ご質問ありがとうございます。
これは、法定相続分を定める900条は、あくまで法定相続分の割合を決める条文にとどまり、当然に分割して請求又は履行できることまでは、同条だけでは直ちに判明しないからです。
900条は、あくまで法定相続分の割合を述べる条文であって、最終的に遺産分割が確定するまでは、誰がどのように権利を取得するかは浮遊的かつ未確定の状態になります。
この状態における浮遊的な財産や権利義務の処理については、共有説と合有説があり、共有説は427条が適用され分割債権及び債務として帰属分を行使及び履行できるとするのに対し、合有説は427条が適用されず相続人全員でのみ共同して請求及び履行できるとし、両説の対立が生じます(『民法判例百選Ⅲ〔第3版〕』69事件の解説1)。
つまり、900条だけでは、その債権債務を分割して行使及び履行請求できるかが確定しないので、427条を併せて使うことで共有説に立つことを述べ、分割して請求又は履行できる点まで明らかにしているのです。