ご質問をいただきありがとうございます。
まず本問では、答案例の36~44行目において、間接正犯と見る余地がなくはないものの、結論としては明らかに間接正犯ではない旨を示していますので、この36~44行目で間接正犯の検討を黙示的に行っています。
次に、本問の答案例18行目で共同正犯から検討した意図は、主犯格といえる甲との関係で、乙も傷害罪の認識を持っており、甲に対して犯行方法を提案するなど積極的に動いていることから、乙が一方的に支配利用されたとはいえず、間接正犯が明らかに成立しない点にあります。
間接正犯は、主犯格といえる利用者が、被利用者を一方的に支配利用しており、被利用者に規範的障害がないことが必要です。
しかし本問の乙は、Xが聴力を失うことは認識しているので傷害罪の限度では規範的障害があり、さらには、うその報告をするなどの犯行方法を甲に対して提案しているので、甲に便乗して積極的に犯行実現のために動いています。
そのため、乙に規範的障害があり積極的に動いているという点から間接正犯は明らかに成立しないと考え、答案例18行目のように共同正犯から検討・論述します。その上で間接正犯については、36~44行目の共同正犯の要件に絡めてその成立を否定しています。
もちろんここは、36~44行目の内容を18行目より前に書いていただいても全く大丈夫ですが、明らかに成立しない間接正犯を大展開すると途中答案になるリスクがあるので、36~44行目のように簡潔にその成立を否定する書き方もあるという点を示しています。
複数犯パターンについては、間接正犯→共同正犯→教唆犯・幇助犯の順番で検討するのは仰る通りなのですが、間接正犯が明らかに成立しない場合には、答案上は共同正犯から論述を開始するのが一般的です。この辺りは臨機応変に判断する必要がありますが、問題をたくさん解いて経験を積んでいただければできるようになりますので、大丈夫です。