ご質問ありがとうございます。
これについては、櫻井・橋本『行政法』162頁において、「行政調査の過程における重大な違法は、それに基づいて行われた行政決定の違法を根拠づけると考えるべき」との説明があります。
そのため、違法な行政調査がなされた場合には、先行の行政調査と後行の行政行為は別個の行為であるものの、その行政調査の違法性が重大であれば、それに基づく行政行為も違法であると主張できる旨を条解P29では述べています。
これに対し条解P21の議論は、違法性の承継に関して、広く先行行為に処分性がない場合の争い方を述べたものです。ここでは、先行行為が処分に当たらない場合は、後行の処分において先行行為の違法性を当然に主張できるという一般論を述べています。
その結果、P21の議論は、違法性の承継との関係で、先行行為に処分性がない場合の争い方の一般論(先行行為に処分性なければ、後行の行政処分で当然に先行行為の違法性を主張可能)を述べているのに対し、P29の議論は、行政調査という個別の場面において、違法な行政調査と後行の行政処分の関係性(行政調査と行政行為は別個のものなので、先行する行政調査に重大な違法ある場合に、後行の行政行為の違法を根拠づけられる)を述べたものです。
そのため、P21の主張の仕方としてP29を行っているわけではないと考えます(P29では行政調査に重大な違法が要求されており、P21と異なり、当然に主張できるとはされていない)。結論として両者は、問題となる場面が似てはいるものの異なるので、区別して押さえた方が無難です。