一橋大学法科大学院を受験される皆さんへ
試験日が近づいてきました。
傾向と対策について詳しく解説します。
※ 本文は「である調」(常体)になっています、あらかじめご了承ください。
一橋大学法科大学院における入試科目は、憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法である。
配点については不明であるが、問題用紙表紙の記載内容(例として2019年度入試)から
・憲法 100点
・民法 100点
・刑法 90点
・民事訴訟法 50点
・刑事訴訟法 60点
の蓋然性が高い。
一橋大学法科大学院については、2015年度入試以前については統治も出題されていた。また、過去には人権分野より1題、統治分野より1題が出題される傾向にあったが、現在は主に人権分野から出題される。
人権分野・統治分野から出題していた頃の試験委員の教授が現在他の大学で教えていることもあり、試験問題の傾向が2015年度以降顕著に変わった。近年の試験委員はいわゆる新四人組と呼ばれる渡辺先生であることが強く考えられる。(そして恐らく2年次の憲法科目を担当しているのであろう。)
2015年度入試以降、2019年度入試までは最新判例を題材として出題されていた(一例としてhttps://www.tkc.jp/law/lawlibrary/commentary/list/?tag=509)。2020年度入試頃までは最新判例から出題される可能性が高い旨を受験生らに伝えていたが、情報の拡散能力は恐ろしく、近年では出題傾向が変更されてしまった。
なお一昨年度入試問題については『事例問題から考える憲法』の設問15に非常に似た演習問題、昨年度入試では同書籍の設問12がネタとなっている。近年は同書籍を含めた演習書に記載された問題から類題が出題されており、最新判例から演習書・百選判例にネタ本をシフトしているようにも思える。そのた め、百選基本判例は少なくとも押さえたい。
それでも念のため最新判例から出題される可能性のある重要判例を以下ピックアップしたい。的中又は外れたとしても、受験生は最後の復習によく押さえておくとよい。特に規範部分についてはきちんと書けるか、手持ちの百選等で確認していただきたい(下記掲載裁判例では、たとえば薬事法判決など著名な判例より規範を引用しているため)。
・2023年度法科大学院入試 最新判例分析: https://bexa.jp/columns/view/466
近年の傾向としては、表現の自由(21条)に関する論点が頻出している。特に表現の自由に関する諸論点については、重点的に抑えて頂きたい。ただし、4年連続となっていることからすると、そろそろ経済的自由権が出てもおかしくはないので、気を抜かずに復習をして頂きたい。
・2022年度入試:表現の自由
・2021年度入試:表現の自由、そのほかプライバシー権・請願権・思想良心の自由
・2020年度入試:表現の自由と名誉権との対立構造について
・2019年度入試:集会の自由(表現の自由)
・2018年度入試:職業選択の自由
問題文や傾向を見る限り、2018年度と、2019~2020年度、2021年度入試の試験委員はそれぞれ異なっているように思える。恐らく2018年度は滝沢教授、2019年度~2020年度は現司法試験委員の教授、2021年度以降は問題形式を踏襲しつつも傾向が変わったため、別の教授(角田教授との情報もある)が作成しているように思える。2年度ごとに作成者が変わる傾向にあることから、今年度については別の教授が作成することも強く想定される。
過去2年分を見る限りでは、現司法試験型ではなく、小問のうち1つは旧司法試験の事例問題に似ている。その反面で、小問2については改正法の知識を問うという点で、民法についての基礎知識や理解力が強く問われる試験問題となっている。
昨年度を除き(一応121条の2は総則ではあるものの、直接は関係しない)、近年は必ず総則分野の問題を絡ませて問題が作成されていた。昨年度は物権的請求権の相手方などがメインの問いであったが、それでも総則分野の知識は重要である。特に代理や時効、94条2項類推適用に基づく取消権行使については今一度きちんと復習していただきたい。
また特に一橋大学法科大学院入学を目指している受験生には、(特に民法は)論証集を覚えるのではなく、条文や定義を確認しつつ、最終的には入門書等(予備校の受験本でも可)を用いて知識の総復習を行うとともに、重要条文を今一度確認していただきたい。
実際に昨年度入試対策のための連載で、【特に新法施行により大きく変わった箇所(旧法では一大論点であった危険負担や瑕疵担保責任など)について、新法ではどう変わったか、どのように解答すればよいか、今一度総復習していただきたい。】と案内したところ、出題予想が的中し、実際にその分野から出題されている(設問2)。
そうすると、今年度については、契約不適合責任(従来の瑕疵担保責任)や債権者代位、詐害行為取消が狙われてもおかしくはない。あとは改正関連として連帯債務等における相対的効力の原則(441条)・絶対的効力の峻別なども復習しておくと良いと思われる。
改正民法が施行されているが、予備校の演習書ではまだ改正法についての問題演習の量は薄く、網羅できていないように思える。近年の法科大学院入試では、試験委員も予備校の現状を気付いているようで、法改正箇所から出題されることが非常に多い。
まだ1週間あるので、ぜひ最後に総復習をして頂きたい。
・2022年度入試小問1:物権的請求権の相手方、抵当権に基づく請求の可否及び抵当権の効力が及ぶ範囲
・2022年度入試小問2:解除に基づく原状回復請求の可否およびその範囲、危険負担
・2021年度入試小問1:詐欺及び錯誤取消、121条の2第2項の解釈を問う出題
・2021年度入試小問2:不動産対抗要件、詐害行為取消権に関する基本知識を問うもの
・2020年度入試小問1:未成年者の法律行為の取消に関する諸論点、即時取得
・2020年度入試小問2:請負人の契約不適合責任に関する諸問題
・2019年度入試小問1:物権的返還請求権の抗弁を検討する問題(例:94条2項類推適用)
・2019年度入試小問2:総則における取消権行使を検討させる問題
こちらも、近年では出題者が変更されたように思える。事実、刑法教員が定年となったため、他の法科大学院に移っていることから、その蓋然性は高い。教員構成を見る限り、2022年度の作問担当は本庄教授であるように思える。
しかし、近年の出題についても過年度のものを踏襲している。具体的にはいずれも「〇の罪責を論じなさい」というものである。
既修者コースに早期卒業入試枠・制度が導入された2019年度では、賄賂という受験生にとっては比較的理解が薄い範囲から出題されているものの、全体的な難易度は易化していた。しかし、2021年度では放火罪の論点、昨年度は共謀共同正犯や中止犯等の論点からも出ており、上記過年度よりも難易度は向上している。
傾向としては5年以上前の司法試験刑事系刑法の問題に似ている。また当時の予備試験等と同程度の問題難易度となっている。特に中止犯・共犯の解消については、かつての司法試験刑法でも頻繁に出題されており、他方で苦手意識を持っている受験生が多いことが想定される。今年度の入試としても共犯関係については狙われる可能性が高いが、過去問の出題傾向からすると、今年度は総論分野からは「共犯と錯誤」、「共犯と身分」の説明、「承継的共同正犯」、「正当防衛(誤想防衛・過剰防衛など含め)」が狙われてもおかしくはない。特に共犯分野、違法性阻却については復習しておくと良いように思える。
つぎに各論について。昨年度入試まで放火罪、財産犯分野から頻繁に出題されていた。そのため今年度については、放火罪は勿論のこと、詐欺・横領・窃盗・強盗といった分野については、刑事事実認定教材においても頻出であるため、必ず復習していただきたい。
昨年度入試については「国家的法益に対する罪」から出題されており、2019年度入試と同様、受験生があまり対策できていない分野から出題された。この傾向が続くと予想するのであれば、たとえば近年『白い粉事件』で話題となったように、(偽計)業務妨害罪と公務執行妨害罪の峻別については復習しておくと良い。ただし、例年の傾向からすると、国家的法益について重点的に復習するよりも、例年通り放火罪や財産犯分野(窃盗・強盗と承継的共犯など)をきちんと固めるという勉強方法が良いように思える。
刑法については特に構成要件定義集を用いた総復習が非常に有益であるため、個人的にはお奨めしたい。そして論点を復習する際には、どの構成要件要素に関する論点なのか、条文の文言に則してきちんと復習していただきたい。
・2022年度入試小問1:実行の着手時期・共犯関係の解消の検討、中止未遂の成否
・2022年度入試小問2:公務執行妨害罪、参考人に虚偽供述をさせる行為の罪責、共犯
・2021年度入試小問1:放火罪、不作為犯の成立要件と因果関係の判断
・2021年度入試小問2:1項強盗・2項強盗・事後強盗、詐欺罪と窃盗罪の峻別方法
・2020年度入試小問1:共謀共同正犯の成否、共犯と錯誤
・2020年度入試小問2:現住建造物等放火罪の要件等について理解力を問うもの
・2019年度入試小問1:殺人罪における実行の着手(間接正犯)、方法の錯誤
・2019年度入試小問2:賄賂罪(単純収賄罪等)における要件検討と理解力を問うもの
一橋大学法科大学院には民事訴訟法の教員は充実しているためであろうか、毎年出題傾向が異なる。あくまでも寄せられた情報や在学生等へのヒアリングに基づき情報を精査する限りでは、毎年出題者は次年度(つまり皆さんが一橋大学法科大学院に入学する年度)の担当教員が作成している可能性が高い。
実際に昨年度入試においては、(昨年度入試連載で記載した通り)在校生らの情報を精査する限りでは、2019年度入試の民事訴訟法担当者と今年度の入試担当者が同様である可能性が非常に高い。
その反面、今年度は民事訴訟法の大家である山本和彦教授の年齢や、彼が長島大野常松法律事務所の顧問として既に就任していることからすると、今年度以降については入試問題作成から外れているように思える。そうすると、今年度入試については、2020年度入試作問担当者が入試問題作成に携わるように思える。
つぎに過去問の傾向について案内する。
2019年度入試については、当時改訂されたばかりであった『Law Practice民事訴訟法(第三版)』にて最新判例を踏まえ演習問題が追加された個所から出題された(同書発展問題4)。
また、2021年度入試についても、『Law Practice民事訴訟法(第三版)』【基本問題6】をやっていた方にとっては、同入試は復習問題のようなものであった。
一橋大学法科大学院の教授らが作成していることもあり、繰り返すが同書籍の重要性は非常に高い。同演習書に載っている範囲から出題される傾向にあることから、受験生はぜひ一度は目を通して頂きたい。
昨年度入試については、同書籍に収録されていない演習問題であったが、民事訴訟法判例百選には掲載されている(同百選第5版25事件)。そのため、百選と演習書(最終的にはご自身が使っているもので構わない)で総復習することが効果的であるように思える。
なおOBや在校生ら含めて調査協力を戴いた限り、昨年の予想した作問担当の教授が出題委員であったことは的中しているようである(事実、その方が担当した過去の期末試験で同様の問題が出題されていた)。
万が一昨年度の傾向を維持するのであれば、同教授が出題する限りにおいて、①和解調書と債務名義の効力(東京地判平15.1.21判時1828号59頁)や、②和解と不利益変更禁止原則(最判H27.11.30民集69巻7号2154頁)を題材とした問題が狙われるであろう。ただ今年については作成担当が変わるであろう、(またこの教授が近年2年次の民事訴訟法科目を担当していた実績は2019年度と今年度以外は相当前になるため)、今年も期末と同様の問題が出題されるとは期待できない。
参考までに・・・
当社ではロープラクティス民事訴訟法の解答例を付した講義を出している。これについては(https://bexa.jp/courses/view/296)を参照願いたい。受験勉強をする中で、仮に解答例等不明点があれば、有益に利用いただきたい。
・2022年度入試:具体的相続分確認の訴えの利益の有無、既判力およびこれに類似する遮断的効力の検討
・2021年度入試:代表権と表見代理(小問1)、弁論主義第一テーゼの適用範囲(小問2)
・2020年度入試:157条の理解力を問う問題(小問1)、一部請求と残部請求(小問2)
・2019年度入試:当事者適格(訴訟担当制度)、既判力の及ぶ範囲、独立当事者参加
・2018年度入試:境界確定の訴え(小問1)、控訴をしない旨の合意の有効性(小問2)
2015年度以降、かつて一橋大学法科大学院の刑事訴訟法の担当を務めていた村岡啓一教授の意向もあり、刑事訴訟法の入試問題では伝聞法則は出題しないという暗黙の了解があり、2020年度までそれが維持されていた。入試に出しても受験生の殆どが理解していない(教授の及第点を取ることが出来る水準の合格者答案がない)ことから、入学後の補講期間や夏期を利用して、集中講義をし、伝聞法則を含めた証拠法の理解を一橋大学法科大学院生に伝えるというものである。
しかし、3年度前、突如として伝聞法則に関する問題が出題された。恐らく一昨年度の出題者は、法科大学院にて『刑事証拠法』の講義を担当する教授(『基本刑事訴訟法』の共著者)であろうか。なお、その後、過去の出題者である刑事訴訟法の教授については他校に移っていることから、今年度入試については上記教授が出題者であることが強くうかがわれる。そうすると、過去のように刑事実務分野の変わった問題を出題させるというよりも、基本に忠実で、かつ基礎知識を基に考えさせる問題が出題されることとなろう。
なお、2020年度以前の問題については、非常に難易度が高い問題であり、基本概念から解答を導くことが出来るだけで、一応の水準を突破できるものであった。2020年度以前のような問題が出題された場合には、たとえば当事者主義等といった基本概念をきちんと理解しておかなければ太刀打ちが出来ない。つまり、同年度以前では論証パターン答案を潰すために作成した問題であり、受験生の理解力が非常に問われるものである。
証拠法に関する問題や、2020年度以前の問題についても、理解力がモノを言う。予備校の入門書などでも構わないため、一橋大学法科大学院入試の場合は最後に全体をきちんと復習しておくことが合否のカギとなる。論証パターンもよいが、それでは対処できない問題がかつてより出題されていることから、受験生には残り少ない時間で、入門講義等を含めて一度短時間で総復習して頂きたい。
復習の時間があるようであれば、同法科大学院刑事訴訟法教員が作成に携わっている『基本刑事訴訟法ⅠⅡ』(日本評論社)で刑事訴訟制度や論点を確認し、理解度を高める学習方法を薦めたい。
なお今年度入試の作問担当としては、2019年度以前の刑事訴訟法出題者は今年既に退官され、他大へ移籍しているようである。そうすると、ほぼ間違いなく昨年度と同じ教授が問題作成に携わるであろう。そうすると、2019年度以前の問題が踏襲される可能性は非常に低い。
論点以外についても、基本書などで一通り刑事訴訟制度について頭に入れておこう。昨年の傾向からすると、類題としては準抗告、勾留期間満了日の計算、控訴期間(373条)、上告提起および上告受理申立てといった制度についてもきちんと条文を含めて説明できるようにしておくと良い。
・2022年度入試:免訴判決(337条4号)、公訴時効の停止(255条1項)及び公訴時効制度の意義、公判前整理手続きに付された事件の訴因変更の可否
・2021年度入試:伝聞法則、犯罪事実認定の際の推認過程の理解力を問うもの
・2020年度入試:被疑者の身体拘束からの解放手段、刑事弁護制度の趣旨
・2019年度入試:起訴便宜主義、訴因制度について理解を問うもの
・2018年度入試:当事者主義、直接主義と口頭主義に関する諸問題
既に他の法科大学院入試対策や、BEXAにて連載済の『第三回 筆記試験対策について(法学未修者コース入試編)』で述べた通りである。ここでは内容が重複するが、小論文の対策についてはどの法科大学院入試についても共通することから、再掲する。
日々の対策方法については、BEXAにて連載済の『第三回 筆記試験対策について(法学未修者コース入試編)』で述べたとおりである。一橋大学法科大学院では出題の趣旨が公表されているが、採点基準や解答例に関する案内は掲載されていない。そこで日々の演習や模試代わりに利用するのに最適な過去問として、関西学院大学法科大学院の入試問題が挙げられる。同大ローの入試問題は一橋大ローと問題文の量や設問形式が似ており、他方で出題の趣旨だけでなくロースクール公式の解答・解説も公表されている。ロースクール側が受験生に対しどのような解答を求めているか把握する材料としても適切であり、日々の小論文問題演習の材料として利用頂きたい。また、捨てずに保管しているのであれば、同大学学部入試の小論文等を利用することも有益であろう。
次に、その他の一橋大ロー特有の注意事項を述べる。
一橋大ローの入試問題の特徴として、慶應ローと同等、またはそれにも増して問題文の量が多い傾向にある。また文章も難解である。そのため、集中力を維持させるとともに、設問内容を適切に把握する能力が必要不可欠である。
評論文は基本的に、主張箇所(claim)と、それを肉付けする具体的事実と根拠箇所(data(evidenceと表現するものもある),warrant)にわかれている。後者はあくまでも筆者の主張を正当化させるための事実や証拠に過ぎない。
長文をメリハリつけずダラダラとよんでいると、読解中に集中力が切れ、内容を理解できず、問題文の主題と全く異なる解答を作成しがちである。そうすると、筆記試験の成績は期待できず、最悪の場合筆記試験で不合格となってしまう。
問題文を読む際は、①まずは問いを正確に把握する、問われている内容が何か・キーワードは何か正確に把握し、②具体的な事実や例(例えば歴史上の人物の意見)を挙げている個所は、あくまでも筆者の主張・意見を補強する事実に過ぎないこと(もちろん、筆者がその意見を批判するために用いる場合もある)、③筆者がどういう立場を採用しているのか文章全体から把握する(要は頭の中で要約する)ことが必要である。要は、不必要に具体的事実と根拠(data, warrant)が記載されている個所に引っ張られるのではなく、具体的な例を挙げた後又は挙げる前提として出てくる「筆者の主張」を適切に把握することが重要である。
そのため、問題を解く際には、筆者が問題文で挙げる具体例に引っ張られ過ぎて、問いで聞かれている事項を見失わないよう注意したい。そして、なによりも試験時間中は集中力を切らさず、問題文の内容を適切に把握して欲しい。
設問を分析する。一橋大学法科大学院については、例年設問1で下線部分についての説明問題(要約問題)が出題されている。この種の問題を未修者入試において出題する本質は、受験生が法科大学院に入ってから根拠法規(条文)を紐解き、要件ごとに検討したうえで実際の事案を検討する資質を有しているか(つまり、法律要件に事実を「あてはめ」て説明する力)を確認するためのものである。
ここでみなさんは「要約問題だろ、藤澤は何を言っているんだ・・・回りくどく説明するな」と思うかもしれない。
たしかに要約問題(内容説明問題)であるが、結局は、聞かれていることを本問の内容に則して解答しなければならない。要は問いにきちんと答え、問いの要件をきちんと満たすよう、問題文の該当箇所を探し、事実を拾いあげて、回答してくださいということである。
説明問題・要約問題といっても、結局は他の問題と同様に文章読解能力(特に正確に設問を把握する力)を受験生に試している。つまり、設問で聞かれている要素(要件)をきちんと分解(理解)して、その問いに対して正確に答えられるか・問題文の事情を用いてあてはめられるか(=条文の要件に則して、問題文の事情をあてはめて結論を導けるか)を確認しているのである。
たかが要約と思うかもしれないが、設問を正確に把握できるか否かで勝負が決まる。そして未修小論文はこれが正確にできるか否かでほぼ勝負は決まる。だからこそ、問題文を正確に理解しているか否かは重要である。しかし意外と受験生(不合格者)の多くはできない。
「問いを正確に把握し、聞かれていることに対してきちんと答える」、私の各校ステメン講義・口述対策・BEXA連載通じてお伝えしている内容はこれに尽きる。
ぜひ、「聞かれたことを正確に把握し、その解答に必要な要件(用件)を理解し、それに問題文の事実を入れて解答できるよう」にしてほしい。そしてこれこそが、皆さんが法科大学院に入ってから(当然実務家になってからも)求められる基本的な能力である。
試験が終わっても、このことだけは忘れずにいて欲しい。そして、連載を読み、ステートメントを正確に書き、そして沢山の文章作成・問題演習を積んできた皆さんなら、きっとできるはずである。
だからこそ再度、これだけは試験本番でも守ってほしい。
「出題者の問いを正確に把握し、聞かれていることに、きちんと答えてください」
まず、私のステメン講義受講生やBEXA連載(慶應義塾法科大学院ステメン分析)を読んだ方は、講義や連載の中で藤澤がどのような事項について、くどいほど分析し、読んでいたかを思い出して欲しい。
その事項とは、①問いを正確に把握すること、②「指示語が何を指すか」である。
まず、本件の設問は「~説明しなさい」と書いてある。つまり、「この下線部につき本文章ではどのようなものであるとして解説がなされているか、それをきちんと把握したうえで、説明(要約)しなさい」という問いである。
次に、この設問から読み取れる要素を分解する。著作権法上の問題から詳細にはここで案内できないが、これもステメン講座などでお伝えした通り。要は
「抽象表現・漠然不明確な表現については、読み手にとって考えは異なるし、そもそもそれが何なのか、当該文章だけでは正確に把握できない。そこで“文章を読んだうえでどういうニュアンスでその言葉が用いられているのか、必ずそれを説明する必要がある”(※これは、ステメン講義でお伝えした「規範・定義」に相当する)」ということを頭に入れた上で、それが文章においてどこで説明されているか探す。
著作権法上の問題もあり具体的には案内できないことが非常に心苦しいが、このことを理解したうえ、試験本番ではぜひそれを実践して頂きたい。
2022年11月3日 藤澤たてひと
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