ご質問をいただきありがとうございます。
これは答案例94行目にありますように、YがXにクレカを貸した際には、Xの横領を予定はしていなかったのですが、他人にクレカを使わせること自体に大きな問題があるので、このクレカ貸出行為が有印私文書偽造及び同行使罪・詐欺罪につながることを予定していた以上は、そこからXが羽目を外して横領することも想定できるとして、教唆故意を認定できます。
この教唆故意については問題文の事情が少ないので、挙げていただいたように「二ヶ月に一度、30万円の範囲内での処分行為しか承諾しておらず68万円相当の電化製品を買い求めることは認識してない」と論述して、教唆故意を否定する筋もあり得ると考えます。
しかしこれは見方を変えれば、横領罪の教唆故意を敢えて否定する事情が他にないので、問題文から空気を読んで、教唆故意の肯否は問題となっておらず、端的に肯定すればよいとも考えることができます。
つまり、Xという他人にクレカを使わせる行為自体が、カード発行会社との関係で大きな問題のある行為です。このような大きな問題のある行為をYがしている以上は、Xがクレカを使うに当たって、私文書偽造罪・同行使罪・詐欺罪、そして羽目を外して商品をねこばばするという横領罪まで教唆故意があるだろうと、クレカ貸出行為自体から認定することが可能です。
すなわち、クレカ貸出という大きな問題のある行為をしている以上は、その問題行為と連なる一連の犯罪については、いずれも教唆故意ありと考えるのが一手です。
この辺りは教唆故意に関する事情がほぼなく、説明の仕方次第という面もありますので、挙げていただいた事情を上手く説明できていれば、教唆故意を否定しても十分評価されると考えます。