ご質問ありがとうございます。
これは、答案の書きやすさの観点から、不能犯の処理において客観的危険説を採用しているものと考えられます。
たしかに具体的危険説の方が、判例・通説と呼ばれていますが、規範の覚えやすさや当てはめのしやすさの観点から、特に論理矛盾となるおそれがなければ、客観的危険説で書いても差し支えありません。
正当防衛など一部の解釈論については、行為無価値論と整合的な論述があることから、客観的危険説を併用してもよいかについては、併用した場合に論理矛盾と読まれるリスクがないとまでは断言できないので、併用しない方が望ましいと考えます。
論パタ2-2-1では、他の行為無価値論で書くべき解釈論がないので客観的危険説を採用し、論パタ2-3-7では、危険の現実化説との関係で親和性ある客観的危険説を採用したものと思われます。
そのため不安であれば、他の解釈論で行為無価値論寄りの論述をした場合には、客観的危険説の併用は回避し、不能犯の処理につき判例・通説である具体的危険説に立った方が安全だと思います。条解テキストには具体的危険説の記載もあるので、ここで具体的危険説のフレーズを習得可能です。
また、行為無価値論で客観的危険説を採ることは、行為無価値論が結果無価値も加味していることから、一切不可能とまでは断言できないかもしれません。しかし、客観的危険説は結果無価値論からの説であるとの説明が一般的なので、行為無価値論から客観的危険説を採るのは回避した方がよいですね。