ご質問ありがとうございます。
ここでの証明の対象は、「文書の真正」です(228条1項)。この判例は、「二段の推定」に関して判断したものですが、「①印影が本人の印章のものであれば、その押印は本人の意思に基づくと推定され、②その結果、228条4項が適用されて、文書の真正が推定される」というものです。
この二段のプロセス全部が、文書の真正を証明しようとする者の証明責任となります(これが本証活動です)。このプロセスの一部を否定(否認)する活動が、質問のあった、相手方による「反証がない限り」なのです。つまり、この推定プロセスを全体としてみると、本証活動に対する相手方による妨害活動になるので、「反証」で良いのです。
仮に、「本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合」だとしても、「第三者が盗み出して勝手に押したのだ」と反証できれば、推定は崩れます。つまり、相手方は「本人の意思に基づかないものであること」について揺さぶりをかけられれば十分なので、「反証」になります。