ご質問ありがとうございます。
この特定とは、不特定物(物の個性に着目せず、給付の内容とした物)を特定物(物の個性に着目して、給付の内容とした物)にすることをいいます。根拠条文は401条2項です。
まず、不特定物の場合は当事者が物の個性に着目していないので、債務者は無限の調達義務を負います。例えば、「どれでもいいから猫のぬいぐるみが欲しい」という契約の場合、猫のぬいぐるみは「どれでもいい」ゆえに個性に着目されていないので、猫のぬいぐるみが引き渡される前に破損した場合は、別の猫のぬいぐるみを持ってくる義務が生じます。
この無限の調達義務があると債務者の負担が大きくなるので、特定をすることで無限の調達義務を免れさせます。
つまり、「どれでもいいから猫のぬいぐるみが欲しい」となっている場合に、「この茶トラの猫のぬいぐるみが欲しい」として、物の個性に着目して対象物をロックオンすると特定が生じるのです。
この特定により、債務者は無限の調達義務から解放され、対象物を現状のままで渡せばよくなります。上記の例であれば、茶トラの猫のぬいぐるみを引き渡せばよく、この茶トラの猫のぬいぐるみが破損しても、代わりの猫のぬいぐるみを無限に調達する義務は負わないのです。