刑法では、体系上の位置づけを常に意識する必要がありますから、大変いいご質問だと思います。
以下、判例通説の立場から回答します。
本論点は二つに場合分けができます。
まず、①共謀の時点での認識の不一致、つまりXは殺人の認識、Yは傷害の認識で謀議していた場合です。
次に、②謀議には不一致はなかったが、実行の時点でXが謀議と異なる行為、例えば殺人の実行行為を行った場合です。
①は「共謀」の要件充足性の問題となります。そして判例通説のとる部分的犯罪共同説によると、構成要件の実質的重なり合いの限度で共同遂行の合意が認められることとなります。したがって、例でいえば傷害の限度で「共謀」の要件を充足することとなります。
②は「共謀に基づく実行」の要件充足性の問題です。
そして、共謀の射程が及ぶ(ここは別論点です)場合は錯誤、つまり故意の問題となり、法定的符合説によって構成要件の実質的重なり合いの限度で軽い罪が成立します(刑法38条2項)。例でいえば、Xには殺人罪が成立しますがYは結果的加重犯の傷害致死罪が成立するに留まります。
このように、2つの場合はそれぞれ書く場面が異なりますので、ご質問のような「ずれ」は生じないこととなります。