これは、遺産分割審判において、Dに甲を取得させ、BCが現金を取得するという手段自体はあり得ると思います。
しかしBCの本当のニーズは、問題文の3~4行目にあるように、甲をDから取り戻して甲に移住するというものです。すると、遺産分割で現金を取得するというのではそのニーズに合いません。また、遺産分割で甲をDに取得させてしまうと、甲に移住するというニーズを完全に諦めることになります。
他方、703条で賃料相当額を請求するのであれば、甲をDに完全に取得させる訳ではない(BCは移住のために甲の共有持分権を持ったままでいられる)ので、将来的に移住できる可能性もゼロではありません。その点で、遺産分割よりも移住の可能性があるわけです
そのため、遺産分割でDに甲を渡してしまうのは、甲に移住したいというBCのニーズにそぐわないので、答案例では触れていないのだと思います。