直前期にやるべきこと、やってはいけないことを整理し、司法試験・予備試験それぞれの学習方針を確認します。
司法試験・予備試験本番が近づく直前期。この時期になると、「まだ知識が足りないのではないか」「過去問が思うように書けない」と不安になる受験生は少なくありません。
しかし、直前期に重要なのは、やみくもに勉強量を増やすことではありません。限られた時間の中で合格可能性を上げるためには、「何をやるか」だけでなく、「何をやらないか」を決めることが重要です。
ここでは、直前期に避けるべき勉強法と、司法試験・予備試験それぞれで意識すべき勉強法、そして最後まで走り切るためのメンタルについて整理します。
この記事のポイント
直前期になると、基本書を最初から読み直したくなる受験生は少なくありません。過去問を解いていて、分からない問題や知らない問題に出会うと、「やはり知識不足なのではないか」と考えてしまうからです。
しかし、司法試験・予備試験では、分からない問題や知らない問題が出るのが当たり前です。合格者であっても、すべての問題を知識として分かって書いているわけではありません。
そのため、過去問ができなかった理由を、単純に「知識不足」として整理しないことが重要です。直前期に基本書を頭から読み直すよりも、今ある知識をどう使うかに意識を向ける必要があります。
直前期は、何もしていないこと自体が不安になります。そのため、過去問を起案すると、それだけで「勉強した」という感覚を得やすくなります。答案を書くことで、心理的にも安心できます。
しかし、ここで注意すべきなのが、得意な科目ばかりを起案してしまうことです。比較的書ける科目は、起案していても苦しくありません。答案も形になりやすく、やった気にもなります。
ただ、直前期に本当に向き合うべきなのは苦手科目です。苦手な科目をどう対策するのか。ここから目を背けてはいけません。苦手科目の勉強は苦しいものですが、今苦しむのか、来年もう一回苦しむのかという違いがあります。
直前期だからこそ、苦手科目と真正面から向き合う必要があります。
直前期に最も避けたいのが、完璧を求めることです。判例を読みたい、基本書を見直したい、あの教材もやりたい、この科目も不安だ。やりたい勉強を挙げ始めると、きりがありません。
しかし、完璧な準備ができた状態で試験会場に向かう受験生はいません。 完璧を求めると、「やりたいことはたくさんあるのに、自分は全然できていない」という気持ちになり、メンタルが崩れてしまいます。
直前期は、完璧な準備を目指す時期ではありません。完璧を諦め、限られた時間の中で何を優先するかを決めることが大切です。
司法試験直前期にまず重視すべきなのは、コア思考の習得です。
大切なのは、「10のあやふやな知識より、1の確実な知識」です。あやふやな知識をいくつ持っていても、本番では役に立ちません。むしろ、あやふやなまま書いた知識は、答案上マイナスになる可能性もあります。
受験生が思っている以上に、コア思考を習得できていない受験生は少なくありません。合否ラインを分けるのは、難しい知識をどれだけ知っているかではなく、コア思考を習得しているか否かです。
確認すべき論点例
たとえば、誤想過剰防衛と言われたときに、事案が思い浮かぶか。答案の流れがパッとイメージできるか。共謀の射程であれば、どの要件との関係で書くのか、規範や当てはめの頭の使い方が分かるか。行政法本案の主張であれば、考慮事項の重み付けをするときに、どのように頭を使い、どう答案に表現するのか。
また、明示的一部請求と残部請求の問題であれば、なぜ信義則を根拠に訴え却下となるのか。補助参加の参加の利益であれば、定義を言えるだけでなく、その当てはめの考え方まで説明できるか。
こうした論点について、「なんとなくできる」「なんとなく分かる」では足りません。重要なのは、自分の言葉で説明できるようになることです。これが、本当の意味での理解です。
次に重要なのが、答案作成への慣れです。
CBT環境下では、形式的な答案作成への慣れの有無によって、能力的な部分の逆転が起こり得ます。特に確認すべきなのは、答案構成をどう行うのか、時間配分をどうするのか、自分が1ページ打つのに何分かかるのかという点です。
これらをしっかり把握しているか否かで、合否に差が出る可能性があります。
また、司法試験特有の構成や時間の使い方の難しさがある科目については、起案を積極的に、かつ直前まで行う必要があります。特に、行政法・刑事訴訟法などは、起案しておきたい科目です。一方で、民事系起案の重要度は相対的には下がります。
直前期の過去問起案では、ただ答案を書くのではなく、CBT環境でどのように答案を作るのか、そして自分の考えたことや言いたいことが一読して伝わるのかを確認することが重要です。
直前期に必ず徹底したいのが、暗記です。
試験場で最終的に自分を助けてくれるのは、確実な知識です。そして、暗記なくして合格はありません。
もちろん、Aランク論点については理解も必要です。しかし、理解しているだけで、答案で書くときに時間がかかる状態では不安定です。だからこそ、コア思考×暗記で合格可能性を最大化する必要があります。
普段の勉強では、仕入れた知識を、「最終的に答案ではどう書くか」まで落とし込むことが重要です。読むだけで終わらせるのではなく、分かったつもりで終わらせるのでもありません。どの知識を暗記対象にするのかを整理し、実際に答案で書ける状態まで持っていく必要があります。
直前期の暗記では、何も見ないでアウトプットできるかを確認する必要があります。自問自答して、脳に負荷をかけることが大切です。
1つ目は、論証集のAランク論点の理解・暗記です。使う論証集は、今使っているもので構いません。Aランク論点はコア思考の対象になるため、暗記だけでなく、理解も必要です。自分の言葉で説明できるかを意識して反復することが重要です。
2つ目は、過去問の起案です。過去問起案では、法律的な知識や出題趣旨・採点実感との整合性だけを見るのではなく、自分の考えたこと、言いたいことが一読して伝わるかを確認してください。答案を書いた直後ではなく、一度寝かせて、翌日に読んでみることで、日本語として伝わる答案になっているかを確認できます。
3つ目は、暗記の時間を毎日取ることです。寝る前30分でも、20分でも、10分でも構いません。最後は5分でもよいので、暗記の時間を取ったという事実を毎日継続してください。ただし、暗記は読書ではありません。論証集を読むだけではなく、何も見ないでアウトプットできるかを確認する必要があります。暗記対象については、Aランク・Bランクまでは暗記し、Cランクは読むという整理です。
4つ目は、苦手科目への対応です。苦手科目がある場合は、直前期であっても、1科目、多くて2科目であれば、演習書や講座などを使って総復習することも考えられます。ただし、3科目以上はやらない方がよいです。本当に知識が足りない科目が1科目、あるいは2科目ある場合に、その科目だけを集中的に総復習する。幅広く手を出すのではなく、必要な範囲に絞って対応することが重要です。
予備試験短答の過去問1周目の目的は、単に問題を解くことではありません。
1周目では、どの知識について、どのように問われるのかを学ぶことが重要です。「解く」というよりも、問題文を「読む」に近い感覚です。
出題分野、出題知識、出題の方向性を学ぶことで、今後どのような形で知識を習得すればよいのか、そのゴールを確認します。1周目は、短答知識を入れるための土台作りです。
2周目では、間違えた問題や知らなかった問題を中心に、実際に頭を使って「解く」作業を行います。
ここで重要なのは、理由付けまで含めて分かっている問題と、そうでない問題を分類することです。単に正解できたかどうかだけではなく、なぜその肢が正しいのか、なぜその肢が誤りなのかまで分かっているかを確認します。
多くの受験生は、この2周目の作業で終わってしまいがちです。2周目の作業をひたすら繰り返すだけでは、知識を本番で使える状態まで仕上げきれません。
3周目以降は、短答知識のインプットと、間違えた問題を解くアウトプットをひたすら繰り返す段階です。
なるべく早く、この3周目以降のフェーズに入ることが大切です。1周目・2周目は土台作りであり、合格に必要な知識を仕上げていくのは3周目以降です。
短答知識を一元化した教材や条文に戻り、何も見ないでアウトプットできるかを確認する。間違えた問題を解き直し、理由付けまで説明できるかを確認する。このインプットとアウトプットの反復によって、短答で必要な知識を固めていきます。
予備試験で短答合格経験がない受験生は、まず短答合格を最優先に考える必要があります。
この時期になると、論文のことも気になります。しかし、短答合格経験がない段階では、短答を突破しなければ次に進めません。
短答と論文の両方を気にして中途半端になるよりも、まずは短答に受かることに集中することが重要です。直前期のメンタルとして大切なのは、「なんとしても短答に受かる」と決めることです。
直前期に合格可能性を1%でも上げるためには、まずやらないことを決める必要があります。基本書を通読しないこと。得意科目ばかりの過去問起案に逃げないこと。完璧を求めすぎないことです。
司法試験受験生は、コア思考を習得し、答案作成に慣れ、暗記を徹底することが重要です。そのうえで、論証集のAランク論点を理解・暗記し、過去問起案では一読して伝わるかを確認し、暗記の時間を毎日取る。苦手科目がある場合も、広げすぎず、1科目、多くて2科目に絞って対応します。
予備試験受験生は、短答過去問について、1周目で出題の方向性を学び、2周目で間違えた問題・知らなかった問題を解き、3周目以降でインプットとアウトプットをひたすら繰り返すことが重要です。そして、短答合格経験がない受験生は、なんとしても短答に受かることを最優先にしてください。
直前期にやるべきことは、幅広く手を出すことではありません。
知っている知識を説明できる知識にすること。理解した知識を答案に書ける形にすること。短答知識を何も見ないでアウトプットできる状態にすること。
この時期は、やることを絞り、必要な勉強を徹底することが重要です。
2026年6月15日 剛力大
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