書かれており,本試験の採点方法が分かります。ただ,どのような心証を形成していくかは,文章では書き切れない部分ですから,講義で話しています。採点者は,論理の流れを追いながら文章を読んでいますが,全ての文章を丁寧に読む時間はありませんから,論理の流れが途切れることは想像以上にマイナスになることも知っておくべきことです。

 ⑵ 分析シートの採用

 もう1つは,分析シートを利用した説明をしていることです。一口に難しいと言っても,単純に論点が難しいものもあれば,基礎的な論点であっても論点が見えにくい,あるいは答案が書きにくいものもあります。分析シートでは,過去問の各問題のどこが難しいか,どこは押さえなければならないかを三段階のランクに分けてまとめています(この評価は,70期の弁護士の意見も参考にしていますが,一応の目途という程度で捉えて下さい。人によっても時代によっても変わりうるものだからです)。例えば,論点ランクがABで,論点の問題文からのみえやすさ,答案が書きやすさもABなのに,初見で書けなかった人は,基礎固めに時間を割くべき,といった判断をひと目でできるようなものを作ったつもりです。
 そのうえで,かかる難しさを克服するために必要な対策の有無についても記載しています。論点の見えやすさ,書きやすさ,難易度がCであれば,初見で書けなくとも気にする必要はありませんが,対策がある部分については,対策を取れれば人と差をつける大きなチャンスになります。もっとも,分析シートをみるだけでは,対策の意味が分かりにくいですから,講義では,その説明をします。

3 講義サンプルと講座の改訂について

 講義のサンプルを無料で聴けるようにしてありますので,試聴してみて下さい。書籍と合わせて利用して頂ければ,ペースメーカーとすることができますし,理解を深めることができます。
 また,BEXAでは,臨機応変に改訂することができます。書籍には掲載していない平成30年の解説を追加しています(書籍では改訂版でしか対応できません)。2019年の司法試験終了後には,民法改正に対応した内容とすることを予定しており,利用者の立場に立って便宜を図るようにしています。

川﨑先生の各講座のご紹介