今回から、2022年度入試の各校別の分析となります。
独自の【2022年度 主要法科大学院入試総括表】(別添付図表)も合わせてご活用ください。
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2021年度入試以前の試験日程としては、①中央大(8月中旬)→②早稲田大(8月後半)→③慶應義塾大(8月末~9月第1週)という順番であった。また、慶應義塾大学法科大学院入試の最中に、中央大学法科大学院の合格発表があった。
しかし、今年度は、①中央大→②慶應義塾大→(慶応義塾大学法科大学院の合格発表→)③早稲田大学法科大学院入試という順番となった。
なお、上記項目と直接の関係はないが、以下の内容は受験生の関心事項であるため、参考までに記載する。
上記のとおり、慶応義塾大学法科大学院の合格発表後に早稲田大学法科大学院の入試が実施された。そのため2022年度入試については、慶應義塾に合格したことにより、早稲田大学法科大学院を受験しないという受験生が数多く存在していたと聞いている。実際に、受験した方へヒアリングした限りでは、各教室で1列あたり概ね20%~30%程度の受験生が欠席していたとのことであった。
実受験者数については大学側から公表されないため、その真偽については受験生からの報告に委ねるしかないが、入試日程の変更は多少なりとも影響を受けている模様である。
これを受け、2023年度入試については試験日程を従来通りの日程に戻すことも考えられる。いずれにせよ、現時点で法科大学院が2023年度入試の日程を決定したという事実はなく、今後の日程については同大学の決定に委ねたい。
今年度入試では、昨年度まで行われていた書類選考(1次選抜)が廃止された。
従来は願書内容や成績・ステートメントの記載内容に基づき、1次選抜(書類選考)が行われていた。これは2020年度入試から導入した制度であったが、今年度入試ではこの書類選抜を行わず、出願した方は原則として筆記試験を受験できるようになった。
上記を考慮すると、今年度入試については例年と同程度の実質受験倍率(筆記受験者/合格者)、具体的には既修については1.6~2倍前後の水準に収まったと考えられる。
早稲田大学法科大学院については来年度もこの入試日程で選抜をした場合、実受験者数が今年度入試と同様減少することが推測される。たしかに、今年度の施策はロースクール側の採点コスト(管理コスト)・慶應に進学しない受験者を合格させ入学者を確保するという点では合理的である。また、受験しなくても受験料収入は確保できるというメリットはある。
しかし、実際に慶應義塾法科大学院に合格した場合は早稲田大学法科大学院に進学しないという事態が生じたことを受け止め、来年度以降は入試日程を元に戻すことも強く考えられる。
同大学による2023年度入試募集要項の公開までお待ち願いたい。
従来、未修者コース入試では冬季入試選抜が行われていた。
しかし同選抜制度は2021年度冬入試をもって廃止された。これにより、2022年度入試からは法曹コース制度に基づく入試選抜を除き、夏期に実施される入試に一本化されている。
なお来年度以降の方針については、現時点のところ不明である。もっとも、一度廃止された制度を復活させるということは、よほど例外的な事情が生じない限り基本的にありえない。
受験生は同選抜が復活することを期待することなく、もし万が一にも復活したら幸運だったと思える程度に考えるようお願いしたい。
従来は5科目入試であった。しかし2022年度入試より商法が追加され6科目入試(憲/民/刑/両訴/商法)に変更された。
その結果、科目ごとの配点が見直されることとなり、民法180点、刑法120点、憲法100点、両訴法+商法各80点となった。
2022年度入試より法曹コース入試が導入された。早稲田大学法科大学院は他の法科大学院と異なり、熊本大学や明治学院大学といった多数の大学と提携している。この結果、5年一貫型の法曹コースの定員枠を設ける必要があり、既修者コース入試選抜そのものの定員配分の見直しや、冬季入試の廃止という事態が生じた。
なお、2021年に早稲田大学法科大学院から文部科学省へ提出された計画書・報告書によると、特に未修コースの実績改善を計画していることが読み取れる。具体的には、未修者教育や学修サポートの改善を改善させ、同コース出身者の司法試験合格実績を30%程度・標準修了年限修了率を60%程度とすることを目標としている。
その教育改革の一環として、冬入試が廃止されたことも考えられよう(私見)。
また、大学側の文科省への報告書を読む限り、実績改善のためには在学生に対するきめ細やかな教育やサポート体制を充実させる必要があると考えているようである。そしてきめ細かくサポートするためにも、少人数制に変更することを選んだということも、冬入試廃止の一員であろう(私見)。
いずれにせよ、未修者コース在学生の割合を減らすことによりサポートを充実させ、その傍らで既修者主体となり、同大学院の合格実績を改善させたいという意向が強く窺われた。また文科省へ提出した改善案を実施するために、まずはその前提となる未修者の定員数削減を含めた定員割合の変更が行われたように思える。
今後少なくとも3年程度は同体制・姿勢を貫くであろう(私見)。
(なお、文科省へ提出した資料では標準年限修了率についても触れられているが、本稿では割愛する)
2023年度入試で早稲田大学法科大学院を志望する受験生に対して伝えたいメッセージは以下のとおりである。
たしかに、BEXAに寄稿した【総論編】や同添付資料で案内した通り、2022年度入試における同大学院の形式的な競争倍率(出願者/合格者)を算出すると、未修5.6倍、既修2.27倍である。(https://bexa.jp/columns/view/379)
①(既修者と共通の問題点であるが、)実際の受験者数が公表されていない
(なお文科省へ実受験者数を報告するが、東大ローの運用とは異なり、同審査対象者全員を受験者として報告している。出願者数=受験者数となっていることから、昨年度についても実際の受験者数は不明である。もっとも今年度は一次試験(書類審査)が廃止されており、受験者数の報告をどのようにするかは不明であるが、国より公表・報告があり次第、何らかの形で今後案内したい)、
②上記に加え、同法科大学院既修・未修の両コース併願者が既修者コースに合格した場合、未修者コースは自動的に不合格となる運用がなされている。すなわち志願者数/合格者数で求めた倍率と、実態の競争倍率とで大きく差が生じている
という問題がある
(参考までに、2022年度入試における併願出願者数は101名程度、そのうち既習コース合格により未修を不合格とされた人数が22名であり、少なくともその分だけ実際の倍率と乖離があることとなる)。
これに加え、当日の辞退者数を考慮すれば、実態の倍率としては他大学の未修コース(一橋大を除く)と同程度の3~3.5倍前後であることが予想される。
繰り返すが、志願者数/合格者数で求めた形式倍率はあくまでも参考値であり、実態ベースの競争倍率(実受験者数/合格者数)はこれほど高いとは思えない。
そのことを念頭に置き、未修コース志願者については出願~本番段階で、必要以上に焦る必要はないということを繰り返し案内したい。
書類などを不備なく完成させるとともに、ステートメントの文章を日ごろからきちんと推敲し、論理的な文章を作成できるようにして欲しい。
法科大学院側が公表する数値に必要以上に臆することなく、入学したいという信念を持って出願し、そして合格を勝ち取って頂きたい。
あくまでも合格者/出願者比で算出されたものである。形式倍率は高く感じられると思うが、過去3年程度で見る限り、既修については実質倍率1.6~2倍程度の水準で推移している。この水準は、数値だけで見れば主要校比では低い競争水準に位置することとなる。
競争倍率に驚いて出願を回避するということをせず、また必要以上に楽観視せず、きちんと対策をしたうえで同校の入試に臨んで欲しい。
なお、同校の既修者コースはは熊本大学など多数の大学と提携することにより、法曹コース(5年一貫型)の定員枠を40人程度設けている。そのため、一般入試の定員数だけを見ると、定員数は昨年度比で減少となっている。
しかし、昨年以来お伝えしているとおり、この問題は早稲田のみならず他校(特に私立大学)にもいえることである。それよりも、定員数はあくまでも形式的な数であり、実際にはその何倍もの合格者を出すということを理解してほしい。
さて、文部科学省が法科大学院に対して給付する補助金額を算定する際に考慮要素の一つとして、「(既修未修合計の)入試競争倍率を2倍以上確保する」という指標がある。
この指標についてはかつてほど厳格に運用されていないが、それでも補助金算定の際の考慮要素となり得ることもから、今後も各法科大学院では既修未修合計の競争倍率を2倍以上に確保せざるを得ない。その反面で、法科大学院側がその基準を厳格に運用すると、今度は入学者数を確保できなくなり、同大ロースクールの経営・財政面に支障を来たすこととなる。
そのため、来年度以降も既修コースについては、概ね2倍程度の水準になると考えてよい。
既修者コース受験者についても未修者コース受験者と同様、法科大学院側が公表する形式的な数値に臆することないようお願いしたい。そして受験生は、入学したいという信念を持って、出願し、そして合格して頂きたい。
あくまでも競争倍率は倍率に過ぎず、合格水準になければ落とされるということには変わりはない。
入試まで楽観視することなく、きちんと対策を講じて欲しい。
入学者選抜試験における総合得点が高い合格者を対象として、年間授業料相当額または秋学期授業料相当額の返還を受けることが出来る授業料返還制度(稲門法曹奨学金。以下「実質学費免除」と表記)がある。
この制度は授業料相当額が給付される制度であるが、中央大学法科大学院などで制度化されている「授業料免除制度」とは異なることに留意する必要がある。
早稲田大学の場合、上記制度は授業料を支払うことが免除されるというものではなく、「入学時に授業料等を支払った後、一定時期に対象者に上記相当額が返還される」という制度である。
法科大学院側も説明会などで注意喚起をしているが、実質的に授業料免除制度と同等であるものの、入学時より授業料の支払いが免除されるということではないという点をご理解願いたい。
そのうえで、例年この実質授業料免除の資格を得て合格する受験生(合格者)は多い(なお今年度についても多数存在している)。
同大学院の取り組みとして、(不合格者以外にも)例年入学手続きをした既修合格者を対象に、入学試験における筆記試験の点数を個別に開示しているようである。
そこで例年実質学費免除資格を得て同大学院に合格した受験生らに点数をヒアリングしたところ、以下のような結果が得られた。
まず、①平均6割超(65%前後)の得点を取ると、あとは書類点や学部成績評価(地域枠や社会人を除く)次第で実質免除の対象者となる可能性が生じている。
もちろん、筆記試験で6割超の点数を得て合格しただけでは、学費免除資格を得られない場合が殆どである(筆記試験の点数で6割以上を得ることは合格するうえで大前提である)。そのうえで、仮に読者が免除を得たいのであれば、他の提出書類に加えて②「学部成績評価(GPA)」が高いに越したことはない。
また学部成績が仮に低くても、③与えられた課題を正確に分析し、説得的な回答をした「ステートメント」や④LLMコースなどでは求められるTOEFL等語学資格、⑤「推薦状」を提出し、早稲田大学法科大学院に入学するに相応しい人材であることをPRすることで、合格だけでなく実質学費免除の可能性が上がる。
これらのことを念頭に、特に学費免除資格の取得を目指している受験生は、前もってきちんと準備をして頂きたい
どんなに模擬試験等で優秀な成績を残すことが出来たとしても、実際に法科大学院を受験し、結果が出るまで合否はわからない。他方、たとえば時間をかけて説得力のあるステートメントを作成しただけで、総合点で他の受験生よりも優位に立つことが出来る。きちんとした書類を作成すれば、それだけで合格可能性や実質学費免除を得る可能性は飛躍的に向上するであろう。
最後まで慢心することなく、前ってステートメント等提出文章をきちんと作成して頂きたい。
早稲田大学法科大学院については、東京大学法科大学院などのトップ校を除く主要他大学の既修コース内では、全体に占める書類点の比重割合が高い。(なお、近年は書類点など筆記試験以外の配点割合については公表されていない)
ステートメントや成績評価も合否判定における評価の対象となる。また従前の説明会等では、推薦状についても書類点等の内容や評価を補完する考慮資料の一つとなると案内している(詳しくは同校主催の入試選抜説明会におけるスライド等をご参照願いたい)。
出願に際しては、前もってきちんとステートメントをきちんと作成するとともに、教授などに推薦書をお願いすると良い。これらをきちんと作成せずに受験し、結果発表後に後悔しても時はすでに遅い。前もってきちんと作成して欲しい。
なお参考までに、筆者は昨年BEXAにてステートメント総論記事や各法科大学院の対策記事を寄稿している。2023年度入試分については6月以降に順次改定する予定であるが、概要を知りたいという方は、以下のリンク先を参照願いたい。
◆記事:ステートメントについて(総論:2022年版)◆
(https://bexa.jp/columns/view/312)
今回も、BEXA記事「法科大学院入試対策ガイド」をご講読くださり、誠にありがとうございます。
今回は「2022年度早稲田大学法科大学院入試選抜について」をご案内いたしました。
次回以降も、上位・人気校の22年度入試の分析・傾向について解説させていただきます。
ご期待ください。
2022年3月13日 藤澤たてひと
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