まず、「ある要件を満たさない場合に、他の要件まで検討して答案に書くべきかどうか」については、その問題の事案や設問によりけりなので、一概にこうだとまでは断言しにくい面があります。
これが司法試験系の論文式試験独特の曖昧さであり、「何を、どのように、どこまで書くか」という面は、目の前の問題によって相対的に決まる場合がままあるのです。
そのため、ラリアット事件を題材にした問題にしても、他の要件を検討すべきかどうかは、問題文にどのような事実が挙がり、設問がどのような問い方をしているかによって、相対的に決まります。
もっとも、大まかな相場観としては、問題文に他の要件に当てはまる事実が明示的に示されている場合は、簡単で良いので検討した方が無難です。
今回の事案については、急迫性をメインで検討して正当防衛を否定したうえで、他の要件に当てはまる事実があるのであれば、なお書きとして「なお、仮に急迫性が認められた場合は~」と前置きしたうえで、他の要件にも簡単に触れるのが一手だと思います。