ご質問をいただきありがとうございます。
本問の行為については、詐欺罪では検討できないとするのが一般的です。なぜかといいますと、機械からお金を引き出す行為は、詐欺罪の実行行為たる「人を欺」く行為とはいえないからです。
246条の詐欺罪を成立させるためには、実行行為たる「人を欺」く行為(欺罔行為)が必要です。この欺罔行為は「人」に対してなされる必要があり、例えば、銀行の窓口の行員や電話先のお年寄りといった「人」を対象に、欺罔行為を実行することが必要です。
そうすると、現金自動支払機(ATM)のような機械からお金を引き出す場合は、その引き出し行為の相手は「人」ではなく機械であるため、「人を欺」く行為とはいえません。
そのため、本問のように機械からお金を引き出す行為は、詐欺罪の実効行為たる「人を欺」く行為(欺罔行為)とはいえないので、詐欺罪は検討できず、窃盗罪を検討することになります。