平成27年司法試験の刑事訴訟法の設問2について質問です。
伝聞証拠該当性の問題で、「本件メモ」を非伝聞とすることはできないのでしょうか。
痴漢による示談金による犯行はやめ、先物取引で会社の金を使い込んだことにする(という詐欺に転換した)という記載及びVが用意するよう言われた500万円は、乙と共犯関係にある甲の自白と一致しています。
ご質問ありがとうございます。
断言はしにくいですが、そのような推認も全くあり得なくはないと思います。
特に司法試験の論文では、問題にもよりますが、完全解がある一方で、それ以外の実践解(完全解ではないがあり得なくはない解答筋)も説得的に書ければ十分な合格点がつくようになっているので、説得的な説明ができるのであれば、本問でもメモを非伝聞とする余地も全くあり得なくはないと思います。
もっとも、このメモの真実性が証明できれば、メモ内容通りの電話が丙乙間でなされたと認められ、そこからRの立証趣旨たる丙乙間の共謀を推認できるので、本件メモは伝聞証拠と考えるのが一般的だと思います。
ちなみに伝聞か非伝聞か迷った場合には、伝聞例外に当たる事情(本件の供述拒否のような供述不能事由など)があるかどうかを見ると、伝聞・非伝聞を正しく識別できることもあります。そのため本問では、やや邪道ですが、供述をかたくなに拒んでいるという点から本件メモは伝聞と考えることも可能です。
このことから、甲は乙から犯行の指示を受け、乙は丙から犯行の支持を受けて本件詐欺未遂事件を実現したと考えられ、乙丙間の共謀が推認できると考えました。また、丙から電話があったという記載もあります。
また、仮に乙丙間が共犯関係にあるとすれば、本件メモの内容について頑なに乙が丙に関する供述を拒んでいるのも納得できると思うのです。
そして、メモに記載のある「マニュアル」が具体化されたのが「本件マニュアル」であって、本件マニュアルと本件犯行が客観的に一致していること、「本件マニュアル」に丙の指紋が付着していたこと、以上を総合すれば、「本件メモ」も非伝聞として利用できると考えました。
長くなりましたが、このような推認には無理があるでしょうか。