良い質問ですね。質問者さんの疑問も加え、来年のテキストではこれも加えさせていただきますね。
さて、①まずは文言を加えず正確に読み解く、②文構造をきちんと把握する、③指示語を把握するということで解決に導けると思います。そしてこの能力は将来、条文や判例、特に英米圏の判例文言(英語は指示語や語句を大事にする上、論理構造を把握するのが重要)で役に立ちます。
①まず、指示説明文およびその記載文言を正確に把握しましょう。そこがスタートラインです。
慶應ローの課題はあくまでも
「~特筆すべき事項を1つから3つにまとめ、その主題を箇条書き~」
であり、
「特筆すべき事項を1つから3つにまとめたものの主題を箇条書き~」
を求めているのではありません。
質問者のご指摘通り、指示説明文が「まとめたものの主題を箇条書き」でしたら、質問者さんのご指摘のようになるのでしょう。ですが、慶應側が課題文で求めている、主題としてまとめる指示は、前者(特筆すべき事項~その主題)であり、
後者(まとめたものの主題)ではありません。
②文構造については、「(目的格部分の)特筆すべき事項」を1つから3つにまとめるのであり、目的格部分の特筆すべき事項を纏めることとなります。その問題であり、まとめ方については、講義でも申し伝えたとおり、ひとによっては1つ~3つの方もいるでしょう。
したがって記載については、その特筆すべき事項を、主題記載欄の文字数・項目数の範囲内で記載することとなります。
③「その主題を箇条書き」であり、「それらの主題を箇条書き」とは記載されていません。単数形の指示代名詞が用いられていることからわかるとおり、「その」という指示語が指すものは「特筆すべき事項」であり「特筆すべき事項を1つから3つまとめたもの」を指すのではありません。
これらのことを把握して、読んでみると正確に把握できるかと思います。
講義でもお伝えしている通り、趣旨はあくまでも文言を正確に読めていることを前提に発生するものであり、そも文言を正確に読むことで、条文の趣旨や目的、を把握することができます。
もっとも非常に良い観点の質問・相談でしたので、来年以降の講義やテキストにも反映させていただきます。
質問者です。大変丁寧かつ論理を尽くしたご回答をいただき誠にありがとうございます。
しかし、当方の疑問はまだクリアにはなっていないように思います。
私の疑問の最も重要なポイントは、大学側の定義する「特筆すべきもの」とはすなわち、ア.問題意識と、イ.学習等内容と、ウ.ビジョンへの結びつきのアイウがひとまとまりになったカタマリであり、そのカタマリの個数を1つから3つの範囲で記載せよというものだと思います。
その上で、「その主題」の「その」が先生のおっしゃるように「特筆すべき事項」なのだとすれば(この点私も同じ理解です)、アイウのひとかたまりに対して1つの主題をつけろと指示されていると理解すべきなのではないでしょうか。
もし答案例のようにアイウのそれぞれに主題をつけてしまうと、特筆すべき問題意識、特筆すべき学習等活動、特筆すべき将来のビジョン、をそれぞれ書いていることと同義になってしまい、それだと、大学側の「特筆すべき事項」のまとめ方と反してしまうか、「その主題」の設定の指示に反してしまうか、いずれかの違反になってしまうと思います。
「特筆すべき事項を1つから3つにまとめ」の部分を、
比較のため、「エピソードを1つから3つにまとめ」に変えて考えてみた場合、普通に解釈すれば、エピソード①、エピソード②、エピソード③の3つを限度に記載せよと指示されていると受け止めるべきではないでしょうか。
そして、「その主題」の「その」という指示語が指すのは「エピソード」です。
これでご納得いただけると思うのですが、「主題」は、エピソード「毎」につけなさいという指示だと思います。
ですから、ア.問題意識と、イ.学習等内容と、ウ.ビジョンへの結びつきのアイウのセットを単位に構成される「エピソード」が1セットだけなのであれば、主題は1つだけ記載すべきだという結論になるかと思います。せっかくアイウのセットでまとめたエピソードをアイウの3つに分割して主題をつけてしまったら、大学側の「特筆すべき事項」のまとめ方と反してしまうか、「その主題」の設定の指示に反してしまうか、いずれかの違反になってしまうと思います。