ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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本問では、挙げていただいた「店内を荒らし〜金品を持ち出した」という行為の前段階で、改正で新設された不同意性交等致傷罪が成立すると考えられます。
「店内を荒らし〜金品を持ち出した」という行為については、財物を領得する行為であるため、性犯罪系の不同意性交等罪ではなく、財産犯である窃盗罪・器物損壊罪を検討すれば足ります。
本問での性犯罪系の処理については、「店内を荒らし〜金品を持ち出した」という行為の前段階で、性交をする目的で顔面殴打や頸部の締め付けといった行為がなされているので、これらの行為に不同意性交等致傷罪を成立させれば足ります(ちなみに答案例では強制性交等致傷罪になっていますが、ここは新設された不同意性交等罪の条文を使います。追って改正版を配布予定ですので、今しばらくお待ちください)。
そして、犯人であるXは、甲が死亡したと誤信しているものの、客観的に見て甲は死亡しておらず人事不省に陥っただけですので、不同意性交等致死罪までは行きません。ここは間違えやすいポイントですが、致死罪まで行くためには客観的に見て被害者が死亡していることが必要であり、本問のように、被害者が死亡しておらず犯人が誤解しただけの場合は致死罪にはなりません。
結論として、性交をする目的で顔面殴打や頸部の締め付けといった行為について性犯罪系である不同意性交等致傷罪を検討すれば、性的被害については評価し尽くしているといえるので、「店内を荒らし〜金品を持ち出した」という財物領得行為については財産犯たる窃盗罪・器物損壊罪を検討するという流れになります。