今回は、最近の重要判例「孔子廟訴訟」を題材に、大谷講師から政教分離の受験的な審査基準の考え方とあてはめの際の考慮要素についてインタビューしました。
孔子廟訴訟は、最新の「憲法判例百選(第8版)」でも追加されている重要判例です。
①空知太判例が出る前
②空知太判例が出た後
③孔子廟判決が出た後
この3段階で考えた方が良いと思います。
まず①空知太判決が出る前の段階では、政教分離原則違反の基準を目的効果基準(行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教への援助・助長・促進、または圧迫・干渉になるかを社会通念に照らして判断)で判断しています。
この枠組みは、憲法20条1項・3項、89条どの条文であっても変わらないと考えられていました。
次に②空知太判例ではどうしたかというと、目的効果基準ではなく総合考慮を採用しています。
そして③孔子廟訴訟でも同じく総合考慮を採用しています。
その上で今回の孔子廟訴訟はどういう事案だったのかというと、前述の通り使用料を免除したした事案なんですね。
行為類型で見れば免除という一回的な行為に分類されるとも考えられます。使用料を免除しますという話なので。
一回切りの行為なので、基準を行為類型で区別する考え方からすると目的効果基準が来るだろうと予想されていたのですが、蓋を開けたら総合考慮だったのです。
加えて、そもそも論文試験で審査基準をどちらにするのかって比較する基準の厳格度が違うときじゃないですか。原告は厳格な基準、被告は緩やかな基準みたいな。
ですが目的効果基準と総合考慮はどっちが厳しいとか緩やかとかいうものではないという理解が通説的ですので、論文試験では議論を構築しづらいんですよ。だったらどちらでも良いから基準を使ってあてはめに労力を割いた方が生産的だと考えています。
施設の性格については、孔子廟訴訟を前提するとポイントがあって
・他の公園と区切られていること
・お祈りをしていること(それってちょっと宗教色あるよねということ)
・孔子を霊としてお祭りがされていること
このあたりがあてはめのポイントになります。
また、免除の経緯についてもポイントがあって
・免除することを市を決めた時に市の内部でこれ宗教的に危ないのではないかという意見があったこと(事前にすでに危ないのではという意見があったこと)
これがポイントだと思います。
それと、文化財として指定されていないという点も大きなポイントです。
もし文化財として指定されているのであれば、それに対してお金を出してもいいってことになりません?だって宗教的なものではなく歴史的に価値のあるものの保全にお金を出すってことになるので、たとえば文化遺産とか。
文化財ではないので保全にお金を使ったわけではないという宗教色がないことを否定する事情になります。
こういった視点を持って試験でもあてはめられれば、憲法判例を踏まえた答案が書けていると評価されるはずです。
問題文を読むところ~答案完成までの思考過程を丁寧に追体験できる内容で、試験本番に通用する力を養えます。 この記事で得た気づきを、学びとしてさらに深めたい方は、ぜひご覧ください。
2025年11月5日 大谷大地
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