ご質問ありがとうございます。
567条の「引渡し」とは、現実の引渡し(182条1項)のように、普通物権法でいうところの『目的物の占有を取得させること』を意味すると考えます。
そのため、「引渡し」が「弁済の提供」と事実上重なる場合(例えば、現実の提供として、目的物の占有を相手に取得させる場合等)もありますが、両者は同義ではありません。
本問では、Fが10月15日の午前中にワインを倉庫まで取りに行く約束になっていたところ、これをもってワインの占有をFが取得するので、この時点が「引渡し」になると考えられます。
しかし、15日の前日(=15日になされる「引渡し」の前)に地震でワインが破損したので、「引渡しがあった時以後に」ワインが「滅失」したといえず、567条1項の要件を満たしません。
また、同条2項は、「引渡しの債務の履行を提供」したが、買主が受領遅滞中に滅失・損傷した場合の規定なところ、Fは受領遅滞にそもそも陥っていないので、2項の要件も満たしません。
そのため、「引渡し」後に滅失したわけでもなく、受領遅滞という事情があったわけでもないことから、567条は検討しないのです。