ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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甲がA社の本社ビルに入った時点で建造物侵入罪(会社ビルなので住居侵入罪ではなく建造物侵入罪となります)が成立する余地も十分あると考えられます。しかし、甲は社員であり建物自体には自由には入れること・A社は各部が互いに独立した部屋で業務を行っていることから、新薬開発部の部屋に入った時点で建造物侵入罪(以下、本罪)の成立を認めるのが緻密な処理と思料します。
まず甲はA社の社員であることから、A社の建物自体は自由に入れます。そのため、本社ビルに入った時点での本罪成立は、成立時期がやや早すぎるきらいがあります。つまり、甲は本社ビルに入る権限はある以上、単に本社ビルの入り口に入った時点では、意思に反する立ち入りと確実に認定できるか若干疑義があると思われます。
他方、A社では各部が独立しており、新薬開発部も他の部から独立した部屋で業務を行っています。そのため、新薬開発部の部屋に立ち入った時点で、同部屋への新薬開発部後任部長の意思に反する立ち入りがあったと確実に認定できるので、この段階で本罪を成立させるのが確実といえます。
したがって、本社ビルに入った時点で本罪を成立させても間違いではないと思われますが、上記の事情を踏まえると、新薬開発部の部屋に入った時点での本罪成立の方が緻密な検討になると考えます。