ご質問ありがとうございます。
これは、「行為後に第三者の行為が介在した場合であっても、行為者の行為が結果発生の直接的な原因を設定したといえるときは、因果関係を肯定する」という視点から、本問(2-4-2)でも因果関係が肯定できます(『基本刑法Ⅰ』77頁)。
まず丙の突き出し行為については、猛犬がいる屋外に突き出したという点が重要です。実行行為は状況に応じて具体的に把握するものなので、ここでは単に突き出したというよりも、「猛犬がいる屋外に」突き出したと捉えます。
そして、この屋外への突き出しの直後に甲は猛犬に噛まれていますが、この丙の屋外への突き出し行為を直接の原因として、甲は屋外にいる猛犬の眼前にいる羽目になっています。すると丙の屋外への突き出し行為が、猛犬に噛まれるという結果発生にほぼ直結しているといえ、因果関係を肯定できると考えられます。
もちろん本問では、因果関係を否定するという解答筋も採りうると思われます。しかし本問では、因果関係に関する事情がほとんどないので、出題意図としては因果関係の肯否はあまり問題とならないと読めるため、端的に因果関係を肯定することが想定されていると考えられます。
因果関係を否定する事案の場合は、実行行為の危険性が軽微である上に、明らかに異常な介在事情がある場合が多いですが、本問ではそのレベルの事情まではないので、ここは空気を読んで因果関係を端的に肯定することが求められていたと思われます。