孔子廟事件判決の基準は、調査官によれば、適用条文にかかわらず、一般的に用いられることになりそうです。
ここで質問ですが、同基準を事案に応じて微修正しても、孔子廟事件判決に依拠したことになりますか?(例えば、地鎮祭への出席のような活動が行われた事例では、「活動の性格、経緯、活動の態様,これらに対する一般人の評価等を考慮し〜」と読み替える)
あるいは、津地鎮祭事件判決の下位規範を使うべきでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
政教分離については、孔子廟判決で行くべきか、従来の目的効果基準で行くべきか争いがあるので確かなことは言いにくいですが、孔子廟の基準を微修正して書いた場合であれば、孔子廟判決を意識して論述したものと評価されると思います。
また、孔子廟判決の規範を立てた場合に、津地鎮祭の下位規範を使うのは、両方の判例を混同しているように読まれるリスクがあるので、控えた方が良いと思います。下位規範まで定立する必要はなく、孔子廟の規範を立てた状態で、後述の3段階の流れで当てはめを充実させる方が得点しやすいと思います。
また、目的・効果を考慮したい場合は、津地鎮祭の目的効果基準で書いた方が安全だと思います。上記で述べたように、孔子廟なのか津地鎮祭なのかどっちつかずの規範定立をする方がリスクがあると思うからです。
政教分離の問題については、私の感覚では、今後は孔子廟の規範で処理した方が無難かと思います。
つまり、「宗教的活動」とは、その関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものという総合考慮型の規範を定立したうえで、具体的な審査の流れとして、①活動の対象が宗教的性質を持つか(宗教性の有無)、②対象の宗教的性質に着目した活動か(公権力と宗教の関わり合いの有無)、③宗教的性質に着目した活動だった場合、それを行う正当化事由があるか(関わり合いの相当性の有無)の3段階で考えるのが一手だと思います(3段階の考え方については、令和3年度重要判例解説で、孔子廟判決に関する木村草太教授の解説を参照していますので、可能であれば読んでみて下さい)。
大変有益なご回答をありがとうございます。
その3段階の審査方法も書きやすくて魅力的ですが、総合考慮基準の考慮要素として検討する方法もいいなと思いました。
追記
また、目的・効果を考慮したい場合、上述のように読み替えた基準(「活動の性格、経緯、活動の態様,これらに対する一般人の評価等を考慮し〜」)の枠内で、目的(=態様)と効果(=一般人の評価)を考慮すればよいでしょうか。
あるいは、目的効果を考慮するのであれば、孔子廟事件判決を否定して、津地鎮祭事件判決の射程を及ぼすべきでしょうか。
目的効果基準を用いるか否かで結論が変わるわけではないので、そこを争っても仕方がないように思います。要するに、着眼点の一つにすぎないと整理しておけば足りますね。
判断枠組みとしてはそれでよいとは思いますが、政教分離原則の趣旨の解釈の対立軸を作って論じましょう。
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