ご質問をいただきありがとうございます。
1について
乙において殺人罪を検討したのは、より直接的な行為者である甲に殺人罪が成立しているからです。そのため、「甲において暴行罪や傷害罪が殺人罪に吸収され」、主犯格である甲に殺人罪が成立しているからという理解で大丈夫です。
間接正犯や共同正犯の処理においては、基本的に成立する罪名が一致すると考えるので、共犯者の乙についても甲と同じ殺人罪を検討します。
2について
ここは、被害者との関係で監護義務がある場合には、その被害者と一定の人的関係があるため、その強いつながり故に、被害者に対する犯罪を積極的・主体的に行う動機・立場・能力などがあると考えるのが一手です。
つまり、監護義務のない場合と比べてみますと、監護義務という強いつながりがあれば、そのつながり故に積極的・主体的に犯行を行えるポジションにいそうだと評価できるので、正犯意思を肯定する事情として読み込むことが考えられます。
もっとも、正犯意思は監護義務などの1つの事情から一義的に決まるものではなく、様々な事情を考慮して決します。本問では甲が酒に酔ってAや乙に暴行を加えることを繰り返していた上に、乙も甲のBに対する暴行を止めなかっただけなので、これらの事情も踏まえ、正犯意思が否定されます。