ご質問ありがとうございます。
両者の違いは、「物権変動の過程に忠実かどうか」という点です。
まず物権変動的登記請求権は、正しい物権変動を登記に反映するために認められます。
例えば、甲土地の所有権が売買契約によってA→B→Cと移転したものの、登記がいまだAの下にあったとします。この場合、BのAに対する売買契約に基づく債権的登記請求権が時効消滅していても、物権変動のA→B→Cの過程を正しく登記に反映するため、物権変動的登記請求権を使って、BのAに対する登記請求権が認められます。
次に真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求権は、物権変動の正しい過程を省略してでも認められるものです。
例えば、A所有の甲土地についてBが勝手に書類を偽造して自己名義の保存登記を行い、Bを起点にB→C→Dと甲土地が転売されたとします。この場合、Aは本来であれば、CとDを被告としてB→C→Dの移転登記の抹消請求を求め、その後にBへAに対する移転登記を求めます。つまり、ズルをしたBからB→C→Dと登記が流れているので、これを全て遡って元に戻すのです。
しかし、B~D全員に訴訟をするのはAにとって過大な負担です。そこで判例は、Aの便宜に配慮して、最後のDのみを被告として直接Aへの移転登記を認めました。
このように、物権変動の過程を省略してでも、真の権利者のために直接に移転登記できる請求を真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求権と呼びます(以上は『新ハイブリッド民法2 物権・担保物権法〔第2版〕』40~42頁を参照)。