今話題のリーガルドラマに出てきたセリフ「ローは予備試験に受からなかったものが仕方なく司法試験受験資格を得るために行くところ」は本当でしょうか...
これは少し昔の認識ですね。
現在は、3+2ができており、法学部在学生が予備試験ではなく、法科大学院ルートをメインに考えている傾向にあると思います。
なので「ローは予備試験に受からなかった人が行く」というのは事実として正しいとは思いますが「仕方なくいくところ」ではありませんね。
ご質問ありがとうございます。
例のドラマのセリフについては、一面では事実を言い当てている部分もありますが、最終的には「これまで積極的・主体的な学びを実践してきたのか、これから法曹資格を使って何をしたいのか」という点が圧倒的に重要であり、そのセリフを真に受ける必要はありません。
まず、最近のトレンドとしては、予備試験に何回か挑戦したが結果が出なかったのでローにシフトという流れも一部にあり、これだけを機械的に切り取るのであれば「ローは予備試験に受からなかったものが仕方なく司法試験受験資格を得るために行くところ」という面もなくはありません。
しかし、近年のロー入試とローの進級・修了判定は厳格になっているので、「予備試験だけが非常に難しく、ローはザルで簡単」ということはありません。予備試験にしてもローにしても、それをクリアするのは一筋縄ではいかず、両者ともそれぞれ特有の大変さがあります。
また、ローにもよりますが、特に上位ローと呼ばれるところでは充実したカリキュラムが組まれており、様々なことを深く学習したり、仲間を作ったりできるというメリットもあります。また、海外留学等を考えている場合はロー修了の学位が役立ったりします。
そのため、ローにもよりますが、ローには予備試験にはない様々なメリットがあり、予備試験がローの完全上位互換とまではいえないと思います。実際、私が修習で出会った優秀な同期の中にも、予備試験は考えておらず、ローでしっかり学んで司法試験に合格した人もたくさんいます。
次に、予備試験組とロー組の能力を比較してみると、常に予備試験組が能力的に優れているという訳でもありません。
私が司法修習で出会った様々な修習生を観察した限りでは、ロー組で予備試験を受けたことのない人の中にも優れた起案をする人もいれば、逆に予備組でも起案が普通という人もいます。
特に司法試験合格後においては、「合格までに自分なりに積極的・主体的に学習したか、合格後も研鑽を積んでいるか」が圧倒的に重要なので、合格後にどうしても四大法律事務所に行きたいという場合でなければ、ローか予備かという区分けはあまり重要ではありません。
以上のように、結論としては…
①
例のドラマのセリフは、一面では事実も含まれているが、普遍的な真理・真実を言い当て ているわけではない(そもそもテレビドラマの類いは、視聴者の興味を引くためにセンセーショナルあるいは誇大妄想気味な描写がなされることがあり、今回のセリフもそのような描写に過ぎない)。
②
ローの入試難易度や進級・修了判定の厳格さも上がっているので、ローが予備試験と比較 して明らかにラク・ザル・簡単とは到底いえない。
③
特に上位ローではカリキュラムが充実しているので、予備試験では学ぶ機会のない学際的 な学びを経験でき、ロー修了の学位が役立つ面もままある。
特定の法律事務所においては予備試験組を優先する傾向があるので、そのような事務所を 目指す場合は予備試験に受かることが必要だが、そのような事務所を考えていないのであ れば、ローか予備試験かはあまり重要視されない場合が多い。
④
司法試験合格後は、予備試験組とロー組で、常に能力差がはっきりとあるとは到底いえない(ここは個人の努力や資質によるところが大きい)。
もし、予備試験で満足な結果が残せなかったのでローに進学するとしても卑屈になる必要は全くなく、ローでしっかりと研鑽を積んで司法試験に合格し、合格後もたゆまずに自分自身を高めていけば、多くの人から頼りにされる素晴らしい法律家になれるでしょう。頑張ってください。