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まず、法曹として取り組みたい分野によっては、理系の知識があった方が有利という側面はあるので、文系理系が関係してくる面はあります。
例えば、医療系の訴訟事件を扱いたいのであれば、医学・薬学・看護といった医療系の理系知識があると案件の処理がスムーズになります。また、特許関係の業務をしたいのであれば、理工学系の知識があると役立つようです。
そのため、法曹として取り組みたい事件類型によっては、理系知識があると有利になる面があるという点では、文系理系は多少関係します。
次に、どちらが受かりやすい・有利かというと、これは文系理系という区分けよりも、本人の気質や頑張りによる面の方が大きいので、受かりやすさの有利不利はあまりないと思います。
司法試験の論文は数学に例えられることがよくありますが、そのような捉え方はある意味一面的過ぎるところがあり、私の感覚としては、大学受験の国語・英語・数学が合わさった総合格闘技のような印象です。
つまり、大量の文章を正確に読み解き、分かりやすい日本語で解答を作成するという点では、大学受験の現代文や英語長文と同じ面がありますし、基本問題の解法を理解してストックするという点では受験数学と同じ面があります。そのため、司法試験系の問題は、敢えて言うなら文理融合型の総合格闘技のようなものなので、受かりやすさという点で、文系理系は思ったほど関係しないと思います。
また、法律学は意外と曖昧さを含むものであり、論理だけで竹を割ったように答えが出るものではありません。法律学は、いわゆる憲法の謳う個人の尊重・立憲主義を筆頭に、手続の安定や罪刑法定主義といった科目ごとの価値観のようなものがあり、この一定の価値観に沿って価値判断をする場面が多々あります。
そのため、論理的一貫性を大事にしつつも、他方では価値判断が求められる面も多いので、法律学は、理系のような論理的一貫性と文系のような価値判断が混合している学問といえます。このような特殊性があるゆえに、文系理系どちらの人であっても、法律学の特殊性がある程度受け入れられるのであれば受かりやすいですし、受け入れがたいと感じるならば受かりにくいです。
ちなみに、文系で受かりやすい人は、大学受験である程度数学をたしなんでいた人が多いと感じます。これはおそらく、論理的思考力を数学で鍛えているので、法律学の論理性にもなじみやすいからだと思います。
逆に、理系で受かりやすい人は、法律学が価値判断を含むという点に抵抗がない人が多いと感じます。これは、法律学が価値判断を含むという特殊性さえ抵抗がなければ、理系の勉強で培った論理的一貫性という強みを活かしやすいからだと思います。
そのため、文系理系という区分けよりも、①その人が司法試験系の学習を始めるまでに大学受験の国語・英語・数学をどの程度バランスよく学んできたか(≒読解力・文章表現力・論理的思考力をどの程度習得しているか)、②法律学の持つ論理的一貫性と曖昧さを内包する価値判断という特殊性にどの程度抵抗がないか、という2点が、その人の有利不利に影響する場合が多いと感じます。
もちろん、①②において不利な要素がある人であっても、司法試験系の学習を通じて、単に法律知識だけでなく、読解力や文章表現力も磨いていくことを意識し、覚悟を持って集中的に学習すれば、問題なく合格することは可能です。