ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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丙については、実践的には共犯からの離脱で切っても合格ラインに乗るだろうと考えられます。
丙の傷害罪の共同正犯の成否においては、傷害罪において丙が車を運転することが当初の共謀だったところ、丙が犯行前に抜けたことから、丙が運転するという当初の共謀内容から外れた形で傷害罪が実行された点がポイントです。
まず、当初の共謀では傷害罪の実行に当たって丙が車を運転するという内容でしたが、丙が実行前に抜けたことで当初の共謀通りにはいかなくなり、甲が丙の代わりに運転を行いました。すると、当初の共謀(丙が傷害罪の実行のために車を運転する)から事情が変わった結果、甲の現場判断で甲が丙の代わりに運転しており、当初の共謀とは異なる形で傷害罪が実行されています。
そのため、当初の共謀から外れた上で、甲の現場判断に基づいて甲が急遽運転して傷害罪が実行されているので、丙は傷害罪との関係ではそもそも共同実行の事実がないという要件で切れるのです。
すなわち本問では、①共同実行の意思(丙が運転する予定で共謀した)→②共同実行の事実(共謀で予定した通りに丙が運転する)という計画のはずが、丙が拒んだことで甲が急遽運転しています。 そのため、②共同実行の事実が当初予定した丙が運転という共謀内容から外れ、現場判断で甲が急遽運転した形になるので、丙が運転するという当初の共謀に基づかず、甲の現場判断に基づいて甲が運転しているため、共同実行の事実で切れます。
もっとも共同実行の事実で切るという判断は、事前の共謀内容で丙が運転する予定だったが、予定が狂ったので、甲の現場判断に基づき甲が急遽運転したというストーリーを緻密に見なければ気づけないので、共犯からの離脱で切るのが試験現場では実践解だったといえます。
仮に乙に過失傷害の共同正犯が成立するとし、かつ丙で共犯からの離脱を認めなかった場合は、私見ですが、丙には過失の共同正犯が成立する余地があると考えます。
離脱が認められない以上は、一部行為全部責任の原則から、過失傷害についても責任を負うと考えられるからです。