私は、高卒で公務員として働いていました。仕事で行政法や刑事訴訟法に触れることが多く、そのような中で次第に法学に対する興味がわいていき、一度本格的に学んでみたいと思い、38歳の時に仕事を続けながら通信制の法学部に進学しました。大学で勉強を始めた当初は、仕事に活かせたらいいなと思って法律を学んでいましたが、勉強を続けるうちに、組織にとらわれない弁護士という働き方に魅力を感じるようになりました。
そして、大学卒業を機に、弁護士に転身することを決意し、司法試験を受けるため、公務員を退職して法科大学院に進学することにしました。年齢面での不安はありましたが、定年が70歳まで延びることを考えると、まだ30年は働けるという思いからチャレンジを決めました。
通信制大学は入学しやすい反面、卒業が大変です。卒業するためには30科目以上の単位を修得しなければなりませんが、1科目履修する都度、2~4通の課題レポートを提出し、テストもパスしなければなりません。
自学習が中心のため、文献の探し方や課題対応など、すべて自力で解決する必要があり、初めはかなり苦労しました。しかし、提出・修正を繰り返すうちに、徐々に「自走力」が身につきました。
大学2年目の頃は、レポート作成に大分慣れてきた実感がありました。何度も書いて添削を受け、トライ&エラーを繰り返すうちに文章の組み立て方が自然に身についていったのだと思います。また、文章の精度が上がっていき、大学3年目には課題提出も一回で合格できるようになりました。
ロースクール入試の受験勉強を始めたのは、大学4年目のときでしたが、当時はまだ公務員の仕事を続けていたため、大学のレポート課題・テストをこなしつつ、仕事もフルタイムでやりながら、空いた時間にロースクールの受験勉強をするという、とてもハードな毎日を過ごしていました。ロースクールの受験日は10月だったのですが、8月の時点でまだ不安が残る状況であったため、思い切って9月に退職し、入試までのラスト1か月を追い込み期間としました。周囲にも進学の話をしてしまった手前、もう後には引けないという想いで勉強に没頭しました。
約10か月くらいの学習期間を経て、運よくロースクールに合格することができましたが、試験を振り返ってみると、合格できたとはいえ、まだまだ知識の穴が多いように思いました。そこで、ロースクール入学前の準備として、一度基本的なところから学びなおしたいと思い、BEXAの『シン王道基礎講座380』を受講しました。『シン王道基礎講座』は、テキストに要点と判例がコンパクトにまとまっているため、とても使い勝手が良かったです。また、吉野先生の講義は、分かりやすいだけでなく、口調がいつも明るいため、聴いているだけで元気づけられ、勉強がはかどりました。結果として、吉野先生の講義のおかげで、ロースクール入学前の段階で知識の穴埋めができ、司法試験在学中受験に向けた地盤が整ったように思います。
ロースクール入学後は、司法試験受験に向けてどこかの予備校に入ろうか迷っていたのですが、ロースクールの先生方が思ったより司法試験を意識した指導をしてくれることが分かったため、ロースクールの勉強をしっかりとやっていれば、受験対策としてほぼ十分ではないかと思いました。そこで、予備校に入って全科目カバーしてもらうことはやめて、自分が苦手な部分のみ、BEXAで補強する戦略にしました。
私の場合、特に憲法が苦手であったため「憲法の流儀」を受講しました。民法や刑法などは、市販の教材が充実していますが、憲法は問題集が少なく、書き方の型もつかみづらいところがあります。さらに他科目と違って規範の立て方に独特の難しさがあるため苦戦していましたが、「憲法の流儀(基礎編)」で主要判例を使った規範の組み立て方を学び、憲法の答案作成の手がかりをつかむことができました。
司法試験直前期は、「憲法の流儀(実践編)」の過去問解説が非常に役立ちました。私の場合、過去問を解いてもフィードバックしてくれる相手がいなかったため、模範答案をもとに自己添削を行い、弱点を把握することで穴を埋めていきました。公法系の場合、参考答案は冗長になりやすい傾向がありますが、「憲法の流儀」はコンパクトで明朗な内容のため、2時間という制限時間の中で書ける答案で、かつ、評価が高い答案とは、一体どのようなものかということを知るために、とても参考になりました。『憲法の流儀』の無駄がなく洗練された答案と比べることで自分の過不足がわかり、問題文の読み方も身につき最大限活用できたと感じています。
民事訴訟法も苦手科目で、判例知識は司法試験でも必須だと考えていたため、大瀧先生の「民事系1位が作った民事訴訟法百選基本講義」を受講しました。要点を丁寧に噛み砕いて説明されているので、つい自分では敬遠しがちな箇所もスムーズに学習できました。講義を聞きつつマーカーを引き、1周目は全体を把握、2周目は聞き逃しや新しい視点を意識して、仕上げとして3周目をまわしました。受講スタイルとしては判例百選を広げながらメモを加える形で、自分なりの百選を作り上げました。試験当日も試験会場に百選を持ち込み、試験開始直前まで読んでいたところ、ちょうど読んでいた判例に関する問題が出題されるというラッキーがありました。
商法に関しては最後まで苦手意識が残ったものの、ひたすら問題演習を積み、重要論点の把握や条文素読を繰り返して知識を定着させました。BEXAの大瀧瑞樹講師による「会社法百選速習講義」やロープラクティスを数周し、周辺条文まで読み込むことで頭に刻みました。
司法試験の過去問は、受験した年の1月から開始しました。大学院の春休み期間(1~3月)を利用して10年分以上取り組みました。ここまでの学習の成果で、自分の新たな課題がどこにあるのか見えてくるようになりました。
例えば、民事訴訟法については、判例の読み込みが必須だと感じ、対策をしていましたが、実際過去問を解いた際にも読み込みの甘さを感じたら、大瀧先生の講座を振り返る。一度確認した内容であっても、回数を重ねることで判例知識の深さが増し、論文に使うポイントが精査されていく実感がありました。
また、憲法や行政法がうまく書けないと感じたら、『憲法の流儀』を聴き直す、『行政法の流儀』を聴き直す。解いて分からない部分があれば、悔しさを噛み締めながら解説を読み、理解不足を痛感してはリカバーする。その繰り返しで、最後まで「自分の弱点・書き方が甘い部分を振り返って精度をあげる」という学習サイクルを進めました。一つ一つ、自分の弱点について過去問を解きながら補強していくことで、より答案の精度をあげられたように感じます。
私は、論文を書くスピードが遅いタイプでした。2時間で8枚書ける方もいますが、私は5~6枚が限界。いろいろ試してみましたが改善は難しく、代わりに「少ない枚数でも合格している人の答案」を研究して、ポイントを絞った答案を作るように心がけました。
時間内に書き切れるのは2,000字程度だと見積もり、PCで2,000字前後にまとめる練習を行い、3,000字を超えた場合はどこを削るか試行錯誤しました。ただし、採点の要点まで削らないよう、優秀答案を参考に「何が重要なのか」「いかに短くコンパクトに書くか」を心がけました。
最終的に、10年分の司法試験過去問と最後に重点を置いた弱点対策が功を奏し、司法試験に一発合格できました。私の場合、フィードバックしてくれる人はいなかったので、過去問を解いたら自己分析・自己添削し、参考答案や優秀答案と突き合わせることで、自分の弱点を客観的に見つめました。弱点を認識し、集中的に補強する。これが合格への近道だと実感しています。
後悔している点としては、もう少し早めに過去問を始めるべきだった点です。1月の定期テストが終わってから始めましたが、当初2周の予定が1周しかできなかったため、もう少し早めに始めればよかったと感じるほど、過去問は効果的でした。
ここ数年、試験の傾向は大きく変化しています。特に、従来のような論証の「貼り付け」では対応しきれない問題が増えている印象です。ロースクールでの学びが重視されており、法的思考の本質を理解していなければ解けない問題が多く出題されています。そのため、単純に論証パターンを暗記するだけでは対応が難しくなっています。
ロースクールルートで受験する方は、スクールでの学習をおろそかにしないことが重要だと思います。その上で、自分の苦手な部分を科目ごとに特化した講座、いわゆる「科目プロ」で補うのが効果的だと実感しています。BEXAは学習スタイルに合わせて講座を選べるので、非常に使い勝手がよいと感じました。ロースクール生でも、全科目を予備校講座で補強し、並行して学んでいる方は多いですが、その方法で必ずしも合格しているわけではありません。大切なのは「自分の苦手分野を認識すること」です。
また、自分でスケジュールを立てることも大切です。私の場合はエクセルでこの日にどの科目をやるというスケジュールを立てていました。授業がない日に具体的なノルマがないとダラダラしてしまう。1日2、3科目とくというスケジュールを自分に課してノルマをこなすのがいいと思います。目に見えるので達成感もありおすすめです。
ぜひ、受験生の方にはあきらめずに頑張っていただきたいです。
もともと労働問題に興味があったことに加え、実務で必ず役に立つと考えたため労働法にしました。
2025年3月28日 BEXA事務局
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